支援連ニュース No.261

まさに私の生命綱でもある文書・資料の山と格闘中です

2004/06/22 浴田由紀子

 お元気ですか。
 「早よ原稿よこせ」という編集長のひめいが夢の中にまで聞こえてきます。
 5月、何もかもがいっきに起こったようで、頭の中がほとんどオーバーキャパシティ・思考停止状態です。確定・下獄までの時間が限られているので、やっておくべきこと、書いておきたいことがいっぱいあるのに、きもちばっかりあせって、毎日「課題リスト」の順番を並べかえて時がすぎます。獄中で、読むことと書くこと意外に「仕事」はないのに、読んでも頭には入らない(字面だけ追っていて、時々気がつくと紙面とは全く別の文章(ストーリー)が頭の中で進行している)し、書こうとすると、およそつながりのある文章にならないしまず言葉が出てこない。ボワーッと脳ミソや心の表層だけで「生きている」みたいです。いけません。しっかりしないと!
 の一方で、95年4月にワクワクしながら再開した東拘ぐらしもいよいよ終局へむけて、ラストスパートということで、未だ確定受刑者になるという実感はわかないままに外回りは固められつつあります。
 この9年間自然体でやってきた友人たちとの面会が「調整」されるようになり、私は、「領置規制」「房内所持制限」との攻防の「成果」であり、まさに私の生命綱でもある文書・資料の山と格闘中です。どうしても「読み書き」よりも「肉体労働」を優先してしまう傾向はいくつになっても、どういう状況に置かれても変わらないものなのでしょうか。ひたすら「紙の山」をあっちへ重ね、こっちへ積みかえ……しています。
 問題はこの「攻防の成果」は、他ではないこの9年間の(そして、それ以前からの永々とした)仲間たち、弁護団との交流と共闘の証そのものであるということです。どんなことがあっても無下に扱うわけにはいかない、地獄の底まで持ちこみたい宝物に思えて、一つ一つを何とか生かす道はないかと思い悩んで積みかえ、重ね直し……して日がすぎます。世の中には「物をすてられない女」というのが悪女の一種のようですが、書類や手紙をめくりながら、目が止まり、手が止まり、思いがかけめぐって……関連する「紙」を捜して…日付が変わる。
 考えてみると、私のこれまでの中で、こうして準備なり整理をして「人生の次のステップに移行する」機会というのは、74年に「地下活動に耐えられるように身辺整理をして」以来のことです。いつも着の身着のままで、次へ、なかば強制移行してきたものだから、今度位、宝の山を大事にいとおしんで別れをおしんだっていいじゃあないかと……。
 古い手紙を読み直したり、資料をめくりながら、本当に大勢の仲間たちに出会い、いっぱいの思いと事々を共にし、はげまされ、おしえられ、支えられていたことを、けっしてこの9年間の獄中生活は、辺ぴな、限定された人生なんかじゃあなかったことをあらためて思っています。こんなにすばらしい仲間たちに出会うことができて本当に良かったです。ありがとう。
 そして、私は、どうこたえただろうかと……。
 面会室では、先輩方や、かつて先輩方を支えぬいた仲間たちから、あたたかい助言とはげましをいただいています。「なーに、この性格だから、何とかなるよ」「刑務所の方が拘置所よりもいろいろあっておもしろいから」「シャコのことを考えたら13年なんてすぐだよ」「この時代67才なんてまだまだ」etc.etc. そして、なによりたのしみなのは「行刑改革の明るい見通し」に内と外から歩みよるのだという決意です。そうなるとこの人は、例によって、ちょっと未知の外国へ一人旅に出かける時のようなかん違い気分におちいっていたりしています。まあ、行き当たりばったり出たとこ勝負人生、何とかなるでしょう。今問題は、目の前のこの宝の山との格闘と、書いておくべき事々……をどうするかです。静かな、じっくりとおちついた心がほしい。
 ところで『でもわたしには戦が待っている』は読んでもらえたでしょうか。周りの人々に勧めていただきましたでしょうか。まあ、いろいろとそうはできない事情はおありでしょうが、どうか一冊でも売れるようにご協力下さいませ。そうしてお読みいただいた暁には批判でも提灯持ちでも、何でも歓迎ですから、感想を聞かせていただけるとうれしいです。これまでいただいた感想の中の圧巻は、「……斎藤さんと浴田さんの青春グラフティという印象です」(労働運動活動家M氏60才位)というものでした。「ウーン」と数日頭をかかえて編集長に伝えるのをチューチョし、「ごましお」編集長に話したら、笑いながら「もっと神田川ライクな話をいっぱい書いてくれた方が良かった」ということでした。この次は必ず、そうする決意です。何はともあれ、どうか販売拡大にご協力下さいませ。
 さあ、時間がない、内憂外患はますます深まりつつあります。手の届く近方から、地球レベルまでのムチャクチャぶりは塀の奥深くでは、どうなるのでしょうか、あと10数日、次のステップにむけて、ちっと気をひきしめて、すごします。で、諸々のあとはよろしく!
 死刑執行阻止! 自衛隊派兵の定着・国連軍参加阻止!
 小泉人切り・米のパシリ外交政権を止めさせよう!
 みんな お元気で!                       ゆき子


YUKICO
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