支援連ニュース Ｎｏ．249
2003/06/13 浴田由紀子
お元気ですか。
あれから28年目の６月11日、シャコは元気に、無事にみんなの所へ帰ってきたようです。本当によかった。とってもうれしいです。
シャコ、ごくろうさま。そして、シャコを支え、様々な仕方で闘いや困難を共にし、奔走し続けて下さった、家族の方々や、友人たち、みんなにありがとう！ おかげでシャコはどうやらグレルこともなく、シャコのままで、キゼンと生き闘いつづけてくれていたようです。
シャコは、75年５月19日にいっせい逮捕され、皆で束になって統一公判を闘った将司君たちや、その途中でアラブへ行ってしまったあや子さんや私とはちがって、当初の７年間をいきなり一人地下に潜って闘いぬきました。私自身この年月のシャコの苦労を、自分がアラブへ行って国際おたずね者として、一人で活動する目にあうまで十分に思い及ぶことさえも出来ませんでした。私の公判に証人出廷した時シャコは、自分の完全黙秘を「自供した同志たちのくやしさのリベンジでした」みたいなことを言っていたけど、獄中に同志たちをとらえられてなおかつ自身も、仲間もウォンテッドの身で、何をどうすることもできないままに、友人たちに連絡をとることさえも相手の迷惑を考えたらできない中で自分を失わないで生きつなぐことがどれだけたいへんな日々であったか、を思うと、どうかシャコ、これからは、28年を闘いぬいた自分にごくろうさまをするつもりで、獄中のみんなの分まで自由に大きな顔で中間たちに出会いどこへも自由に出没し、やりたかった仕事を力いっぱいやってほしいと思います。
そんなシャコの華の門出だというのに、今やこの国は、戦争をする国への道をまっしぐら、ツルベ落としのいきおいでつき進んでいます。あの日々の我々の「闘い」は、そしてそれからの28年は、この国の敗戦後の58年は、……いったい何だったのだ!? というべき状況ですが、私たちのあのささやかな抵抗も、問題提起も、仲間たちの地道なとりくみも、まだまだ足りなかった、もっと上手にもっとかしこく、もっとじっくりと、もっと広範に人々と共に進めるしかこの反動のいきおいを止めることはできはしなかった。勝って（人々の利益を、対等に尊び合って生きていける社会を実現して）ナンボの世界です。28年は長かったけど、先はもっと長い。まあ、根性ひきしめて、ガンバロウ！ 共に！
新東拘。運動場でナワトビと筋肉鍛錬用のバネを使えるようになった以上の改善はありません。外窓ふきのあとルーバーを開く人がきたので「せめて空の天気がわかるくらいまでは開いてほしい」と言うと「外からのぞかれるから開けない」と言っています。外窓は、大部分がくもりガラス、その上下70cm位ずつに７枚のルーバー。そのルーバーを開いて（全開してもせいぜい巾７cm位のすきまです。）はたして、高層建て物の外窓から1.5m奥にあるはめごろし窓の中にいる在監者を「のぞく」ことが出来るとは思えません。「外からのぞかれる」なぞとあたかも在監者の人権を守るものであるかのような大ウソを言わないで、「在監者には、シャバの風景も自然の様も見せることはしない、『万年保安房』的な密閉空間で気力体力人間性をことごとく奪いつくして管理したいのだ」とはっきり言うべきです。新北舎ではルーバーを上下にずらしてすき間を広くしていたと聞きました。できないことではないはずなので、交渉を続けます。スリガラスもトビトビにでも透明にして「のぞかれる」不都合はないはずです。命の尊さを、人間の尊厳の大切さを一番意識したい時に、拘置施設がそれをあえて否定し、破壊するこの国の法務行政とは何なのか……。“病人”が確実に増えているのが何よりも心配です。私自身も先月は“失語症”のようでした。（想念が言葉にかわらない……。）
さあ、シャコは元気に帰ってきてくれた。１つ肩の荷を降ろして１人ずつ１人ずつ確実に取り戻せる日のために再び力を合わせて歩を進めよう。もちろん獄中は、ことに無期か有期か、検察の大攻勢に直面している被告人はフンドシのヒモ、カブトのオもガッチリ閉め直して、ガンバレ！ です。「時間は――ホッーカツのムキ出しタイム――だんだんメッキがハゲテのルー」なんて、いっている場合じゃあありません。さあ次のヤッタゼ・カンパイの準備にとりかかりましょう。みんなお元気で！ そして再見！
ゆき子
ＰＳ
前号で丸岡君がシャコと私用に「純真」という訳語をあてる「ナイーブ」という語は使えないなぞと書いていたけど、ハハハ、……繊細か純真かで繊細をえらぶとは、……うん、なかなかだましやすいいい奴だな。大事にしたって下さい。
私としては、踏んでも、けっても、ひっこぬかれても生き抜く雑草の心をもった、けなげでカレンな野の花の「ナイーブさ」とでもいってほしいところだが……。