支援連ニュース No.206

ついに利明同志と再開しました。

1999.10.6 浴田由紀子

 長くてあつい、いろいろなことのあった夏でしたね。
 お元気ですか。
 9月29日、ようやく秋が来て、ついに利明同志と再開しました。SAIKAI公判第2段の始まりです。
 利明君は、何だか、とってもうれしそうに、はりきっています。元気ですよ。目がキラキラしていて……。まず報告するべきことの第一は、新調したメガネが、とっても良く似合っているということでしょうか。ウワサの頭頂部は、りっぱに成長しているということでしょうか(ただし、丸岡君にはかないません。念のため!)全体にかなりやせてしまって、少し小さくなったように見えます。顔も色白でほっそりしてしまったので、その分頭は大きくなっています。あの少しタレメのやさしい目はあの頃のまんまに、いいかんじの、「51才」になりました。
 裁判官・検察官・弁護人・被告がコの字型に机を並べて、皆の目が入り口に注目する中を、赤シャツ・白パンツの利明君は、ニコニコしながらやって来て、「ヤア、ヤア」と言わんばかり、めずらしいお家へつれてこられたワンパク坊主のように、ちっともじっとしていない。こっちを向くといきなり、バチッ!とウインクが飛んで来た。「エーッ!」と、純情な私はオタッテしまう。
 シャバにいる頃私達は、お互いの存在すらも知らなかったし、統一公判では同席していても、被告団は6人横並びだし、当時の私達は、自供総括をめぐって、ひじょうに非同志的な態度だったりしましたから、ほとんど直接にはなしたことはありませんでした。今回、生まれて始めて、利明君の話すのを聞き、正面からじーっと顔を見られるわけですから、もう私のワクワクと緊張がどんなものだったか……。ホントのところ、自供総括をめぐる非同志的な態度(私達は、自供は、私達自身の組織思想・同志関係が生み出したものだ、相互の自供はお互いにその根拠を内包しているという自己批判の立場に立てず、個々人の問題として、個をせめる誤りを犯しました。)については、どなられたって、口をきいてもらえなくったって文句は言えない。自己批判なしにまともに顔も見られない、立場だったりするわけですが……。「まあ、とにかく会いたい。全ては会ってからや」と尋問準備も、途中からは、「ええいむつかしい。でたとこ勝負、利明君にたよって大船や」と方針転換して、ひたすらルンルンとこの日を待ちました。
 で、始めてじっくり、観察した利明同志は? ハハハ、何だかな、私のもっていたイメージとは大ちがい! 「爆弾世代の証言」とか「支援連ニュース」「ごましお」そして、裁判官も「プロ並み!」と認める対東拘訴訟……からイメージする「クソまじめで、むつかしい顔をして、しょっちゅうむつかしいことばっかり考える、ちょっとこわそうな……」というのは、大ハズレ! (ナニ、そう思ってんのはアンタだけだって? かなあ?)
 ちょっとでも検事の質問に間があくと、サッとこっちをむいて、バチッ!(とウインク)、しじゅうニコニコしていて……検事かドジったりすると、又、こっちをむいて「ヤダネェー」という顔つき、「ヤセタネ」と言えば「ホレ」と頭頂部の輝きをみせびらかすし……。300たたきのマネをして……。
 検事は、ひじょうにゾンザイな質問を次々と出してくる人で(まあ、尋問の仕方について私は何か言える立場じゃあないが)質問だけ聞いていても何を話題にしているのかちっともわからない。例えば、「大成はどういうことで?」とだけ聞く。それを利明君は「方法ですか?」とか時々聞き返しながらも(たぶん証人テストで検事の尋問の流れが一定わかっているからだろうが)、検事の言葉不足を補いながら、説明していく。被告人は「人が良すぎるんだな、相手は検事なんだから、思いやってまで、答えるこたあないよ……早く答えちゃうと、すぐにおわっちゃうよ」とヒクヒク。
 検事の質問は、時制にそって一つ一つ利明証人の行動や考えを聞こうとはしないで、ドンドン飛ばして、自分の関心事だけを聞いてくる。ことに狼グループの他の同志達(将司証人が「アンフェアになりますから」と言って明らかにしなかった)についてしつこく、その言動を確認する。どうも利明証人尋問によって、東ア反日武装闘争の真実を具体的・客観的に明らかにしようというのではなく、あくまで検事のストーリーに固執し、将司証言でできた破れをとりつくろって……と考えているようだ。しかし、そううまくは進まない。
 検事はしばしば古い供述内容を持ち出して、「かつての供述ではこう言ったのではありませんか」とか「それはまちがいありませんか」とか聞いてくる。そんな時利明君は、「ウーン」とうで組をしてアゴをかかえる、頭を心もち傾けてじーっと(オイ、ネテナイカ!? と思えるほどに)考えこむ、そうしてオモムロに、「いえ、そうではなかったように思います」とか「ああ、そうだったかもしれませんが、今ははっきりしません」と答える。あくまで、いいかげんなことは認めない、今しっかりと確信をもって言えることだけを言うという態度をつらぬく。検事はニガ虫をつぶしたような顔をしている。ンダンダ、そうだよこれが利明君だ。正直にちょっとガンコに……いかなるアイマイさも許さない。だんだん調子が出てくる。
 利明君の声は、すっかり枯れてしまって、肺を半分とった人みたいにハスキーで、話すのがとても苦しそうです。長年人と話すことのない生活で声帯が弱ってしまったのでしょう。東拘の非人間的処遇は、元来人が持つ身体機能すらも奪うのです。
 利明同志証人尋問はこれからが本番です。検察側はあくまで、3グループの共同共謀正犯の成立と、殺意のデッチ上げを強調しようとするでしょう。しかし私達は、この裁判を通じて、これまで十分には明らかにしえなかった東アジア反日武装戦線の闘いの真実の姿を客観的に、具体的に明らかにしていきたいと考えています。将司君の証言に続き、当時、狼グループ内で将司君とは別の役割を担っていた利明君の証言は、より東アジアの姿を豊かなものにしてくれると確信しています。ことに、7つの爆弾闘争が警察の尾行監視下で行われたことや、検察がその存在を認識しつつ、後に政治的に利用するため隠ぺいを働きかけた虹作戦について、等々、利明君に聞きたいことはいっぱいあります。そして何よりも、彼がこの間何をどう考えて来たのかを、その思いのたけを、自由に話してもらえるようにしたいと思っています。
 私自身はまず、自供総括の誤りを率直に自己批判するところから、出会い直し、共に生き、闘い続ける信頼と確信を再構築したいとはりきっています。だというのに、彼のムチャクチャにうれしそうな笑顔に会ってしまって……いっきに「言葉なんかいらない、私達は同志なんだよ!」というとろけるような安心感の中に今はひたってしまっています。『帰って来て、良かったんだべ。こんなうれしそうな同志に会えて!』みんなに、ありがとう。
 さあ、しっかりして、彼の笑顔に答えられる(少なくとも証人泣かせにはならないように)直接尋問の準備を始めよう。
 みんなみんなお元気で。   再見!

ゆきこ 

YUKICO
inserted by FC2 system