支援運ニュース No.195

SAIKAIに向けて 検察が意見書を提出

1998/10/30  浴田由紀子


 お元気ですか? SAIKAIの秋。
 10月27日の公判で、検事はようやく「確定死刑囚証人調べ」への意見書を提出し、弁護団は、大道寺、益永両同志を証人申請して(相互証人になる)SAIKAI攻防はいよいよ本格的な交戦状態に突入しました。私達は検事意見書への反論を11月11日に行います。そして、11月24日公判で裁判所が「決定」を出します。
 まず、報告とお礼を。
 ご協力いただいたSAIKAI署名は、9月26日に東京拘置所に、10月14日に東京地裁に、それぞれ提出されました。署名を寄せて下さった方、署名集めに走って下さった仲間達みんなに心からのありがとうをいいます。そして今、署名にこめられた応援をしっかりと感じながらSAIKAI実現に向けて、終盤の攻防にとり組んでいきます。これからも、どうぞ、知恵と力を貸して下さい。いっしょにSAIKAIを実現し、司法の公平と死刑制度の廃止のために、闘いを続けましょう。共に。
 10月27日に検事が出して来た意見書は、(くわしい内容報告は、他にゆずることにします)先の公判(9月11日)で、「Tシャツ訴訟に出された東拘の上申書」に対して弁護人が行った反論によって、『東拘側に出廷を拒否しうる根拠は存在しないのだ』ということを悟ったかに見えるものです。それ故検事は、所在地尋問にする根拠の1つを「東拘に過大な負担をかけたくないから〜」なぞというフヌケタ話にしています。“過大な負担”かどうかは、当の東拘当局に言ってもらえばいいことであって検事が“杞憂”にもとづいて“セワヤキオジサン”をやるこたあないのです。
 所在地尋問にすべきという検事主張は、証人や、その支援者の政治的立場や、あることないことを諸々を並べ立てて裁判所に予断と偏見を吹きこむことにその大半が費やされていますが、あえてめぼしい理由をひろうならば、
@外部交通権の制限によって維持されてきた確定死刑囚の“心情の安定”のための方策が無に帰する。「公開法廷で証人尋問を実施することになれば多数の支援者及び関係者と顔を会わせることになり……不規則発言や目配せといった明示・黙示の諸々の言動等によつて連絡を取り合うなど、事実上接見及び信書の交換をするのと何ら変わらない……」(検事は、裁判長の法廷運営を全く信頼していないと言っているに等しい。どこの世界に証人と傍聴人が“接見・信書”なみに交通しうる法廷がかのうなのか!)
A奪還・逃亡のおそれがある。何故ならかつて被告人も奪還された。(月2回法廷に通う被告人には、そのおそれはないのかしらん?)反体制・死刑制度反対の支援者がいっぱいいる等々。(「元過激派とその仲間には、憲法の精神は適用しない」と言っているに等しい。反体制派の被告が「憲法を適用するな」と言っているのじゃあない! 立場が完全に逆転して来た。検事は国家公務員だからこんな過激な法破りを煽動して首を切られるんじゃないかな?)。
 で、結論として「証人尋問を東京地裁で執行することは、我が国の憲法秩序を乱し、我が国の刑事司法制度に対する諸外国の信頼を再び(奪還は青天霹靂だった。)失墜しかねない危険の高い暴挙としか言いようがなく云々」。
 まずこの意見が、元来「未決被告人に準ずる処遇」を受けるべきであるにもかかわらず不当に外部交通権を侵害されている現行死刑囚制度を前提にし、それ自体がすでに国際人権規約に違反し、日本の人権実情に対する「諸外国の信頼」を不可能なものにしている事実について、見えていないらしい。まず、現行死刑囚処遇が犯している「諸外国の信頼」を回復する努力なしに、「過激派であるから、死刑囚であるから、憲法は適用しない」とする主張は、二重三重に「諸外国の信頼」を失墜させる暴挙ではないのだろうか?
 裁判所に予断と偏見を持ち込み、裁判そのものの公平性を破壊し、あろうことか公開原則に保証された国民の知る権利を踏みにじって密室裁判を強行することにおける「民主主義の欠如、人権の軽視、司法の独立の否定」に対する「外国の不信」はどうなるのだろうか?
 疑問と批判はつきない。しかし、検事が意見書の最後に「諸外国の信頼」という“飛んでる口実”をもち出した時、彼らのたくらみの危険性と、非公開を主張する何ら正当な根拠をもたないものであることをはっきりと認識させられた。
 この間、この国が憲法を無力化させ、軍事大国化、人権の切りすて、人民の管理強化…をおし進めて「なしくずし改憲」「実質的な憲法改悪」を行うための口実は、いつもいつも「諸外国の信頼」だったのではなかったのか。湾岸戦争に軍隊をもたないはずの国の軍隊を送り込み、莫大な軍資金を帝国主義抑圧軍に出し与え、PKO、PKF、と次々と“国内では認知されていない”「日本軍」を外国に派遣する……口実はいつもいつも、「期待されている戦争協力、兵力、資力をもつているのに協力しないのは諸外国に信頼をそこねる」とそのたびに国民に言いふくめて来たのではなかったのか。「諸外国」とは誰か? 「信頼」とは何かが問われることは一度もなかった。戦争責任を明確にし、必要な謝罪と補償を行うことこそが諸外国の信頼に応え、共に生きてゆく方法なのだと、わたし達は主張して来た。
 私達はすでに、彼らが「諸外国の信頼」という時、その言葉のウラにあるものが何であるのかを十分に学習して来た。今、この裁判がこの国の司法制度改悪、基本的人権の保障と裁判の独立・公平を否定し、密室裁判・差別偏向裁判・裁判の政治利用を公然化する前例とさせてはならない。
 あらためて、ASIKAI闘争は、1人の被告人と2人の確定死刑囚証人とその友人達の問題としてではなく、この国の未来を決定づける1つのステップを担っているのだと教えられた。1歩もひくことはできない。この国の法の守り手である検事とその一派に対して、「反体制」であるはずの被告人が「法の尊守」をとくナンセンスをひっかかえて、あくまで公平な公開裁判、憲法に保障された人権の尊重と、司法の尊厳、独立を求めて闘う!

 裁判は3年を経過します。そして今、「共犯」同志達の証人尋問を境に、これからは弁護側立証に入ります。いよいよ私達の大活躍の場です。3年間、「重箱のスミをつつくような」シコシコの闘いを支え、被告人以上に熱心に尋問の準備をし、検事側証人に対峙して下さった弁護団と仲間達、あるいは傍聴に通い、文通や面会で、はげまし、教えてくれた仲間達にあらためて、ありがとうを言います。積み重ねて来た闘いの成果を必ず公開法廷での証人尋問として実現させましょう。
 “状況は甘くない”ようですが、そのためにこそシコシコの裁判を積み重ねて来ました。全力をつくして、どうなってもくいのない闘いにしたいです。
 21世紀に向かう、敵の反動化攻勢の中で、今、現在を敵の捕虜として、そのフトコロ深くに闘うことを強いられた者として、問われる役割をしっかりと担います。
 同志達、元気に再見しましょう。楽しみに証言の準備をしていて下さい。 元気で!
                              ゆき子



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