支援連ニュース No.214

何故誰も「神道政治連盟」を問題にしないのか。

2000.06.09 浴田由紀子

 お元気ですか。
 25年目の5・19は、とうとうできあがらなかった「和君の本」の書きなぐり原稿の山を積み直してすごしました。
 どんなことがあっても、25年目の5・19までには出版しようね、という約束を果たせなかった編集長、応援してくれている仲間達、待ってくれている全ての人々に、ごめんなさい。何が最も困難か!? 自分自身の問題としては、ある程度「話はついている」つもりなのですが、時代状況の中で客観的にとらえ直そうとすると、かぎりなく未総括というか、むつかしくなってしまいます。物事を、政治的に考えられないせいでしょうか、それでもこりずに作業を続けます。こういう視点で書いてみたら、とか、読者はこういうことが知りたいのだとか、知恵とかヒントがあったらぜひ貸して下さい。
 前号に、森内閣成立過程への不信を書いたけど、今度は、「天皇を中心とした神の国ということを国民の皆さんに承知してもらう。その思いで我々が運動して三十年たった……」それを「(これまでの政府が)及び腰になることを、しっかり前面に出して」やっていこうと思っている首相の発言が問題になっている。
 マスコミと野党は、失言だの軽率だので首相の資質がないと批判し、自民党は「失言の森かくし」にやっきになっている。
 しかし、私は、これは森首相自身にとっても、そのとりまきにとっても、失言なんかじゃあなく、彼らが一つずつその目的を実現していく、そのために人々の「アレルギー」や「反発する感情」をためし、マヒさせていくためのステップなのだと思う。そして、マスコミも野党も、森首相個人を批判して、彼が三十年に渡って「神の国であることを皆さんに承知してもらえるように」活動して来た「神道政治連盟国会議員懇談会」とは何なのか、について言及しようとしないのは片手落ちで本質を問わないものではないかと思う。問題は、森という軽薄者が首相になったことにあるのではなく、神道何とかカントカという「神道精神を国政に反映させようという」宗教・政治団体の顧問が首相になってその団体の利害をつらぬくといったことにあるはずだ。報道によるとこの団体は、建国記念日制定作業の過程で生まれ、最近では元号法制化、自主憲法制定、君が代日の丸法制化、昭和の日制定を策動した人々であるらしい。まさに天皇制復活の大元じめ、扇動役をはたしてきた人々なのだ。そして今、30年来の古参役員をようやく首相にして、これからドンドン神道精神を広めよう、天皇制復活を進めることができると大いに期待し、森氏も「ヨシャ、今までの政府が及び腰だったことを、俺が首相になったのだから、もうこわくないバンバンやるぜ」と言ってみせたって何の不思議もない。失言や意に反した表現なんかではない。本音の決意表明だったのだ。(それならそれで、正面から対峙すればいいものを)。
 問題は、森とはそういう奴だ(30年も同会でやっていることはゴリゴリの神道信者=天皇主義者)と知りつつ、かつ口は軽いことを知りつつ彼を首相にした人々の意図は何か。何故今、そういう森なのかということだ。いくら自民党に人材がいないと言ったって、彼らにとって森よりもましな人はいると思うのだが。使いステ総理・神の国だの国体だのとバンバン「失言」してもらって、人々とマスコミに免疫をうえつけるための過渡期首相として、採用されたのが森なのではないのか。問われるべきは、「アホでケーハクな森君」ではなくて、森をスケープゴートにする“裏方”の意図だろう。森首相自身、紙に書いてあること以外言うなと言われていますから、と自らカイライであることを自白している。
 二つ目は、何故誰も「神道政治連盟」を問題にしないのか。連盟には228人もの現職国会議員がいるらしい。そうして彼らは、「神道精神」というりっぱな宗教を国政にもちこむことに努力している。公明党と創価学会の関係は政教分離だの何打のでしょっちゅう問題にされてきた。そのために公明党が自民党を含む人々からどれだけの非難と制約を受けてきたかを考えると、何故公明党はいけなくて、自民党はいいのか(同会の役員のほとんどは自民党の役員でもある。)疑問だ。みんなで靖国に参拝する会とやらもそうだ。彼らは今、ゴリゴリの天皇主義者を首相にして、「天皇を中心とした神の国」と言わせることのできる時代になったと思うほどに自信をつけているということなのだろう。
 ついに森首相は発言を撤回しなかった。自民党も、そして野党も「失言」以上の追求はしないで、首をすげかえることさえもしなかった。彼らの総括は国際的にも国内的にも、たいした反発はなかった、十分に許容されうる、というものなのだろう、ずい分なめられた話じゃあないか。マスコミと国会議員はもるめこめても、人々はそう甘いもんじゃあありませんぜということを、何とか、衆議院選で示してやりたいものだ。
 私は「日本は神の国」なんて考えの国会議員がこんなに大勢いるって知らなかった。最近、国会議員の資産公開というのをやるようになったけど、これからは所属団体(政治的であれ宗教的であれ、体育クラブであれ、PTAであれ)も全て公開することを求めた方がいいかもしれない(エ? 非公然地下組織メンバーはどうするって? そりゃあどんなことがあっても徹底して地下でありつづけるべきでしょう、)冗談じゃあない。30年間も「神道精神を国政に」と言っている人が権力の座に座って「憲法を守る」ったって誰が信じられる。
 ちなみに四半世紀、共産主義・社会主義の実現をと言っている奴の「護憲」も信じられないって? しかし私達の場合は、森君とははっきり違います。現状から、理想の社会へ向かう過程においてまず、現有憲法を尊守し、民主主義を徹底確立することの中で、社会の主人公である人民自身が、自らを主体として変革して、新しい社会を作れるようになるということにおいて、そういうか時として、今、この国でし、現有憲法を尊守するところから、と考えています。(彼らは、守りもためしもしないで、「現状に合わん」「所悪の根源は憲法」と言っているのです。自分達が解釈改憲、違憲、軽視を積み重ねてズタズタにした結果が現状であることを棚に上げて、です。)

 浴田裁判は、6月6日 自白の任意性をめぐる被告人調べがまあ何とか終了しました。弁護人質問の間はそれなりにとばしたり、ぬけたり、……程度で良かったのですが、問題は、検事質問でした。始めは余裕だったんです。ところが終盤にきて、調書内容について「言ってないのに書いてあること」と聞かれて、困った(調書の具体内容は予習してなかった)。「具体的に」という言葉に頭が止まってしまって、……ここは、裁判長の助け舟。つづいて「やってないのに書いてある」と聞かれて、ム、ム、ム〜、質問の意図をよみきれずチンプカンプンの脱線回答で裁判官をまであわてさせてしまった。(右陪席裁判官なんかはっきり「アチャー」という動作をしとったなあ)。東拘に帰りついてようやく、(アーッ、正解は「尾行記録」や!!)と思いついたのだが、ア・ト・ノ・マ・ツ・リ。クソッタレのコクチキだ。みなさん何事にも準備には万全をつくしましょう。ことに違う世界の人々は、違う発想をすることを忘れないようにしましょう。
 次回は、取り調べ担当の村田恒検事が証人出廷。さて、23年目の対決、勝敗はいかに!? 村田氏は今、弁護士だそうです。彼はかって、「弁護士というのは、正義とか人権とか言ったって、金をとるんだ。金にならなきゃあ弁護もひきうけないんだ」と言っていた。今彼は弁護士になった。彼の中では何がかわったのかぜひ聞いてみたいと思うのは、まちがっているだろうか。もし彼がかっての弁護士に対する偏見に気付いたのだとしたら、彼のために喜びたい。「いや、金のために弁護士をやっているのだ」というなら、「どうぞ、あの頃あなたが持っていた人間としてのホコリをすてないで下さい」と言いたい。被疑者と検事という出会いではあっても、少なくとも「自分を負かした」ことのある人には、せめて世渡り上手なだけの人間ではない。それなりの人であってほしいと思う。
 秋から弁護側立証に入ります。シャコの証人採用は、かなうでしょうか。ドキドキと楽しみにしています。
 300たたきも再開した方がよさそうだな。
 梅雨が来て、あつくなって、すごしづらい季節ですが熱い熱い時にしましょう。お元気で。
再見。

ゆき子 


YUKICO
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