昭和五〇年合(わ)第一九一号、第二二三号、第二三九号、平成七年刑(わ)第六七七号
決     定

被告人    浴 田 由 紀 子

 右の者に対する爆発物取締罰則違反、殺人未遂、偽造有印私文書行使被告事件につい
て、当裁判所は、検察官及び弁護人から大道寺将司及び益永利明の証人尋問請求があっ
たので、弁護人及び被告人並びに検察官の意見を聴いて、次のとおり決定する。

主     文

大道寺将司及び益永利明を証人として採用する。
証人大道寺将司及び証人益永利明に対する各証人尋問は、東京拘置所において行う。
証人大道寺将司に対する尋問期日は、平成一〇年一二月二四日午後一時三〇分からとし
、同証人に対するその余の証人尋問期日については追って定める。
証人益永利明に対する証人尋問期口については 追って定める。

理     由

弁護人及び被告人の各意見は、要するに、本件が憲法八二条二項ただし書にいう「政
治犯罪」に当たるから、常に公開の法廷で審理しなければならないこと、監獄法の規定
によれば、死刑確定者の法的地位は未決拘禁者のそれと何ら変わりがないこと、本件の
事案のい性質に鑑みると、刑事訴訟法一五八条一項の必要性の判断は消極に働くことな
どを挙げ、大道寺将司及び益永利明に対する証人尋問については、両名を公判廷に召喚
して取り調べるべきであるというのである。
しかし、憲法八二条二項ただし書が期日外の証人尋問を一切許さない趣旨の規定でな
いことは明らかであり、刑事訴訟法一五八条一項に基づき、裁判所が必要と認めるとき
は、裁判所外において証人尋問を行うことは許されるものと解すべきである。そして、
本件においては、大道寺将司及び益永利明が死刑確定者であって、死刑の執行行為に必
然的に付随する前置手続である拘置を受け、厳重な拘禁と処遇上特別の配慮を必要とす
る特殊な立場に置かれていることに鑑みれば、両名を公判廷に召喚した上で証人尋問を
行うことは困難かつ不適当であると認められ、また、両名の証人としての重要性や事実
の重大性をも併せ考えると、両名が所在する東京拘置所において証人尋問を行うことが
適切であると考えられる。
 よって、主文のとおり決定する。
 平成一〇年一一月二四日


  東京地方裁判所刑事第五部
      裁判官  山室 恵
      裁判官  近藤宏子
      裁判官  矢野直邦


RINRIN HOME
inserted by FC2 system