支援連ニュース No.251

この「監獄時計」を何とかしたい

2003/08/15 浴田由紀子

 お元気ですか。
 今年は涼しい、短い夏のようですが、東拘もエアコンが効いていて、季節感がまるでありません。全く陽差しのない暗やみの運動場にムギワラ帽子がおいてある、フロが週3回になった、午後冷たい飲みものが出る。ウチワが部屋にある。等々が「夏だぜ」と知らせてくれるのですが、今ひとつありがたみがうすいなあ、と思ってしまうのは、ぜいたくというべきでしょうねえ……。今これをヒザカケをして、綿入れチャンチャンコを着て書いています。
 世界も、この国も、季節だけじゃない異常な事、信じがたいような、デタラメ政治がまかり通っているようですが、ここ東拘の2階A21房の住民の頭の中も例外ではありません。この2ヶ月位の間にスットバシタ原稿(パンフ)は5指に余るものです。でじゃあその分本業の公判準備が進んでいるかというとこれもスットバカサレテ、オクレニオクレテ、今になってバタバタキュウキュウ、じゃあ「アルバイト」の「和君の本」に集中していたのにちがいないと、善意な人々は思ってくれるのですが、……これが修正確認のまま側溝をまたいで空ブカシになっている……と、いくら自分に問うてもわからない。ひたすら「時間」そのものが矢のように通りすぎて行って、あとから必死で追いかけている、という今日このごろ……。何とかならんもんでしょうか。
 カタヤ、西日本リハビリ温泉旅行中のシャコからは、3日にあけずハガキラブレターが届く、これはとってもうれしい。何せ、次はいつ、どこへまわるのかが、本人にもわかっていないような旅らしいから、アレコレと旅のルートを予測して、私までいっしょに楽しんでいる。それにしても出獄2ヶ月で車の免許もとって、知らない町へも一人旅に出かけるとは、なかなかエライもんだ。前号で大阪のSさんが、「みーんな“おかえり”になるまで〜」と書いてくれていたけど、私も早いこと温泉旅行ならぬ「わび寺めぐり」でもしたいものだとまた夢がひとつふえてしまった。その前にこの「監獄時計」を何とかしたい。
 『和君の本』の修正は、主に旧日本赤軍関連の部分で必要になっています。まだ語るべき時代と同じような状況下で困難な闘いを強いられている同志たちもいて、いろいろ奥歯にもののはさまったような言い方しかできないということもあるし、私自身、まだ冷静に総括もとらえ返しもできていないということがあって、とってもむずかしいのだ。
 とこに私は、獄中で、同志たちと「東アジア反日武装戦線獄中兵士」とか、(まあ今から考えればちょっと大げさ)名のっていて、そのまま、獄中の同志たちとも、支援の仲間たちとも何の「アイサツ」もなしにアラブへ連れていってもらって、「東ア反日アラブ支部」を結成するのではなく、時間はちょっとかかったけど日本赤軍メンバーになった。その過程で一番悩んだのは、二つの組織の政治路線の違いとか、思想的な立脚点の違いとかじゃあなくって、(当時も今も私には政治的な違いというのはあんまり理解できなくて、未だに「反帝・人がみな対等に生きられる社会」をめざすなら、みんな同じ仲間じゃないの、という考え)東アのメンバーなのに同志たちにアイサツもなく他の組織に入るわけにはいかない、ということでした。イヤ「東ア」というのは党ではないのだから、二重党籍の矛盾はない、とか、よりよく革命の役割を担うにはどこがいいのかという問題なのだとか、言われて反発したりそうなのかなと思ってみたり……自分としては人生で一番しんどい時期だったから、何とかうまく伝えたいけど、これがどうしてもうまく話せない。日本赤軍があんなにアッサリ解散(名称をかえるとか綱領・路線を変えるとかの宣言じゃない解散の宣言をいきなり)してしまって、「××戦線」とか「××党」とか名のってそれなりに社会に何かをしてきて、結局組織というのは何なのだろうか、と考えつづけています。
 今この国の反戦運動や様々な反体制運動の動向を見ていると、人々の想いを誰も責任を持って一つの力や勢力にしていきたがらない。反体制の人々が持っている能力や社会の中での役割を今のこの現実を変えるためにつなぎ合って組織し合っていこうとはしないことが暗黙ルールになっているのかしらと思う時があります。でもそれが、軍拡派や保守派のやりたいほうだいでどんどんひどい状況になっていくのを許している。日共も新左翼も自組織中心で、市民を利用したり踏みつけたりしてきたから「組織することされること」への反発がすごく強いのだと聞いたことがあったけど……。東アジア反日武装戦線というよくもわるくも出入り自由で、一人一人の主体的な意志によって参加し、一人一人が自分の行為に責任をもとうとして共に闘ってきた組織から日本赤軍に合流して、いろいろなケイコウ出目の同志たちがケンカしたり反発し合ったり競争心だけではり合ったりし合いながらも、それでも共通の目標をたしかめ合いながら、力をひとつにしようとしていっしょにいたからできた何かもあったはずだという気がするから、そのヘンのところを何とかみんなが少しでも元気になれるように報告したいものだと思うけど、どうもまだ個人と組織との関係、組織と人々社会との関係(政治的・社会的な責任をどう担いつづけるのか)をスッキリ総括できないでいる。
 しめ切り直前の控訴趣意書と「和君の本」の修正と、どっちも長年のツケの払いこみみたいですが、何とか次へつないでいけるようにしたいと格闘しています。
 みんなお元気で。気候がおちつかないのでどうか体を大事にして下さい。とくに昔若かった人たち!
                 再見!           ゆき子


YUKICO
inserted by FC2 system