ゆきちゃん公判のゆくえ

――川村弁護士に聞く

 3月27日、東京地方検察庁小泉検事から、浴田由紀子さん(ゆきち
 ゃん)の超法規的措置についての意見書が東京地裁に提出された。
 この意見書がゆきちゃんの裁判にどんな影響を与えるのか、どんな
 反撃ができるのか、今後の裁判等について川村弁護土にうかがった。

Q 超法規的措置に関しての検事の意見書の内容を解説してください。

川村 この意見書は、1997年に浴田さんが釈放されたときの事実経過と、そ
の釈放の法的性格について述べています。日本赤軍の要求によって釈放を閣
議で決定、本人の意思を確認して釈放、その身柄はアルジェリア政府の管理
下に入ったという経過を説明しています。そして、この釈放の法的性格は、
一時的に被告人の身柄の拘束を解いたにすぎないこと、このような事態に対
処する実定法規がないので緊急の行為として許容されることであり、国は再
び身柄を収監することができ、公訴権を放棄したのではない、という内容です。

Q 泉水博さんの釈放に対する見解と同じですか?

川村 そうですね。大筋においては、ほとんど同じです。

Q この意見書の内容をどのように受け止めればいいのでしようか?

川村 意見書の中の事実経過と、実定法上の手続きが規定されていない、つ
まりこのような事態の場合に何をどうするかという法律がないということに
ついては、争う余地はありません。ただし、釈放が一時的なものであるとい
うこと、公訴権の放棄ではないという検事の主張に関しては、疑義を申し立
てたいところです。

Q 争う余地が残されている、ということですか?

川村 そうです。当時の新聞報道などによりますと、日本赤軍の要求は一時
的な釈放を求めたものではなく、閣議の決定もその趣旨に添って行われてい
ます。被告人の意思確認でも、一時的な釈放だとは説明されていません。「二
度と日本に帰ってこられないのだぞ」と、出国を思いとどまらせるための説
得もあったようです。また、外務省は正規の旅券を発給していますし、釈放
後すぐにアルジェリア当局に身柄引渡請求も行っていないのです。のちに旅
券が無効にされ、ICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際手配されたのですが。

Q 一時的な釈放でなとすれば、どう有利なのですか?

川村 釈放が永久的なものだとすれば、公訴権が放棄されたと解釈すること
ができるのです。諸外国の事例もありますし、日本でも白鳥事件の被告が国
外に逃亡した事例で、帰国後に起訴されなかったこともあります。また、政
府は、釈放時に浴田さんには一時的な釈放だとは説明していないので、みず
から裁判所に出頭しなかったことの責任は問えません。

Q 超法規的措置による釈放が永久的なもので公訴権の放棄たとすれば、そ
もそもゆきちゃんはルーマニアから日本に強制的に連れてこられることもな
かったし、18年後に企業爆破の裁判が再開されることもないのですね?


川村 そうです。だから超法規的措置について決着がつかないうちに、企業
爆破の裁判を再開すること自体がおかしいのです。実際は、なしくずし的に
裁判を進行されてしまっているのですが。それから、18年も経ってからの裁
判では、証拠が散逸していたり、証人尋問を行うにも証人が亡くなっている
など、被告人には相当に不利なのです。ですから、時効に準じた措置をとる
べきだと主張していきます。

Q 検事の意見書が出たのだから、裁判では釈放の法的性絡について審理さ
れるのですか?

川村 すでに企業爆破の審理に入っているので、並行して争う形になります。

Q 5/13の公判では、ゆきちゃんはそのことを主張したのですね。

川村 裁判官の構成が変わったので、5/13の公判では更新手続きが行われ、
浴田さんは意見を陳述することができました。その中で、超法規的措置につ
いての検事の意見書に対して、異議を申し立てました。

Q 企業爆破の裁判では、共犯者であるとされている大道寺さん、益永さん
の証人尋問が行われるらしいのでずが、いつごろの予定ですか?


川村 98年の春以降になるでしょう。

Q 現在、企業爆破の裁判は、どの程度まで連行しているのですか?

川村 企業爆破の方は、三井物産の爆破に関しての検察側の証拠調べがほぼ
終わり、現在は大成建設の証拠調べが行われています。浴田さんと大道寺・
益永さんは、三井物産・間組・韓産所・オリエンタルメタルの爆破に関して
共犯だとされていますので、弁護側の証拠調べで二人の証言を間く予定です。

 裁判は山場にさしかかっているといえる。夏以降には、多くの爆弾
 事件で検察側の鑑定を行った荻原証人も登場の予定。ご注目を!


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