支援連ニュース No.242

独房で堂々めぐりをしています

2002/10/11 浴田由紀子

 お元気ですか。いきなりの秋です。数日前からハンテンをひっかけて、「ついにこの国は、監獄の内も外も監獄なみに真夏と真冬しかない国になったようだな」なぞとブツクサ言っています。次々にいろいろなことがおこるのに、ちっとも考えも感情もついていかなくて、独房で堂々めぐりをしています。支援連ニュースの締め切りを3日もすぎた午後、いくらなんでも……と自分をひっぱたきながら……。
 黒川正男さんの訃報は残念でなりません。あんなにお元気だったのにと。芳正君も手紙に書いていたように、誰よりも驚いて、誰よりも残念でならないのはご本人自身なのではと悔やまれます。
 75年、私たち8人が逮捕された直後から、黒川正男さんは、芳正さんを含む私たちみんなとの新しい出会いと共同を開始して下さいました。当時の状況の中でその勇気と決断は、並大抵のことではなかったろうと、年と共に重く感じていました。ミノハラ裁判の荒れる法廷で、弁護団席の一角に黒川さんは荒井幹夫さんと共に記録用紙を開いて座り、何も言わずにただ、ただ私たちの言動を見守って下さっていました。「補佐人」そんな制度に驚くと共に、けっして理解されることも許容されることもないはずの「反日武装闘争」に、最初の理解者たろうとし、支援者たろうとし、「共闘」者たろうとし、理論や立場をこえた、肉親としての愛情と、歴史の中で人生をやってきた先輩としての責任と、直視しようとする勇気と誠実さを教えて下さいました。
 95年、再逮捕された直後の勾留理由開示公判での再会、東ア反日父母たちの一団に出会った時、「ああようやくまた、みんなのフトコロへ、帰りついたのだ」という思いでいっぱいにさせてもらいました。そうして再び、8年もの第二次統一公判を支え見守りつづけて下さいました。いっぱいのことはおっしゃらなかった。ただただ、静かにうなづいてくださった。ありがとう。どうか、今はやすらかなおねむり下さい。出逢えたことを宝に大切に生かして、これからもみんなと力と心を合わせてやっていきます。

☆421号、利明君の久しぶりの登場はうれしい。
 山室裁判長は、狼再審も同時にかかえているが故に、保守的な決断しかできなかった面があったのかもしれないなと思っています。
 「非武装中立は誤り」論には、私も断乎反対です。くわしくは「ごましお」に書きましたが、「独立国家における自衛のための武装の必要」なんていう言い方をしようとも(ブッシュもシャロンもみんな自称、自衛の軍隊であり、戦争であり、軍事攻撃です。)、それ自体が利明君の東ア反日総括、武装革命路線の否定とどう結びつくのか理解できません。「今も武闘派の尻尾を残している」が故に私は、国の軍事力は否定したいと思うのですが……。
☆日朝国交正常化交渉と拉致問題をめぐるアレコレについて考えをまとめて書こうと思っていましたが、できませんでした。ただひとつは、一方に「そんな考えはなかった」といいはる過去への対応は仕方がある中で「社会主義建設途上の誤り」と率直に認め自己批判し、その姿勢を示したことは、それなりに評価し、受けとめるべきではないか、相殺にするということではなく、歴史や過去の誤りに学び合うことから、新たな相互関係を切り開ける転換点で今、ためされているのだという気がしています。もうひとつは、拉致された人々が、強いられた状況の中で築いてきたそれなりの人生を尊重し、受けとめ、再び彼らの運命を、政治によって強いるのではなく、彼ら自身の自由な選択を、だからこそ保障したいということです。

☆徳永五郎さんの「東京を去るにあたって」は、忘れかけていた多くのことを思い出させてもらいました。「自分の場」から、くり返しくり返し、自身を問いつつ、これからも共に在りつづけられる者でいたいと思っています。

☆将司君の「滞日中国人による自然発生的な反日闘争」というとらえ方は、そういうのもまちがいじゃないと思います。来日労働者に対して、この国が「彼らを敵にまわす扱い」しかしていないことが、その根拠としてあるわけですから。
 パレスチナの状況と、この国におけるパレスチナ連帯の「姿」に、キリキリカリカリしてしまっています。ブッシュごときの「反テロなのか否か」「米につくのか、テロリストにつくのか」なんぞという理不尽な二者択一の論理にひるむことなく、抑圧や侵略に抗し、共生をモサクしつづけるとりくみを……それこそ「多数派」にしてしまえばいいのです。私たちが変に自己統制し、ひくつになっていることが、敵を利し、軍事力の優勢な者が世界を支配することを助けているような気がします。

☆シャコも川柳でごほうびをもらったのかあ。でも“妻の顔”なんてなんかちっと……だなあ。この調子でいったら、労働賞与金よりも、芸術「賞金」の方が大きかったりして。その場合は出獄後の職業を考え直した方がいいかもしれません。

☆宿題は、進んでいるような、いないような、苦しい日々が続いています。9月は「文章が書けないのは、いい本を読んでいないからだ」と自己診断して、官本にあった「杉浦明平記録文学全集全四巻」を読みました。十月は、A子さんに送ってもらった「松下竜一その仕事全集」を読みます。それでなお文章が進まなかったら、別の診断と処方が必要です。
 トコトン雑々になってしまいました。いよいよ時間です。次回はもすこしまともに書きます。
 秋を楽しんで下さいね。みんなお元気で。
                       再見!! ゆき子


YUKICO
inserted by FC2 system