支援連ニュース No.262

とっても暑い日が続きますが、お元気ですか。

2004/07/23 浴田由紀子

 次々にあれほどのデタラメで、戦争をする国への加速、弱者切りすて踏みつけ社会へ邁進の小泉政権は、今回の選挙でも「負けなかった」というのですね。いったいこの国と世界はどうなるのでしょう。
 私は、いよいよ懲役になります。むこう十三年を塀の中でこの国のこの急激な変化とも、世界の流動とも無縁に「明治」以来の「不変の監獄法」の世界で! もしかしたら「塀の中が一番「安泰」でゆとりがある」なんてことになったらどうしよう。申しわけなくて、いたたまれなくてシャバ支援がいったいどうできるのだろうか、と心配です。
 二九年、そして九年間の出会いと共闘、いっぱいの支援をありがとう! 長い長い闘いでしたが、大勢の人々に出合い支えられて、育ち合いながら共に闘い抜けたことは、何よりもいれしい。今、私の確信と誇りです。面会に来てくれた三〇年来の友人が「どうして、あなたこんなにいっぱいの友達ができたの!?」と不思議そうに聞いていましたが、本当に!? 同志、支援の仲間たち、家族会、弁護団、古くからの友人たち……、仲間が仲間をつないでくれて、実に多くの人々に出合い、共に闘うことができました。「地下非合法ゲリラだから」と、限られた仲間にしか本音は言えずに、「いいんだっけこれで?」と自問しながら「人恋し病」だと泣いていた日々のことが夢のようです。つながり合って在りのままに、共に生き闘うとは、何と確信を持って豊かに生きられることでしょうか。九五年に再逮捕されて、日本に強制送還された直後に、何人かの人に「パクられた人に言うのは何だけど、実は戻ってきてくれて良かった」という主旨のことを言われたことがあります。とまどいながらも「そうかあ」と再逮捕をなげいたり落ち込んだりする暇もなくやってきましたが、今、本当に、あの時逮捕されて申し訳なかった(ことにその後の旧JRAの同志たち連続逮捕を生み、解体に至った端緒になったetc)けど、同時にホンのちょっとは「難局を勝利の土台へ」ころんでもただでは起きない「宝」を今片手にして、やっぱ良かったこともあったよな、と思っています。
 九年間の裁判闘争は、実に熱心な弁護団と救援の仲間たちによる裁判準備(内容作り)、それを共同し、支えて下さったのが獄内外の多くの先輩被告とその支援の人々、まさにあの時代以来のみんなの反体制・反権力・反弾圧の闘いの闘いの経験と蓄積を総結集して、闘い抜けたと思っています。そうして私たちは、検事の「終生の無期求刑」を粉砕しました。「反テロ」と言ってしまえば何でもあり、旧JRA同志たちへの重刑の前例にしたいという検察の露骨な意図の前で、また、司法の独立と公平が日ごとになきものにされる傾向の中で、やっぱりこれは、偉大な勝利です。私は、またみんなといっしょにやりかけの仕事を続けられる、やりそこねた仕事をやり直せるチャンスを保障されたのですから。ありがとう!
 そして、この九年間の裁判は、非公開ではあっても死刑囚にされている二人の同志を証人に迎えて、私たちは数十時間にわたる同席をし、彼らの今を彼ら自身の生の声で公然と人々に伝え、SAIKAI公判を実現しました。みんなの想いの総結集をしてです。「闘い続けてさえいれば、必ずまた会える!」それは誰にとっても大きな確信でした。もうひとつ、出会いや再会、共闘の中で総括を進めることができ、「和君のこと」を人々に伝える本にすることができたのも、私にとっては三〇年来の大きな宿題を一つやり終えた、とってもうれしいできごとでした。弁護団や仲間たちには大変な闘いだったけど、やっぱり「やって良かったぜ!」と、感謝の気持ちでいっぱいです。
 みんなの力で勝ち取った「有期二〇年の懲役」に出世するために、この間下獄準備というのを進めています。Tさんの大活躍で仲間たちと最後の面会をし、激励の手紙に「当分これが最後になります」と返事を書きながら、あらためて、有期であるかぎり、二〇年であろうと三〇年であろうと、確実にまたみんなに会えて、社会の中でやり直せるやりかけの仕事を続けられるという確かな未来、人間として希望を持って自分の意志と力で人々と共に生きてゆけるあらゆる可能性がある、その一方に、それら全てをこの瞬間に生きながらに否定されて奪われる死刑や無期という人を人たらしめない刑の残酷さがあることを、胸が焼け焦がれる想いで実感しています。仲間たちが、同志たちが、今もその残酷にしばられていることを思うと、いたたまれない想いになります。こんな残酷が人間の社会に絶対にあってはならないと、彼らのもとへ飛んでいきたい衝動にかられます。くやしいです。
 戦争をする国、弱者を切りすて踏みつけることを良しとする国への加速の中で、死刑制度廃止も無期刑をなくすことも、今まで以上にむずかしい取り組みかもしれません。獄中からできることも、本当にありはしないのでしょうか。死刑制度廃止へ、無期刑の廃止へ、人がみなだれも、希望も可能性も持って、自分の人生を何とか取り戻せる社会へ、仲間たちと共にその思いをつなぎ続けます。みんなが勝ち取ってくれた大きな勝利を、しっかりと生かしぬくべく、せめて「見てみい、どんな奴だって生かしておきゃあ何かの役には立つもんだ」と。やり残した仕事、やりそこねた仕事をまた、みんなと共に担えるように学びながら自分を変えて、人間らしく、前向きにがんばります。同志たち、仲間たち、必ず生き抜いて下さい。みんなで生かしぬきますから、「生きていれば、闘い続ければ、必ず再会できる!」いっしょに実現した確信です。
これからの獄中十三年なんて、シャコの例から考えても、「どこに行って誰と、何をしているのか」さえも仲間たちに伝えることのできなかった十八年に比べれば、うんと気楽で身近で、共にいられるでしょう。獄中の仲間たちはきっと「人が人らしく〜」と言いつつ、観念的にしかわかってはいない私に、人が人らしく生きられるとは具体的にどういうことなのか、そのために何をしなければならないのかを知らしめてくれる、最良の先生になってくれるのではないかと予感しています。謙虚に貪欲に学び経験します。私は元気に何とかやれるでしょう。年齢と病気を心配して下さる方が多いですが、年齢はまあ制御不可能なところもありますが、体は丈夫で健康です。持病(腰とか遊走腎とかヒザとか関節とか……)はありますが、一時まがらなかったヒザを正座も十五分ならやれるところまで回復させたので自信もあります。ありがとう、心配いりません。
 最後に、このところのこの国や世界の変化、そして(たまたまですが)新左翼の人々のあの時代の総括を学習していて、あらためて、七〇年代、私たちが提起した問題、日帝本国人として歴史と現在とに一人一人が主体的にその責任を自覚し、自分を変えながら、二度と再び同じ誤りをくり返さない社会の実現を担っていくという立場は必要だし、今なお問われていることを確認できると思います。二度と再び戦争をしない国へ、同志を殺さない組織へ……、小泉が悪い、指導部がスターリン主義だと言い合っても何も解決しません。小泉を小泉たらしめている市民、指導部を「スターリン主義」のまま指導部たらしている構成員……一人一人の在りようが、総体として戦争をする国、弱者を切りすてる社会、スターリン主義指導部で同志を殺す組織を、成立せしめている。このひどい現実の実は自分も「作り手」なのだという自覚に立たないかぎり、それを否定するベクトルをもたないかぎり、反対、と批判だけでは、頭をすげかえて同じ誤りをくり返してしまうでしょう。
 「反日」という言葉は今マスコミや論壇で、少しちがったニュアンスで使われていますが、その社会を構成する一人一人の主体的な責任の自覚と、それに立った社会変革の実践の必要、ことにこの国の、他国、他民族、被抑圧民族との歴史的、現在的関係の変革に、今、あの時代以上に「反日」の日帝本国人革命主体の広範な闘いが問われているように思います。……やり残した仕事も、やりそこねた仕事も、勝つまでは負けつづけるにしても、共に、思いをつなぎ合って、自分たちを変え合って、歩を進めたいです。
 出合うことのできた、共に生き闘ってくれた全ての仲間たち、同志、家族、友人たちにありがとう! これからもよろしく。懲役になってもできるだけの報告をして、みんなとつながりつづけたいです。何といっても、また戻ってきて、いっしょに仕事をしたいから。みんなみんなこのムチャクチャな状態にへこたれないで、体も心も気をつけて、力を合わせよう。お元気でいて下さい。十三年後には再会です。その前に芳正くんを取り戻して、将司君と利明君の「死刑制度」をとりやめにして、再審も実現して……、いろんなことがありそうですが、ガンバロウ。共に!
ゆき子


YUKICO
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