鳥海才一郎さんへの手紙   七九年四月十日

 お便りうれしく拝見しました。政男おじさんから鳥海さんのことを聞いていたので私
の方からもお手紙を書こうと思っていたところなんですよ。政男おじさんが、鳥海さん
のお便りを獄中者組合の獄中獄外通信に投稿したときいたので、「じゃあそれ見てから
だ!」とサボをきめこんでいたところ、鳥海さんの方からお便りを先にいただいてしま
ったというわけです。五十才の新兵さんとのことですが、私は歴戦(?)四年目のうら若き
女性兵士ですかな? 鳥海さん初めてのお便りなのにもう私は鳥海さんとすっかり昔な
じみの友人みたいです。子豚の話、前刑での斗いの話などで「この人は話のわかる人だ
なァ! 私らと同人じゃないケ!」とクスクス笑いました。子豚の産婆さんやっとった
とのことですが、そんな仕事なら、私は一生やっていたいな? もちろん強制される中
でじゃなく、仲間たちみんなと、革命の勝利したあかつきのすべての仲間が平等に分か
ちあう、みんながみんな自分の属する共同体のために喜びをもって働ける共産主義的共
同体の農場で。鳥海さんといっしよに豚や牛や、ニワトリやネコや犬やアヒルや、いっ
ぱいいる中で泥だらけになって青空の下で思いっきり汗を流して働きたいな、と思いました。

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 私のところの訪問者ですね。今、こうして手紙書いてるときもチビンケが窓の外にい
るんですけど、実は「家族ぐるみ」のつきあいなのです。かあちやんのネコスと、兄き
のシロと妹のチビンケの、三人じやなくて三匹が入れかわりたちかわり、あるいはいっ
しょに遊びに来ます。チビンケが一番なついていて、ほとんど一日中いりびたり。(ま
たこっちみつめてるョ。今日イワシの塩焼だったのに、私もイワシは大好物なのであん
まりわけてやらなかったもんだから、うらめしそうな顔して見つめてるのです。チビン
ケ! そんな目をしてみつめないで−!)
 女の子と男の子では同じ兄妹でもやっぱり性格がちがいますね。チビンケは甘えんぼ
うで、ともかくなでられるのが大好きで、決して爪をたてたりしないでおとなしい子猫
ちゃんなのです。年中、オシャレに余念がなくペロペロやってますが、シロの方は攻撃
的で、本気で爪をたてるし、かかってくるし、私が手を出すと「ハーツ!」とメンコイ
牙をむき出しにして威かくするのです。が、これも悪い人間にとっつかまった経験があ
るのでやむをえないのですが、つまり人間に対して恐れを抱いている→だから攻撃的と
なるのです。だいぶ前に、つり糸のようなじようぶなナイロンの糸でシロが首輪をされ
てしまってきたことがあるのです。それまではそんなに攻撃的ではなかったのですが、

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私が、その首輪をかわいそうなのでとってやろうとしたら、シロがあばれだしたので、
一時、糸がシロの首に深くくいこんでシロを苦しめてしまったのです。シロがありつた
けの力で糸を切って逃げていったのですが、それでやっと首輪ははずれたものの、シロ
に苦しい思いをさせた私の「罪科」は、シロに一生の心の傷を成してしまったというわ
けです。その日は、もうきてくれないのかなと思って悲しがっていたのですが、夕方に
なったらもうケロツとして遊びにきてくれたので喜んでいたのですが、それ以来少しで
もシロにさわろうとしたり、手を出すと「ハーッ!」「キッ」とキバと爪をむき出しに
するというわけです。でもこの頃はだいぶ月日もたってきたので、“時効”になったの
かその「ハーッ!」「キッ!」もあんまり迫力なくなり、休めのポーズ(ひざをおって
中に入れたままのかっこう)で「はあ〜」と静かに息を吐く

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というだけでぜんぜん“オドシ”の役割をしないときもあります。「なんだ。それじや
あ、ぜんぜんダメだナァ迫力ないぞ!」とからかって本当にさわろうとすると、急に態
勢たてなおして「カーッ!」とやられるので、油断できないのですが。私に対してはこ
うしてぜんぜん気を許さないきかん坊でもチビンケに対してはとってもやさしい兄ちや
んで、いつもチビンケの枕になってあげたり、チビンケの体をぺロペロなめてあげたり
しています。母ちゃんネコはオットリとしていてやはり母さんらしいですね。私はチビ
ンケが私の布団の中に入ってきた夢をみたり、夢の中にまでネコが出てくる仕末です。
(昔、シャバにいた頃やはりノラ猫が住みつきまして、いっしょに寝たり食べたり風呂
に行ったりしてたんです)夢の中で、チビンケを必死になって押し入れにかくそうとし
てるのだから、失っちやいます。ネコの話してたらキリ

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ないですね。禁じられた愛だけに、愛情はつのる一方なのです。権力の中という生活を
忘れさせてくれる、本当にすばらしい友だちです。ネコたちがいつも窓辺にくるように
なってからは、ハトやスズメはきてくれなくなりましたが、やっぱりネコの方がかわい
いもんねェ。鳥の仲間は遠くから眺めるだけで満足してます。今日は何だか「革命」の
話とはぜんぜん関係ない話になってしまいましたね。こんどからもう少し“まとも”な
手紙かきます。でも私は「革命」とは人間と人間の共生、そして自然(海、川、山、大
地、トリ、ケモノ、ムシたち)と人間の共生しあう社会の創造であり、今の人間が互い
に憎みあい、競争しあい、搾取、収奪、抑圧、差別の中で苦しめられ、自然をハカイし、
動植物を殺していく非人間的近代文明の資本主義社会帝国主義を打倒していくことだと
思ってるので、ネコと仲よくなり、看守の妨害はねのけて、人間らしい喜びを獲得する
のも「革命」をめざす人間の生活のあり方としては、マンザラ関係なくはないと思って
います。スズメやハトやネコを敵視し、ものすごい形相で残酷に追っ払う看守と、そう
したものたちへ愛を示す獄中者とをみれば、本当の人間らしさを失っていないのは獄中
者の方であり、革命の味方は「国家公務員」という「労働者」だという看守の側にはな
く、「社会のダニ」「ルンプロ」とさげすまれてきた獄中者の方だという想いを新たに

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します。
 自己紹介してなかったですね。私は東アジア反日武装戦線に志願し斗う兵士として、
今、ここにぶちこまれています。が、「準兵士」のうちに卵のうちにドジってパクられ
てしまったため「本兵士」である同志たちの「連続企業爆破」斗争の幇助ということで
起訴されています。生まれ育ち宮城県古川市、田んぼの中の出です。だから泥や土や草
は大好きですが、コンクリやキンキラキンは大キライです。獄中生活も今年五月で満四
年。今保釈申請中。裁判は、統一公判、黒川同志、大道寺将司同志、片岡君の三人とい
っしょです。五月から反証に入り、今年夏には結審で極刑を出すとハリキっているミノ
原というファシスト裁判官と斗っています。ともにパクられた同志のうち、斎藤和同志
は、パクられた日に一切の妥協を拒絶し戦死、佐々木規夫同志と大道寺あや子同志、浴
田由紀子同志は、日本赤軍の同志奪環斗争で獄外にいます。戦斗は、続行中! どこに
いてもわが身のあるところ戦揚と心得て斗っていきます。今後ともどうぞよろしくおね
がいします。では、また。
荒井 まり子

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