支援運ニュース No.199

ついに将司同志と再会しました

99.2.28 浴田由紀子

 東拘の庭に、イヌフグリが顔を出して、うぐいすが「ゲキョ、グゲキョ」とうたい始めて、いよいよ春です。
 お元気ですが。
 2月10日、ついに将司同志と再会しました。会えたのですよ、とうとう。198号報告につづき、塀の中では…。
 クソイマイマしい完全非公開の強行に、どう反撃したろうかというキリキリする思いと、一方で「ア・エ・ル・ノ・ダァー  …」という思いの間で、かなり情緒不安定(?)な日々ののちに……。ついにその日がやって来た。
 小学校の教室を少し広くした位の、両側にブラインドを降ろした窓のある部屋に“密室”は準備されていました。法廷と同じ様に裁判官、弁護士、被告と検事の机が配置され、コの字を閉じる位置に証人席です。裁判官席が同じフラットにあるので、何となくおちつきます(彼らは「権威が地におちて」不安だったかもしれませんけど、憲法破りやっているわりにはリラックスしとったなあ、クソッ!)
 そして、将司君はやってきました。キャッホー将司君だ!
 頭がかなり白くなって(フサフサの7割白髪で、長目のまん中分け)。ちょっとネコ背の、やっぱりやせて色も白くなっていますが、目が光ってる! 第一印象は、「オトーサン」みたいになったなあ!(「かわってないね」と言ってくれた人に冷たいじゃあないかと思うかもしれないけど、いいんだ。男は、人生が姿型に出てこそ男だ! ん?男女差別じゃあないかって? …まあ、そこは、なんとか…)
 彼は、始めの頃ちょっと緊張してたかもしれない。(検事はもっと緊張して、びびっとったなあ)。ずいぶんきびしい目で検事、裁判官の方をひとわたり見て、席についた。
 彼をもっと良く見ようと、じっと見つめていると頭の中に同志達や仲間達や家族会の誰彼の顔やいろいろなできごとが脈絡なく、浮かんで来て、目が熱い水でいっぱいになって、彼が見えなくなってしまう。脳みその奥の方で誰かが、「会えたねえ。ようやくに会えたねえ。彼は元気だねえ」と話しかけてくるみたいで……涙が止まらない。「バーロー、こんな所で泣く奴があるか! 泣いたら、彼が見えなくって、声が聞こえなくってソンだぞ! 」と自分に言い聞かせて、頭を切りかえ、検事の尋問に集中することにした。
 彼の経歴から始まって、けっこう細かな検事の質問に、一つ一つていねいに、ゆっくりと答えていく。その声が昔よりずい分低くなっている事に気がついた。長い間しゃべっていないから声帯が弱っているのかもしれない。しかし、検事の話を聞き、考え、ひとこと言っておきたい…時の表情もしぐさも、ペンを持つ時の手指の動きも、ぜーんぶ! おどろくばかりに昔のままだ。まりちゃんがかって彼の字を「ダンゴの串刺し」と称した、あの特殊な字を製造するピンとのびた右手親指は、今もやっぱりピーン、とのびていて、人の話を聞く時にミケンによるシワも、何か(たくらみ時に)考えている時にとんがったりへの字になったりする口元も、「ひとことクレーム」の前の左手で後頭をかくクセも……。  検事か他の同志の事を聞いてくるのに対して、「私の証言に反論できない人々のことを言うのはアンフェアになります」とキッパリと言及を拒否。第一次統一公判の同志達と斉藤・浴田についてのみ証言という相変わらずの原則的姿勢と、戦闘性・敵愾心が何ら変わっていないことを見せてくれる。ウシ、将司君だ!!
 本当のところ、彼が検事の質問にていねいに応えるのを聞きながら私は、第一次統一公判での全く同じ様な検事の質問に「答える必要はない」「黙秘する」と対応した彼らの表情を想像して、複雑な気持ちになっていたのだ。  一つ一つの闘争について、その時代的・政治的背景と、位置、闘争の目的について証言していく。当時の同志達との会話や、必死な思いが、次々と思い出されてくる。彼は今も、同じ、いやそれ以上の確信に満ちた言葉で語っている。私達はあの闘いを共にしたのだ、まちがいなく! そして今、ここにこうしてともにある!
 尋問は午前中に、74年春の頃までを。午後、虹・三菱から30分の休憩をはさんで、さそり・牙との出会い、三者会談の開始の頃までを、4時まで、行いました。
 将司君は、ずい分疲れているはずなのに、全くペースを乱さず淡々と、午後からは、完全に将司ペースで検事をリードする形で証言を続けました。久しぶりの発声と、人前で、ノドが痛み、カゼをひくのじゃないか心配です。  最後に将司君が検事に「あとどれ位やるのか?」と聞いて検事は「ア、今日と同じか、もう少し少なめです」。(何か検事の方が証人から「しっかり準備してこいよ」と言われているみたいでオカシイ。)
 こうして今、私達は、21年と5ヶ月ぶりに再び同じ空間で、同じ戦場で、共通の攻防を担っています。本当にうれしいです。75年1月彼は、連絡員を降りることになつた私に「再び戦場で会おう」なぞとキザなセリフを残して去りました。被逮捕によっては、会えないはずだった私達は、統一公判を勝ち取って再会しました。ダッカや戦争や死刑判決や……の中で、いつも思い続けたことは「あそこに彼らが生きている。私達の分まで行き続け、闘い続けてほしい」ということでした。彼らも又、何の連絡もしてこない私達に、淋しい思いをしたり、心配したりしながら同じ思いでいてくれたことを知っています。本当にこの年月を、いっしょに闘い、支え、はげましてくれた全ての人々に感謝の思いでいっぱいです。
 非公開・密室裁判という理不尽によって、彼らは今、当然SAIKAI出来るはずの多くの人々と目を見合うことが出来ません。しかし私達は、彼らの前にみんなをつれてくる闘いも、彼らが出向く闘いも、そしてまず、彼らの声をみんなにしっかりと届ける闘いとをあきらめるつもりはありません。尋問は続きます。これから先何十年でも、今まで以上につながり合って、共に生きていける礎をしっかりと固められると確信しています。
 とにかく、第一回は、穴があくほど将司君を観察して(?)終わってしまった。絵もヘタクソ、字もヘタクソ、文もかけなくって、どう伝えたらいいのか、……次回は、「裁判の中身」もじっくり報告できるように、少しは目と耳を開いて、また報告します。
 世の中、いろいろ忙しくなりそうです。新しい段階へ、力を合わせて、くいのない闘いをすすめましょう。
 最後になりましたが、シャコのお父上の御冥福をあいのりします。お母さんと弟さんが付きっきりで看病されたと知って「よかったな」と思いました。
 みんな、お元気でいて下さい。そして再見!
                          ゆき子



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