7月公判報告

【浴田由紀子】

 6月の2回の公判をブッ飛ばして、7月9日、約1カ月半ぶりに公判は再開されました。ヒイコラ言っていた病人も復活です。傍聴席の仲間達も、元気そうだ。ありがとう!
 法廷は家宅捜索関連証人の尋問を続けています。
5月19日朝、都内9カ所で行われた家宅捜索の令状は、全て5月17日に発行されました。令状は、「殺人・同未遂・建造物損壊・爆発物取締罰則違反被疑事件」に対して発行され、ワラ半紙3枚分もの「捜索の目的たる人、又は捜索差し押さえの目的たる物」という12項目にわたるリストが添付されています。
 そのリストは、「本件に関する〜」と始まりますが、この「『本件』とは?」という弁護人の尋問に証人達は、一様に「韓産研爆破事件」と答えます(5月19日、8人の逮捕状は全て、被疑事件韓産研≠ノなっていました)。しかし、このリスクはその中で、「ペール缶、アタッシュケース、湯タンポ、消火器、ミルク缶等々を捜せ」と言っています。韓産研爆破とどのような関連があったのか、証人達は、「令状を請求したのは私じゃないので、わかりません」というのですが……。
 この令状を許可した裁判官達に、はたして韓産研事件についてどういう認識があったのかなかったのか? 捜索差押令状とは、かくも安易に、捜査官にフリーハンドを与えるために発行されているものなのだということを、思い知らされています。
 9カ所の捜索令状のうち、被疑者斎藤和なるものについてのみリストの13項目が「マジソンスクエアガーデンバッグ」と記されています(それは何故なのか、どういう意味があるのか忘れないでいて下さい)。
 7月9日(第47回)の公判証人は、大道寺あや子、将司両同志のアパート(大友荘)の捜索・検分を行った大城戸留夫と荒井勝美。斎藤同志が働いていた調布の喫茶店「しの」を捜索した吉田公の3名。
 大友荘の捜索検分のためには、計5通の捜索・差押許可状と検証許可状が発行され、5月19日から6月22日の間に5回にわたってくり返された。
 しかも、5月19、20日の第1回捜索・差押によって900余点の物品がアパートから押収された後の、5月20日になって検証は行われた。検証調書には、彼らが初めてアパートに押し入ったときの様子がではなく、丸一日半、数人の男達がひっかきまわし、物を出し(入れ?)した後の様子が記されることになった。
 検証を担当した荒井証人にそのことを追求する。
 20日の検証時「押入に謄写版があった」と記されている。ところが、19日の捜索調書は全く同じ所に「タイプライターがあったので押収」したという報告がある。19日は謄写版はなかったのか、二つあったのに一つだけ書いたのか(何故?)。それとも後から、誰かがどこかから謄写版を持って来て置いたのか(何故?)。
証人荒井は、「ちょっともう忘れましたですね」と時間を盾にこのデタラメの解明を回避した(この手の矛盾は一つや二つではない)。法廷に残ったのは、「どこまでが事実なのか使用できんなあ」という印象だけだと思うのだが、裁判官達は、どのように聞いていたのだろうか?
 検分調書とは「犯行」現場の状況をありのままに伝えるものなのではなく、適当にいじくった結果、都合のいいことだけを書けばいいのか? 狭山事件の万年筆のことを思った。裁判官、調書という作文だけを信用しないで、法廷で起こっていることを、しっかりと目を開けて、聞いていて下さいね。
 19、20日以降の捜索令状は、「押収すべき物」をいくらか具体的に指摘している。例えば6月17日の「金属性食器洗」や「救急箱」。その一方でくり返し「書籍」「メモ」などを持ち出している。その理由を証人荒井は、「…とり調べか何かで関係あると出てきたのではないか」という。
 そうして、5月22日の段階で証人達は、「ドイツイデオロギー」「ドイツ農民戦争」を押収した。押収の根拠を聞いた弁護人に「押収すべき物≠フ九韓国・朝鮮、中国、東南アジア、アイヌ等に関する書籍・文献その他資料・ノート・メモ≠ノ該当します」と答える。弁護人「ドイツは韓国・アイヌ…に入らないのでは?」証人「等≠ノ入っております」!!! 弁護人「そうすると、どこの国でも含まれちゃう」証人「文献とか≠ニあるのに含まれます。現場で判断して、差し押さえて、分析して…」以降、押収品のほとんどの物は、「等」と「その他」に含まれることになる。フリーハンドはこのように与えられた。
 続く証人・喫茶店「しの」にのりこんだ証人吉田公の捜索令状には、「マジソンスクエアガーデンバッグ」を捜せとある。そもそもマジソンスクエアガーデンバッグとは何で、何故斎藤の分にだけあるのかわからないので弁護人は聞いた。「マジソンスクエアガーデンバッグと韓産研事件の関係は?」証人「私はわかりませんです」弁護人「斎藤関係にだけ出てくる。唐突に出てくるので、どういう事か聞かなかったのですか?」証人「(リストが)長く書いてあるので聞かなかったのです」(オイオイ、ちゃんとまじめにやってくれよな)弁護人「爆弾の運搬に使用されたというような嫌疑は?」証人「わかりません」弁護人「これを持って爆破事件の企業に入った人物がいるという話は?」証人「聞いておりません」しのでも「いちおう捜す努力」はしたのだが、出ては来なかった。
 しのにおいては、調理場から砂糖を、オーナー所有の倉庫からオーナーの薬品を押収した。捜索令状が「共同使用の場所」の捜索を許しているため、立ち入ることの出来る空間は全て押収し、他の人の所有が明確なものも捜収したというわけだ。証人「自由に入れるので、自由に持っていけると考えて」弁護人「調理場の砂糖も同じ判断?」「そうです」弁護人「客席にも砂糖はあったと思うがそちらは押収しなかった?」証人「同じ種類の物なので」
 彼らは喫茶店の営業時間帯も知らないままにのりこみ、店を閉めさせることもなく捜索を行った。
 弁護人「(斎藤に)逮捕状が出ていたわけですが、仮にしのに斎藤がいた場合、逮捕しないといけなかったのじゃあありませんか」証人「個々に指令出てますので、私は…」ほっといたろうって?

7月23日(第48回)

 初めの証人は、5月19日あや子同志逮捕を担当し、同志からカプセルを奪い取ったと報告した三上研二。
 あや子同志逮捕チームは、前回証人荒井勝美(前回私の質問にぬけぬけと、「まず将司の逮捕を指揮し、続いてあや子の逮捕を指揮し、その足で大友荘の捜索・押収を指揮しに行った」と証言した)を含む5名。
 弁護人「カプセルの中味、毒物らしい物品を発見≠ニ書いているが、そう判断した根拠はなんですか?」証人「前に青酸カリの粉末を見たことがあるので、多分これは青酸カリじゃないかという気がした」弁護人「毒物らしい物品がどういうことで本件≠フ証拠?」証人「薬品ですから」弁護人「本件は爆発関係で毒物ではない」証人「その薬品についてはっきりしておりませんので一応押さえました」
 彼らは、あや子同志が持っていた(会社関係の)薬品カタログや書籍も押収して「当時、関連性はその場で判断できませんので、とりあえず差し押さえました」
 続く証人茂木喜好は、「『腹腹時計No2』記載内容に関係ある薬品類・器具類等を大友荘からの押収品の中から断定する」という作業を行った。本人に言わせると東京理科大理学部化学科を卒業し、火薬類取扱免状を持っている「エキスパート」である。8・30直後から、ずっと各爆破事件捜査本部を歴任した。現役、今は警備課。
 検事の「結果、必要な物はそろっていたか」という問いに、「完全な形ではございません。足りない物もございましたので」と、ペラペラペラペラと器具の名前を挙げて、ついでに代用しうる物品の名前も言ってみせる。検事はミエミエに証言誘導する。「だいたいそろっていたという表現になるのか?」「そうです」ごくろう!
 ところが、いろいろな薬品があったというのだが、その成分テストは一切やっていない。ビンや容器にラベルがあった≠ニいうことだけで、その薬品の存在を特定している。証人「あくまで外状です。経験上知りうる物と同じかどうかで見当はつく」弁護人「例を挙げると」証人「硝酸はすり合わせガラスビンに入れます」(硝酸だけか? 他のものをすり合わせビンに入れてはイカン理由はないぞ!!←化学「不可」の浴田)
 弁護人「雷汞と記載のビンもあった?」証人「はい」弁護人「茶褐色ビンに保存するべきなのか?」証人「なるべく太陽の光をさけた方がよろしいので」弁護人「中味の雷汞テストはやってない?」証人「はいやってないです」弁護人「他の人によってなされたかどうか聞いているか」証人「当然やったと思うけど、今は記憶してない」弁護人「事前に雷汞を見たことは?」証人「ございます。免許持ってるくらいですから、見ればわかります」(免許持ってない理学士≠ヘ、自己の管理下にない薬品を見たら、まずその性状が表記のとおりであるか否か、化学的に確認せよ、と習ったぞ!)
 というわけで、いちいち腹の立つ攻防が続いています。これまでの証人と違って、証言内容がいちいち同志達の当時の動向と関わってくるので闘志も緊張も、イジメタイという「こまった心」も、倍加しています。
 家宅捜索関連ではさらに、佐々木、片岡(益永)、黒川、斎藤(浴田)の各アパート・自宅が予定されています。あと2開廷くらいでしょう。
 そのあと、検事は、証人として、大道寺将司同志達を出してくると思われます。初秋から、Saikai実現に向けてハイテンポな攻防が問われることになります。ケースワークと、それに見合った戦術対応を具体的に準備して、必ず再会する方法でがんばります。
 最後になりましたが、Saikaiリアライズ98署名運動へのご協力ありがとうございます。「署名用紙殺到」のニュースにとても力づけられています。
 みんなの思いを引き受けて、正面からの攻防に取りかかります。この裁判を憲法改悪の悪しき前例にすることは出来ません。引き続き、公平な、公開裁判実現のために、知恵と力を貸して下さい。
 秋、裁判は、第一審最初の大きな山場を迎えることになります。体を鍛えてはりきっています。Saikaiしましょう、共に!

<フロク>

 丸ちゃんのコーナーQ&Aに、助っ人(?デシャバリ)浴田が答える。
Q「日本赤軍の新しい方針をごくごく簡単に言うと?」
A 人民が自らの力によって、自らの主権を確立する「人民革命」を目指します。あらゆる領域での民主主義の徹底の中から、真の共生の社会を創り出します。
 そのために当面の闘いの方向として、護憲、反安保、反独占の闘いを進める中での人民の力の統一、民主主義の徹底・自治と共生を拡大していきます。
 その中で、日本赤軍のはたすべき役割とは? あくまで、人民の闘いを援助すること。統一戦線の形成と国際的な連携、共同を押し進め、そして、あらゆる領域での人民の力、人民権力の獲得に向けたシコシコの蓄積を、自分達自身の学習と、自己変革の中で担っていきます。
(ついでに)だから名称も、実体(役割と方向)に合わせて、変えてもええんや、その方が本当は親切なんやけど……。言ってることとやってること、ちゃうなあ、どうも……。


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