支援連ニュース No.204

大道寺将司同志の証人尋問は、“クールに、スマートに”終了しました。

1999.8.10 浴田由紀子

 お元気ですか、暑い日が続いています。この夏私は、2階になったので、風のある日は少し楽です。(それでもアセモは出ます)風の涼しさを感じるとよけいに自殺房や、窓のない房の仲間達のことが気になります。もっと暑い所にいたこともあるけど、暑さがつらいんじゃあないんですね、人間なのに暑さに対して、自分の意志や行為で対処できないことがつらいんですね。たった18m3のコンクリート空間に閉じ込めておいて、ぬぐな、ぬらすな、真中に坐ってろ……(壁をぬれゾーキンでふいて、乾き始めた頃ピタッと背中をくっつけるとちょっと気持ちいいです。「夏場の犬」になった気分ですヨ)ですから。
 獄中はこの程度ですが、外はもっと熱くて、たいへんだと思います。自自公主導の大翼賛国会が、50余年の「ツケ」を全部片付ける勢いで、次々と重要な人権侵害・憲法切り崩し、戦争準備法案をおし出していますね。新聞や機関誌を見ながら、みんなたいへんだゼ、一つ一つの法案に反対集会やらデモやら、スワリコミやらやってたら身がもたんでしょう。いきなり本体、反動・戦争体制作りの発震源粉砕にのり出さないと、ネズミ花火を水もっておっかけるみたいに、アブハチとらずの、総くずれ、敗北感だけが残るということになってしまいそうだと心配しています。
 先日、88才の上野さんに、「戦争の前みたいな状況ですよね」といったら、「あの時代よりも今の方がおそろしい」と言っておられました。安田弁護士は「予防拘禁」されて、浴田裁判はいつでも国にとって不都合な発言を闇にほうむることのできる非公開裁判で、各地の自治体や教育委員会は、市や町をあげて、オウムしめ出し、ナチスのユダヤ人狩りなみのオウム摘発を進めていて、政府がそれを容認し、誰も「おかしい」と言わないし、「やめよう」とも言わない。マインドコントロールされているのはどっちだ?!
 調子にのった小渕一派は公明党と手を組んで靖国法案まで通そうと画策してるみたいだけど、今日はオウム、明日は左翼…障害者…老人…創価学会…最後に生き残れるのは、「天皇主義者とアメリカの傀儡戦争屋だけだということがわからないのかしら……。それとも、彼らはすでに「人類救済」の創価学会でもない、ただの政治屋なのかもしれないけど…ブツブツ。
 何を守るべきか、何を創るべきか、旗幟鮮明にして、これ以上の反動化を許さない、敵の中枢をつく闘いをすすめていきましょう。

 今年2月から5ヵ月間、7回に渡った大道寺将司同志の証人尋問は、7月7日午前11時、“クールに、スマートに”終了しました。
 この日は、弁護団と私の補足質問、検事の再主尋問でした。検事は、「半日やる」と言っていたのに何故か30分(戦意喪失なのでしょうか?)しかやらないで、計1時間であっさり終わってしまいました。
 誰にとっても恐怖と緊張の被告人の直接質問、(和君との関係を言わなかったこと、今の状況と反日思想、家族のこと)も、今回は少し上手にやれました。なにせ、質問事項の項目メモを提出した段階で「しめっぽくならないように」という忠告というか注文というか、(恫喝というのかもしれない?)が届いていたのです。そういう場合、私も「女のメンツ」ひっからげて、それなりにツッパリます。「まあ失礼な! だらしなく取り乱すとでも思っているのかしら」と大見栄を切って…もちろんあとにはひけませんから、ウルウルの引き金になりそうな単語は極力排した質問書に書きかえたり…まあ万全をつくして「降水確率ゼロ体制」を準備しました。聞き方の「クールさ」のせいでしょうか、この日の将司君は、全ての質問に実にアッサリと、アイソなく(?)答えていました。
 支援連と共に長い間彼らを支え続けてくれている家族について、「大変つらい目に会ってきているわけですね。そういう中で四半世紀の支援してくれているわけですから、感謝しているという以外ないです。私達を支援してくれている人達の中には、母親たちの活動とか人間性に惹かれて私たちを支援してくれるようになったという人たちも多くいるわけで、そういった意味で、私の方は彼らから学ぶことというんですかね、彼らの姿勢とか生き方から学ぶことが大変に多いと思っています。」
 検察官は、Aさんにも“ペンネームがあったろう”とか狼内民主主義とは何だ、とか、斉藤と浴田は夫婦なら意志は疎通していたろうとか聞いたあげくに、
検事:「前回…被告人に対して一日も早く出獄してもらいたいということを述べているんですけれども、これはどういう意味合いでの証言なんでしょうか」
証人:「…私は彼女の情状証人としても来ていますから…」
検事:「被告人が処罰を受けることは望まないと、そういうことでしょうか」
などと聞いてたな。共犯証人には、『そうです、悪いのはみんなこの被告人なんです、裁判官様うんとこらしめてやって下さい』とでも言ってもらおうとでも考えていたのだろうか。
 最後に内田弁護人の「急ピッチで戦争に向かう状況の中で……」
証人:「…君が代に関して政府見解が出された時、私は、はっきり言って“冗談じゃない”という感じを受けたんですが、……一般的には余りにも反応が鈍すぎるといいますか、……ちょっとみんなもっと怒ってもらいたいなという感じをもっています。」
 裁判長が「終わりました、ご苦労様でした」とていねいに言って、(裁判長も少し聞くかと思っていたけど何も聞かなかったな)。将司君が立ち上がりぎわに、「じゃあ。元気で!」「ウン、元気でね!」(ウーン、どこまでも粋な奴だな)看守に囲まれて退出する右肩下がりの背中が、「また会おう」と言っていた。

 7月27日は、約半年ぶりに地裁での公開裁判でした。この日は、裁判官交替手続きと証言の「公開」です。
 まず、弁護人と被告が、非公開裁判にあくまで抗議する更新意見陳述を行いました。続いて、裁判長が「大道寺証言の要旨を告知します。3万一千字、約二時間ちょっと、事項ごとに主尋問、反対尋問合わせて〜」と宣言して、右陪席裁判官がいきなり「作文」を読み始めました。30余時間の証言をたったの2時間!! 誰が整理するにしたってとりこぼし、まちがいなんです。そんなことで「公開」と言えるのでしょうか。
 作文の内容、項目設定については、だいたい弁護側立証にそうもので、私達が行った多岐に渡る質問のかなりの部分をフォローしていました。初めて聞いた人は、「ていねいにひろっているな」と思ったかも知れません。しかし、その内容は、証言の微妙なニュアンスを省略したり言いかえて簡単に流し、すでにこれまでの裁判や報道で「公表されているもの」についてのみピックアップし、新しいこと、とくに『殺意不在の証明』『爆弾知識や技術についてのかなりていねいな証言』や『今の状況に対する証人の考えや立場』等々についてはきれいに省略するというものでした。
 聞いていて、「これは検察官が供述調書を作文する手法と同じだ。」と思いました。“公開”と言ったって、こんな偏った作文が通用するとしたら、支配者にとって都合の悪い証人はドンドン非公開にまわして、不都合な証言はなかったことにして「公開」すればいくらでも反体制思想・体制批判を闇にほうむる「公平な裁判」が可能になります。
 「裁判官の認識なんてその程度のもの、彼らの関心にそってしかまとめないのだから」ということかもしれません。しかし、これは本来傍聴人が自分の目や耳で感じ取ることが出来るはずの証言を「公開」する作業なのですから、あくまで公平・公正・正確でなければならないはずです。それができない以上は、非公開を止めて公開にするか、あらゆる手段で公開に準じる方策を講じるべきです。別室ビデオだって、カセットテープだって……裁判官の作文よりは何百倍もかたよりなく正確なはずです。
 「公開」のアリバイ作りでしかない今回の「公開」は、非公開裁判の恐ろしさ、裁判を監視することの意味の重大性を、明確に示してくれました。私達は、あくまで非公開裁判の不当性・違法性を許さない。この重大な「誤り」を伴って進められる裁判の不公平性への抗議と闘いを続けます。同時に証言内容を正しく公開するための可能な手段をつくしたいです。
 この日傍聴席はほぼ満席。久しぶりの集団面会に大いに勇気づけられています。仲間達がそこにいて、裁判官や検事を見張ってくれる。いっしょに笑ったりおこったりしてくれることの実感は、自分をとり戻し、人間であることを喜べる瞬間でもあります。非公開裁判は、こうした人間らしい自己回復・喜びの瞬間を将司君達から奪ったのだと思うと、仲間達の笑顔がよけいに胸にしみる。
 必ずいつか、みんなしてSAIKAIを実現しなければならない。そうしてまた、いっしょに生きよう。
 この日安田先生も見かけました。(私がわかったかな?)ちょっと疲れた仲間や、元気いっぱいの仲間や、暑い中、忙しい中をありがとう。これなかった仲間達にも……SAIKAI公判はがんばっています。秋、9月末からは利明君です。
 いっぱいの思いを聞きたいと、ワクワクドキドキ。「きわめて私的で、ほとんど趣味の領域の報告」を楽しみにしていて下さいね。
 暑いので、みんなお元気で!               ゆき子


YUKICO
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