支援連ニュース Ｎｏ．245
2003/02/12 浴田由紀子
お元気ですか、立春になったら急に寒さがぬるんできたような気がします。シャバは、ことのほかきびしい冬だったようですが、誰もバテてはいませんように。
前号の編集後記に台湾での死刑制度廃止予定に関連して「日本はどうしてこんなに人権後進国なのだろう」と書いてありましたが、このところの韓国での反米運動のもりあがりや、死刑制度廃止への動き、対北朝鮮政策、や台湾・中国・東南アジア各国等々の変化を見ていると、かつて私たちが「軍事独裁政権」等と批判してきた国々が、まさに「自国独裁政権打倒を闘い続けた人民の力」によってはっきりと変わってきていることを実感できます。当時この国の左翼は、私たちも含めて、あたかも自分たちは、これら隣国に比して「進んだ民主主義国」「社会主義実現へ向けてより進んだ革命運動の担い手」であるかのような錯覚とゴーマンの中で隣国の人々の闘いを見、あくまで自分たちは「支援者」であるという立場で、真に「共闘者」として共に自国を変え合っていくために、彼らの闘いに真摯に学び「帝国主義本国革命主体」としての方策を見いだし実践することに怠慢でありすぎたのではないかという気がします。「進んでいる」かのような錯覚そのものが、資本主義・エセ民主主義の論理にからめとられたものだったし、何よりも「経済的豊かさ」と引きかえに、人間でありつづけるための感性を売り渡して行ってしまったのか、気が付いたら、どこよりも遅れた人権小国に安閑としてしまっている。
私はかつて、この国の憲法というのは、あんまり相手にしてなかった。第一天皇制があるし……。ところが外国でくらしていて、特にアフリカとかヨーロッパとか、から来た人々に会うとみんな日本のことを「世界でもっともすぐれた理想的な憲法を持つ国」と学校で教えられていて、そんな国の出身だと「尊敬」される。イヤ私が作った訳じゃないし、私しゃその理念で生きてないし……第一日本は憲法に書いてあるような国じゃないよ、自衛隊はあるし、資本の論理だし、天皇はいるし……等々というと、今度は「あんな立派な憲法があるのに、どうして？ 何故みんな守ろうとしないの？ それで平気なの？」とトコトン人類のウラギリ者みたいに言われてしまう。
今この国はますます「理想の憲法の理念」から遠ざかり、「世界のうらぎり者」になろうとしている。どんなりっぱな器があっても、どんな立派な道具があっても、一人一人が人間らしく生きようと求め続け、創り続けようとしないかぎり、それはもっていないのと同じになってしまうのだろう。とんでもない言いがかりでイラクに対して戦争をしかけ、それに世界を動員しようとしている米・ブッシュや親方ブッシュの顔色を見、指示を待ってしか指一本動かせない小泉を許しているのは彼らをそこに在らしめている私たち一人一人なのだから。断乎たるＮｏと、私たちの理想を昇然とつきつけたいものだ。獄中にいて、世界中で日本各地でもりあがっている「反戦」の人々の闘いにはげまされている。持ち場をガンバレヨ！ と自分にいいつつ……。
ジャン！ 苦闘の控訴趣意書は、弁護人の努力の結果締め切りが９月１日まで延期になりました。ヨカッタ！ と同時に、さあ、いいかげんな仕事はできない、言い訳の口実はなくなった……これで勝たなかったら、申し訳けのしょうがない……というわけで、気をひきしめて……ちょっと心に余裕も入れて、継続闘争中であります。くいのないものにしたいです。
もうひとつジャン！ は利明君の領置規制国賠勝訴ですね。「ヤッタゼ！ ブラボー！」と思わず叫んでしまいました。利明君の対案を出した理づめの説得の勝利でしょうか、とくに死刑囚（長期在監者）の立場のちがいに言及させたことは大きな成果だったのではないかと思います。（うーん、私のは一面的で即時的でいけなかったなとあらためて反省です。）
シャコの出獄準備はうまく進んでいるのだろうか。ようやく取った国家免状の写真が囚人服というのは泣けてくる。法務省も本気で在監者の社会復帰を考えるなら、将来シャバで生きていくための大切な道具になる免状をせめて私服で、普通に撮らせること位思いつけるはずだのに、これじゃあまるでせっかく努力して取った免許に「こいつ務所帰りの前科者」というレッテルをはつて使いづらくさせてるようなものじゃあないか！ 法務省は本当に「人間」の問題を扱っているという自覚のない人々だ。建て替え東拘というのも、閉息性を強め拘禁性を強め、自然とますます隔離して省エネの時代に、自然光を排除したエネルギー浪費建築を作るのだから…死刑制度廃止も獄中者の人権も彼らにはいっさいまかせられない。
シャコの免状は、シャバに出て男前を作り直してから再発行してもらうのがいいね。しかしきっと何人もの元獄中者が、そり故の余計な差別に泣かされたりくやしい思いをしているだろうと思うと、たまらん。とりあえずは、合格おめでとう！
もう少しで春です。その前に戦争を止めて、参戦策動を止めさせて……やるべきことはテンコ盛りですが、気持と力を合わせて、共に！ 私は控訴趣意書ひきつづき気をひきしめて仕上げます。みんなお元気で、再見！
ゆき子