支援連ニュース No.233

みんながいてくれて、共にあることが、私の強さです

2002.01.18 浴田由紀子

 お元気ですか。世相は寒い、きびしい冬のようですが、負けちゃあだめですょ。
 私のほうは、身も心も熱い燃えるような冬をすごせそうです。なんといっても、この冬は、「洋服革命」(今風の暖かい洋服をいいろいろ指しいれてもらって、ぬくがっている)に加えて、検事君からの「超メチャクチャな論告求刑・無期懲役」というやつのおかげです。熱うならずにおられるかい!! というところですね。
 年をこせば、待ちに待った論告求刑という暮れの28日になって突如検事は「超法規的釈放に関る証拠」なるものを提出してきました。今頃になって、何の話や? 検事君、いろいろと自らの仕事を点検してみて、どうもこの点が弱点だと不安になったのでしょうが、出てきた「証拠」というのは、すでに97年に内容をまる写しにして提出された「77年10月の釈明書」。超法規釈放については、検事も弁護団も、「釈放は合法的であった」ということに争いはない。問題は、合法的釈放の効力がいつ、どこで、誰によってどのように「合法的に」取り消されたのかの証明を求めているだけなのに……再び、重複でしかない「合法的釈放の釈明書」を出されてもねぇー。
 加えて東拘は、この件について至急調査を依頼する由の友人あてレタックスを(東拘の規定通りの時間内に提出したにも関らず)、27時間以上も遅らせて、配達指定翌日の午後に投函するというムチャクチャ前代未聞の公判準備妨害をやってくれた。明らかに11日公判のためのレタックスであると認識しつつ、であるから許しがたい。当日は検事のここへきての全く意味のない証拠提出と同時にこの東拘の公判準備妨害をも抗議批判すべく「意見」を準備して出廷。(抗議の意見は結局言わないことにしたけど、検事、東拘の汚いやり方に対する怒りがなくなっていたわけじゃあない。)
 法廷は、さすがに論告求刑の日というべきか、いつもとちがって、被告人入廷前に傍聴席がびっしりとうまっていたので、たじろいだ。いつものように入廷してくる傍聴の仲間一人一人とエールを交わす間がないのだから。仲間の存在をちゃんと確かめられなくてゴメン。
 始めに検事提出証拠の確認と、弁護側請求証拠のとり下げ確認をして、検事の論告要旨朗読は開始された。始めに若い方の検事君からなのだが……途中で交替した主任検事共々、何故か弱々しい声で、しょっちゅうつまったり、読み間違えたり、とばしたり……せっかくいっしょうけんめい書いてきたのだろうに、聞いていて気の毒になる位に元気がない。加えて中味も「マチガイ、デタラメ」だらけなのだから、……被告人は、よっぽど「しっかりせんかい!!」とゲキを飛ばしそうになってしまった。膨張の仲間達はよくがまんして最後まで聞いてくれた。
 求刑は、「無期懲役」だった。まあ、それ自体は検察にも立場がある。27年前に東アジア反日武装闘争の細部がどのように担われたものであるのか否か以前に、超法規的釈放罪だの18年間「逃亡」罪だの、「赤軍」罪(つったって、解散しちまったから、もう帰れる所はないのだがなあ……ブツブツ……)だのに加えて、苦心の作文「検面自供調書」という奴らの信用性をコテンパンに粉砕した罪はデカイ。あろうことか、27年前の「共犯者とり逃がし」罪だってある……。求刑理由には、アレヤコレヤ……検事のメンツも意地も当然にあっただろう。私達は他でもない「階級闘争」という奴の一翼を闘っているのだと、あらためて思いおこそう。
 だが、しかし、それならそれなりに、自分の言うことには責任のもてる筋の通った話にしてほしかった。つじつまの合わない話や、ためにする話や、のみならず、全ての公判資料と現実の、何をどうつなげたら、こんな話が出てくるか、と思うようなことが、あちらこちらにちりばめられて、つみ重ねられて「無期」のひとことへもっていこうとしているようだが……無理がある。加えて検事君、27年にも渡る膨大な東アジア反日裁判資料の山の読み込みに途中で見切れしたものだとしか思えない。事実や情状の根拠としてひっぱり出されているのが、ことごとく、統一公判での被告人の言動なのです。
 いわく。全く反省なぞしていない、自己の犯行の正当性を主張した例として、あげられているのが、第10回公判(76年)で「傍聴人がメモを取る権利がある旨意見陳述した」(本人も忘れている)というのだったりするから、たまりません。「被告人の当時の爆弾闘争の闘士の有様を如実に物語る」というのですが、ご存知のように、傍聴メモは今や、公開公判の常識!もしかしたら、裁判所中が、かつての被告人なみの「闘士」になってしまったのかしらん? さらに、あろうことか、言うに事欠いてなのか、苦しいデッチ上げ作文、調子にのりすぎて、思わず筆がはねたのか、はたまた、今はやりのフラッシュバック映像の濫用によるスリ込みマインドコントロールの一環か……数々の誤解釈やおしつけの総仕上げ的に、総論二ページ目には、しっかりと、『……同年八月三〇日に「大地の牙」が実行した三菱重工爆破事件後間もなく……』と三菱もいつの間にか牙の仕事になってしまっている。ここまで大胆なデッチ上げ論告が、はたして、通用するものなのだろうか。
 検事の朗読を聞きながら、この6年間のていねいな審理はいったい何だったのかと思い返さざるをえなかった。1年単位で交替させられる検事君にとっては、十分なひきつぎもないままに資料の山をおしつけられた末に見切れしたのだろうか、だからといって6年間の実質審理をまるでなかったように無視して25年も昔の実質以前の法廷の話をつなげて、論告を組み立てていいということにはならない。こんな理不尽と非科学的な求刑が許されるわけがない。公判理念の冒涜だ!
 検事論告は、被告人の役割を「斎藤と車の両輪」「むしろ被告人の方が、積極的かつ周到で、極めて重要・不可欠な行為を行っていた…」さらに「革命思想は、強固で狂信的であり」としめくくられる。75年検事のお仲間達が、私にくりかえした数々のののしり(「肉体でオルグられて男についていっただけ」「理論も思想もない単ゲバ、爆弾魔」「ホレた男にダマされたバカな女」「使いっ走り」「ドジ(オマエのせいでみんなパクられた)」(まあこれはそうなのだが……)etc.etc)言葉との関連はいかに?と問いたい。あの日々の屈辱とコンプレックスがどれだけ私を育てたことか……と言ってはいけないだろうか。
 世の中は、ダブルスタンダードだの2枚舌3枚舌が流行のようだが、さて被告人の正体やいかに?! あまりに過大な幻想や期待はしばしば人をつぶすことを検事君ご存知だろうか……とだけは言っておこう。
 さあ、粉砕すべき論告求刑はなされた。弾圧の大きさに価値はない、粉砕してナンボじゃあ、根性を入れてガンバロウ!
 私達は、可能な闘いを力いっぱいとり組んできた。そのことへのあせりがこの検事君のデタラメムチャクチャな論告でもある。あとなすべきは、裁判所が、勇気をもって、キゼンと、まっとうで公正な判断をなしうるように、もうひとふんばり裁判所のケツを押す、そんな最終弁論を書くことじゃあないかと今は思っている。しかしこれがまたベラボーにむつかしい。
 求刑公判のあと、大勢の仲間から「負けるな、ガンバレ!」「私もくやしい」という激励と共闘の便りをもらいました。みんな、ありがとう! 何度もくり返し文面をみながらとってもうれしく、はげまされて、勇気がわいています。みんながいてくれて、共にあることが、私の強さです。どんな時でも、最後まで力をつくしてがんばります。どうかまた、智恵や力をかして下さい。さあ、3月11日に向けて、ガンバレ、ガンバレ……。
 四半世紀昔を問う法廷も、今の時代と社会から、独立した空間だとは思っていません。ひとつながりの闘いを共に!!
 みんなお元気で、勝利のカンパイを共にすべくガンバロウ!
                               ゆき子


YUKICO
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