意見書

 東京拘置所における公判準備及び防御権侵害についての訴え

                  東拘在監 浴田由紀子

 現在私は、本法廷へのすみやかな出廷と、公判に向けた準備を
全うするために東京拘置所に拘留されていますが、この間東京拘
置所当局による公判準備資料・書面に対する規制強化によってい
ちじるしく、公判準備・防禦権の行使を妨害されていますので今
の状態のままでは、本法廷への出廷・公判において反対立証等の
防禦権を行使する事ははなはだ困難になります。
 裁判所当局から、しかるべく被告人の公判準備・防禦権の行使
を保護すべく東拘への調査・勧告を行われるよう要請します。

〈妨害の具体的事実〉
(一)元来、東京拘置所は、房内における訴訟・学習のための図書
資料の所持を制限してきました。
 本年三月までは、公判に直接関連する図書・資料については
「申し出」によって「公判資料」として所持することを認められ
て来ましたが、今年三月頃(女区長の交替の前后)から、とつぜ
んに「図書についての“公判資料”扱いは認めない。」と言い、
公判準備学習に欠くことの出来ない、司法関連図書、及び自らの
政治思想的立場の立証に必要な資料、いわゆる「共犯」者の公判
報告書の類、「事件」関連図書等々も「公判資料」として認めら
れなくなりました。その理由については説明されていません。
 これは、旧来認められていた公判における防禦権行使のための
資料の活用、拘置所における公判準備の権利が、何の法的な根拠
―示されないままに制限・侵害されていることに他なりません。
(二)さらに東拘当局は、さる九月一日所内放送で「領置物の量を
法務省通達にもとづいて十月一日から制限する」由の放送を行っ
たようですが(私自身はラジオをつけていなかったので良く聞い
ていない)その周知てっていもなされていない9月22日午后女区
長の命を受けた女区主任が房にやって来て、いきなり「今から房
内にある全てのパンフ類をいったん房外に持ち出す。今日中には
返せない」と言ってその作業を開始しました。私は、本日の公判
をひかえ、準備に追われている状態であり、前記したように「公
判準備に必要な物」もパンフや一般図書の扱いになっているもの
がほとんどですから、今、持ち出してもらっては、本日の公判出
廷準備を進めることは不可能になります。その由つげて、“一部
当面使わないことが明らかなもの”について提出しましたが、そ
れ自体その后の作業の中で「不足」をきたすものでした。
 その后、同人は、女区長の言葉として(「告知をたのまれたわ
けではないが」と前提しつつ)「24日にあなたが出廷している間
に房内に入ってすべての資料をいったん持ち出して、少しずつ返
す」と言って来ました。今日、この法廷から東拘に帰ったら私は
自分が必要とする公判資料の全てを奪われているのです。「一日
で帰すことは出来ない」と言われていますので、私が今后、必要
最低限の公判資料を手に出来るのがいつであるのか不明のままで
す。すでに本公判は長期にわたる公判予定が決まっていますが、
はたしてそれらの期日に、これまでのように準備して出廷しうる
のかどうかきわめて不安です。資料を奪われた期間の分の期日延
期を要請せざるをえなくなるやもしれません。
(三)さらにそのさい、同人は「房内に所持を許可するものは10cm
を10ヶのみ(計1m分)だから、今后はそのように規制します。訴訟
資料といえどもいっぱいある人には規制をかける」と通告されま
した。すでに私は、公判調書等類でも1m近いかさの書類をもって
います。(し、私が房内に所持している図書パンフの80%位は本
公判に直接必要なために収集されたものです。)さらに今后公判
の進行と共に数倍になることは明確です。このような理不尽な規
制によって、大部な資料を必要とする被告人は、その防禦権を侵
害されるようなことがあっていいのでしょうか。今后本公判を進
めていくことにかぎりない不安を覚えます。これまでのように準
備を進めて本公判に臨み、公平な裁判を受けることは不可能にな
ります。
 本裁判を円滑に、被告人の防禦権を保証しつつ進められるよう
裁判所は東拘に対し、被告人の公判準備・防禦権行使妨害を即座
に中止するよう通告されること、及びその実情を調査されこれ以
上の妨害がなされる場合、被告人に対し、しかるべき「公平な裁
判を受ける機会」の補償をなされるよう要請します。

一九九七年九月二十四日
 東京地方裁判所 刑事第五部御中

付記 さらに、これまでの「公判内容を記録したノート」の房内での
   使用を許されていないことによって公判を流れの中でとらえ
   準備することは不可能にされています。


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