東京拘置所に対する要請書

 このかん、東京拘置所で頻発している、在監者に対するかずかずの人権侵害に対して、私たちは、重大な関心と危惧の念をもっております。
 その一つは、昨年一〇月に施行された法務省令に基づく領置品の総量規制です。東京拘置所ではひとり当たり四六リットル、みかん箱大の容器にして二箱半という基準数量が示されており、それを越える分について、廃棄、宅下げが強要されております。しかし、この量では季節に応じた衣類でさえ充分には保管できません。ましてや、この中に弁護人等から差し入れられる裁判の資料さえも納めようとするのはとうてい不可能なことです。そもそも、収容期間も事件の内容も経済力や家族・支援者の有無などもさまざまな被収容者の領置物を一律に定めること自体に問題があるといえましょう。省令によればこの一〇月からはさらに規制が強化されることになっております。また多くの在監者がその意に反して領置品の整理を強制されるのです。私たちは法務省に対してもこの省令の撤回を強く求めるものですが、東京拘置所においても、その運用において、可能な限りの配慮を行われることを要望します。
 第二には、領置品の規制と並んで進められている房内所持量の規制強化の問題です。それまで制限のなかった裁判関係書類の房内所持量が高さにして二メートルまで、その他の書類一メートルまでと決められ、また、訴訟書類として認められていた書籍が、一般書籍の扱いに変更されるなどしており、公判準備に多大なる支障をきたしております。そもそも公判のために身柄を拘束されているにすぎない被収容者に対し、施設管理の都合を優先させ、公判の妨害を行なうことは、本末転倒したものです。こうした制限を速やかに撤回されるよう要請します。
 第三に、現在進められている東京拘置所の改築、高層化に伴い閉塞性が強化されていくのではないかと、獄内外から危惧する声が寄せられています。現に使用されている仮舎房では窓が覆われ外がほとんど見えない構造となっております。また、国際基準をおよそ満たしていない短い運動時間さえも屋内で行なわれることになると、被収容者が自然に触れる機会は益々奪われていきます。長期にわたる被収容者が心身の健康を保てるようこうした構造、運用を見直すよう要請します。
 第四に、死刑の問題があります。東京拘置所は九三年の死刑執行の再開以降、国際的にも国内世論においても死刑制度への疑問の声が高まっている中で、毎年執行を繰り返しています。なぜ、今、あえて執行しなければならないのか? 死刑制度をただ存置させること自体を目的に執行が強行されるていることに私たちは強く抗議します。日々死刑囚と向かい合っている現場職員の皆さんにも疑問は高まっていることと思います。拘置所長は個々の死刑囚について執行をやめるよう上申する権限も持っております。死刑の執行を中止するよう要請します。
 また、死刑確定囚の処遇上の問題も多々あります。死刑確定囚は面会、文通等の外部交通が著しく制約されておりますが、家族に対しても認められていないケースがあります。また、民事訴訟の原告として、あるいは他の裁判の証人としてであっても公開の法廷には出廷させないことが続いています。こうした、死刑確定囚と外部の社会との接点を一切断ち切ることを旨とした処遇に対しても強く抗議するものです。
 東京拘置所での在監者の処遇については、獄中医療の問題など他にも多々問題がありますが、このかん急速に進められてきているこれらの処遇改悪の実態を憂慮し、以上の諸点の速やかな改善を要請するものです。

一九九八年九月二六日
東京拘置所抗議行動参加者一同
連絡先:東京都港区新橋二-八-一六 石田ビル 救援連絡センター
東京拘置所所長殿


RYOUCHI
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