支援連ニュース No.263

三〇年目の八月が来て

2004/08/20 浴田由紀子

 連日の猛暑の中、お元気ですか。
 イヤー、懲役になるというのも、簡単な事ではないようです。「立派な懲役」とか何とか言う前に私の場合、「懲役身分に転換する」という段階でこの二ヶ月近く、散々にみんなをあわてさせ、バタバタさせた上に、いまだにモタモタしています。今号ではすでに、いかに上手に袋が貼れるのか、優秀な懲役の兆が大であるのかを得々と報告する予定だったのに……。八月二〇日現在、いまだに下獄準備な日々しか報告できません。
 下獄準備、この数ヶ月間の仲間たちの大奮闘、ことに再会アレンジを引き受けてくださった友野さんのご苦労は大変なものでした。おかげで九年分の再会が一度に来たみたいに大勢の仲間たちに会えて、当分の別れを言うことができました。あつくて、忙しい中を、面会に来てくださった仲間たちと、友野さんに激励の手紙を下さったみんなに、心からありがとう!
 領置規制と闘った「成果の山」を引き受けて下さった宅下げ物受取人にも、これまでと変わったシステムと二転三転する情報にふりまわされて、バタバタと結局大無理をさせてしまいました。反省は、下獄準備に入る段階でまず、確定、下獄、移監……に伴って、どのような身分・処遇上の変化があるのかを、伝聞や経験や推測にだけたよるのでなく、職員に聞くなぞして科学的に把握すること、そしてそれにそって、準備計画を立て、外の人の協力をお願いして……進めるべきでした。のに、私ときたら、例によって、思いついたことから、聞きかじり、ウロオボエ情報にもとづいて……で、結局「有終の美」なんてのとはまったく無縁の「あとは野となれ山となれ」方式! こうして時間があればあるだけ「修正破壊主義」というわけです。
 面会アレンジの友野さんと、この酷暑の中を東拘へ動員される面会の仲間にはいっぱいのご苦労をかけながら、私は何もなくなった(八月は新聞さえもたのまなかった)房で、懲役の予行演習だな、やっとくべきことに時間がなかったという口実は効かなくなってまじいぜ……なぞと思いながら、ひたすら面会を楽しんでいます。
 今月中には何とかなるでしょう。本当に最後までおさわがせで申しわけありません。

 あれから三〇年目の八月が来て、ラジオニュースによると八月一五日に今年小泉は「不戦の誓いを遵守する」と言ったらしい。小泉の決断で軍服を着た自衛隊員を、侵略・占領戦争のまっただ中に送りこんでいるその同じ瞬間にだ。「不戦の誓い」とは何か?「平和の願い」とは何か? 少なくとも彼らにとってそれは、イラクやパレスチナやアフガニスタンや朝鮮人民共和国や……の人々にとっての平和や被軍事占領、抑圧のことではない。彼らには武器を向け、軍靴で踏みにじって……不戦や平和を小泉に誓われる者たちとは何者か。イラクやパレスチナやアフガンや……の人々と私との間の断絶と、小泉との間の断絶と……、まず私は前者をからうめるものでありたいと切実に思う。八月三〇日はそのような願いのあまりに稚拙な表現であった。他者を踏みにじり切りすてて……豊かさも平和もありえはしないのだと。
 三〇年を経て、二一世紀の知恵で、私たちは今、このまやかしの「平和」や「非戦」やを拒否しぬく術をどのように持ちえているのだろうか。まやかしでさえありえないことに、誰もが気づきつつ。日の丸の軍隊をイラクに置いたまま。三〇年目の八・三〇を今年私は囚人服を着てすごそう。
 むこう一三年を、次の年月を仲間たちと共にやりのこした仕事とやりそこねた仕事と、そしてこれから出合うのであろう新しい仕事をやるための準備の時にしようとはりきっています。ちょっと声は届きづらくなりますが、どうかこれからもいっぱいの思いを交し合い、元気と知恵とを分け合ってください。直接の再会までに支援連とその仲間たちは、芳正くんを迎え、将司君、利明君の再審を実現し執行を阻止しぬき、死刑制度廃止を闘いぬいて……と、この生きづらい時代の中でとってもたいへんですが、獄中にいても共に、はいっしょです。どうかみんなの力で実現しましょう。
 帰ってくることのできる仲間がいる! 大きな希望をみすえて、元気にしっかりと再会、そしてそれからの準備を開始します。ありがとう!
 みんなお元気でいて下さい&再見!
ゆき子


YUKICO
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