第二六回公判出廷記

九七・五・一三  浴田由紀子

 一月半ぶりの出廷、加えて裁判官更新に伴う意見陳述をするというので、少しばかり緊張して出発した。久しぶりに合えた仲間達は、みんな元気そうだったけど、ちょっとむづかしい顔の人もいる(?)。みんなに会うととにかく安心。
 法廷は、左右の陪席判事と検事が変わっている。前任検事・小泉君は、丸写しの「意見書」を最後っ屁のように放り出して何処かへ行ってしまったのだ。残念!今日は小泉意見書をコテンパンに批判するつもりで来たのに…違う顔が相手じゃあ、もひとつ力が入らない。加えて、検事席には三人も並んでいる。(研修士?)「ナンダ・ナンダ戦力強化か?」と一瞬あわてて…用意してきた「意見陳述」を読み上げる。−中身は略−(前日に至るまで内容の調整等々準備が良くできていなくって、傍聴の仲間達には聞きづらく、解かりづらかったと思います。申し訳ありませんでした)。三分の二が終ったところで、「時間切れ」(あとは略です)。続いて弁護人の意見陳述。
「超法規に関わって迅速な裁判を受ける権利を犯されている。公訴時効の成立するケースである等々なので、公訴棄却せよ!」
そうだ!と思う間もなく、裁判長。
「では、次の証人を。…」
と、法廷は何も無かったかのように前回に続いて大成建設の証人調べを再開。
 ウ〜ン裁判というのは、公開という事は、互いに法廷で頭を使って考えを進めて…やり合うのではなく、お家でやってきた宿題を見せっこする「発表会」みたいなものなのだなあ…などと思い巡らせていると…次々進むぞ!
 一人目の証人、芹沢氏は当時、大倉別館ビル六・七階と屋上の検分を担当。社員が普通に仕事をしている事務所を廻って、ガラスの割れ具合を検分。爆心地から遠いはずの七階のガラスが六階よりもいっぱい割れている。その原因について…ガラスの質が違ったのか、形や大きさが違ったのか、ガラスは爆風で割れたのか、物が当たったせいなのか…の一切について、
「なぜ割れたのか原因の究明までやっておりません」
「アン?!」
『爆発後の検分なので…爆発で割れたに違いない…』と「始めに結論あります!」という検分をやりましたと言うようなものだ。
 続く証人宮野氏は、三井に続いて二回目の証人出廷。余裕のある態度で…小なくともあと三回位はつき合ってもらう事になる科研の爆薬鑑定人。今回も爆薬の残渣を調べたけど、何と何がどれだけの割合で交ぜられていたのかは解かっていない。爆発物の種類は不明。
「爆発の威力は、その混合化車と混合の度合いによって決まる」と言いつつ、それが解かっていないと言うのだから…「どうすんだろう」と心配になる。彼らのレポートは「考察」の部分が十分でない。(私が研究助手やっていた頃は、こういうレポート出されてくると「可」と「不可」の間だな。何せ、目的が明確でなく、役に立つ考察が何らなされていないのだから。違うだろうか?)さて、三井も大成も使われていた爆発物は、一体何だったのでしようか?ナゾです。
 証人調べと同意調書の確認が柊ったあと?懸案の入国力ードの筆跡鑑定のために、入国カードコピーに私が名前(YAMAMURA)と番号を書き込む作業。よし!これで二カ月もすればパスポート起訴は粉砕です。
 次回は、三井証人一名と大成の検分者一名で三時三十分まで。
 傍聴の仲間達、忙しい中をありがとう!会えなかった仲間達も元気だよね。一つ一つ確実につめてゆきますからね。
 共に!再見!
★この場をかりて報告します
 ありがとう!
 五月七日付で、これまで「彼上陸上だった息子、Tの日本国籍が認められました。走りまわって下さった方々、皆様に心からの「ありがとう。とれましたよ」を伝えます。
 Tの方は、国籍取得以前にしっかりと「今どきの日本の少年。トップモードの部」を実践していて、周りの人々をあわてさせ、苦慮させてもいます。
 他国で育った経験を活かして、この国をより広い視野でとらえられる人になってほしいと思っています。引き続きご協力とご支援をお願いします。皆様と共に在る事を、子も母達も、大切に前進してゆきます。
ゆき子


 第二六回公判傍聴記

九七・五・一三 平山まゆみ

 浴田さんと出会ったころは、福岡でも彼女の裁判を応援できないものかと考えて、はりきってビラ(『浴田由紀子さんの裁判を応援する会・福岡』と言うのを勝手にでっちあげた)をあちこちにまいたりしたのですが、“日本赤軍アレルギー”の声の数々に少しめげてしまったもので、今は『ゆきゆきて』(彼女の手紙を中心にまとめた簡単なもの)を作って、Tシャツ裁判のニュース発行の際に同封させてもらったりしながら、彼女のことを伝える作業をしています。
 一度、彼女の裁判がどんな感じで行なわれているのか見てみたいと思っていました。超法規に関する意見陳述もするということも聞いたので、五月一三日の公判に出かけてみました。
 裁判官交替に伴う意見陳述では、浴田さんは、時間の関係もあってか全部を読み上げず、超法規の正式な手続きにより釈放されながら一八年ぶりに法廷に引っ張り出されているのは公訴権の乱用であるということと、爆発物取締罰則は、憲法違反の法律であり、治安弾圧の道具として使われた歴史があるということを中心に四○分ほど陳述。昔の資料もたくさん引用してあって、たくさん勉強したんだろうなあという感じ。続いて、弁護人が「超法規による釈放は、一時的な釈放の意味ではなく永久的なものであるとみるべき…。一八年を経て公訴権を行使しようとしているのは、被告の迅速な裁判を受ける権利を奪っている」と陳述し、検察側の意見書に反論。
 そうだよな、七七年に日本政府の決定によ
って浴田さんは永久的に釈放されているんだから、この場に引っ張り出される謂れはないんだよなと確認していたら、大成建設爆破の時に実況検分調書を作成した警察官と、火薬について鑑定書を作成した人が証人として出てきました。(う〜ん、さっきまでのやりとりは何だったのか)検察側の主尋問は、実況検分調書や鑑定書の信用性を印象づけるだけのあっさりしたもの。弁護側は、書面の整合性の不備を突く質問をしていました。そのあと、筆跡鑑定の資料作成のために、浴田さんが三つの単語を一○枚の紙に書くという作業を行ない、あと次回以降の証人採用の採否がありました。一六時二五分終了でしたが、盛りだくさんの公判でした。
 傍聴して感じたことは、検察側は証人をたくさん引っ張ってきて、浴田さんを重刑にするための証拠を着々と積み重ねていくんだろうなとなんだかくやしい気がしました。不覚にも(?)逮捕されてしまった浴田さんは、自分が苦手なことでも裁判闘争と向き合い、その中でいろんな展開をしていくしかないということ(意見陳述の時は、少し緊張気味でまじめな表情だったのに、自分のが終ると安心したのか、メモを取りつつも傍聴席を何度も見て、目が合った人にニ−ッと笑いかけているのがおかしかった)。具体的に、福岡で彼女の裁判支援の力になれることは少ないですが、根っこのところで何かつながれる表現活動をしていきたいと思ったしだいでした。スケジュール通信を送っていただいているおかげで、傍聴に行けずとも、裁判の中身が伝わって助かっています。
【PS・翌、一四日浴田さんと面会した後、吉村和江さんの公判(更新意見陳述と被告人質問があった)を覗いたら、検事は浴田さんと同じ人でした】


第二七回公判出廷記

九七・五・二三  浴田由紀子

 前回の公判で、弁護人も私も、口をすっぱくして「超法規があるから、七五年起訴分は公訴棄却されるべき」と言っているのに、てんで何もなかったかのように今日も法廷は、大成と三井の証人調べを進める。
 解からないのは、三井の証人、青木の登場である。前回の公判から新しく着任した検事、加藤昭が突然に証人申請したのだが。当時警視庁鑑識であった青木の役割は、三井物産館三階で実況検分が行なわれたあとの残渣をかき集め、ビニール袋に入れて持ち帰ったものを再分類したというものであった。
 三井物産館については、既に我々は一応の検事立証を終え、証人として出廷しえない幾つかの調書については「同意」もしている。なぜ・今頃・突然に?
 さて、その疑問に満ちた証人青木氏は、長い間警視庁鑑識で働いていたというのだが、どうも目つきが「物事をありのままに見る」というのとは違うみたいだ。加えて、検事・弁護人の質問に比較的細かい事までよく覚えていたりする。可能か?
弁護人
「“粘土・ゴム様のもの”とは何ですか?」
証人
「ゴム粘土かな、今記憶にないですよ。インスタントセメントのような物、今売ってますよねえ。…ウ〜ン記憶にありませんので撤回します。」
 ウ〜ン、ますます怪しい。
 もう一人の証人、鈴木氏は、大成の一階二階を検分したグループの補助者の一人。この証人もまた、何故来たのか不明。これまでの公判では調書作成者が出てこられない場合には、その人の出廷できない理由を死亡証明書を持ち出してまで説明するか他の人を連れてきた。何故、いきなり補助者なのだ?
「私の場合、山口警部補の全般的補助と言う立場を取っておりましたので…」
と、ただの下っ端ではなかったというのだが、やっぱり本人ではないことに変わりはない。
出世のためにマヤクをばらまいたり、人をはめたりするような人々が…。一枚岩のような意志一致をして事に当たつているとは思えない。何故当人は来ないのか?
 この検事の尋問の仕方を見ていると、取り調べ室でデッチ上げ調書を作るのと同じ方法で公判記録を作らせようとしているのがよく解かる。検事が質問する。証人が答える。ちよっとニュアンスを変えて検事がリピートする。例えば
検事:「証人は図面作成を担当していなかった。その理由は何ですか」
証人:「ウーン、私の立場として山口警部補の全般的補助者という立場を取っておりましたので、図面作成はしていなかったという事であります」
検事:「証人は、山口警部補の全般的な補助者という立場にあったために、証人自身は図面作成には関与しておらなかったと。その指示を出しておったというようなことですね」
証人:「はあ、ただあの、巻尺などをもって計測するような仕事は一緒にやりました」
(証人は言い過ぎに対して正直に反応しとる)
しかしこれは、完全に自供調書デッチ上げの手口だ!理由の不明な証人の選出といい、尋問の手口といい、客観的に事実を積み重ねて…というのではなく、都合のいい証人だけに、都合のいいストーリーを喋らせて…という手口なのかしら?要注意!ですぞ。これまで我々は、比較的正攻法でやって来たけれど、相手がミエミエのタクテック使うなら、私らも考えんといかんなあ。
 というわけで、油断のならない攻防が続きます。次回は、大成の実況検分者と補助者他。
 傍聴の仲間達、忙しい中をありがとう。会えると安心する。状況はもうひとつだけど、
力を合わせて斗い進めよう。共に!再見!


 第二七回公判傍聴記

九七・五・二七 小村哲哉

 現在、半分社会に復帰しつつある私は、まだまだ暇な身分なので、再びノコノコと浴田さんの公判を傍聴しに東京地裁に出かけたのであった。公判前、法廷の前でK弁護士に会い、挨拶をすると「アンタも暇だねえ」の一言。余計なお世話じや。また、当日の午前アサハラさんの公判があったせいか、傍聴人の入りは上々。ビラなど全然持っていかなかったことが梅やまれる。
 さて今回の公判も、「三井」と「大成」の証拠調べ。「三井」の証拠品を採取した青木キイ?と「大成」の実況検分をした鈴木ハルオの二名が証人として出廷。
 青木は当時、警視庁の鑑識課に勤める警部補。爆弾事件の捜査は初めてだったとのこと。「三井」捜査時の役割は、第三広間なるところの別の班が採取した、残り物の採取だった。そのためか話も盛り上がらない。弁護側の質問にも「思い出せません」「わかりません」を連発。
 証人が退廷後、弁護側から検察側に「今の証人のブツ(証拠物)は本件にどういう関係があるのですか」と質問され、検察も苦笑いしたうえで「後日、文書で回答します」と答えていた。だったら、ご高齢の方にワザワザご足労願わなくてもいいじゃないか。向かって左の若い裁判官は、歯が痛いのかしきりにハンカチで左頬を押さえているし、浴田さんの左に座っている係員は、しきりに帽子を取っては、これもハンカチで頭を拭いている。そんなに暑けりゃ帽子くらい取ればいいのに。無理しているとハゲるぞ!と余計な心配をしてしまう。
 次は、当時麹町署の公安係で巡査部長だった鈴木。大成建設本社の一、二階の実況検分を補助者として担当した人物。こちらも、審理を揺り動かすような話は、さすがに出てこない。
 面白かったのは、捜査担当エリアは当然立人禁止にしていたが、大成の社員はそこにいて、なんと普通に仕事をしていたというのだ。捜査に立合った社員にも別段、動揺の色はなかったという。またつまらないところに感心してしまったが、私には逆立ちもできない芸当である。日本のサラリーマンはかくありたいものである?!
閉廷後、K弁護士曰く
「うーん、また証拠調べか!」。
そう言わずに頑張ってください。支援の皆さまもお忙しいのはわかっておりますが、この裁判も、これから内容コクなってきます!!
法務省のイヤガラセなど無視して斗っていきましょう。


投書

前号の『三色ウサギ』に一言

 まず、確かに兎は寂しくては生きられないだろう。だからこそ一羽でなく、仲間たちと寄り集まって生活している。そうだ、単独行動では持ち堪えられないのだ。
 あなたは『僕ら』もウサギだと言うなら、それは一体
どんな人たちをさしているのだろうか。少なくとも私の友人たちやその仲間たちには、君の言う『ウサギ』のように、ただ寂しいからシュプレヒコールを上げるような人はいない。みんなは、生活する人々が、寂しくなるような世の中を許さない…。理不尽な社会をなんとか変えていこうと、みんなで日々、奮戦苦闘している。決して無駄なことではない。(三色ウサギさん、もっと自分をさらけ出してください。世界は広いです。“人間の可能性”を諦めないでください…)
東京都(W)

『ゆきQ』の皆さまへのお礼

 『ゆきQ』の皆様、ゆきちゃんの息子Tが本日、国籍取得したとの知らせをKセンセイの電報で受けました。きっとこの瞬間、一階で浴田が、病舎で丸岡が同じ電文を読み、朗報に喜んでいる事でしよう。そして、おじいちゃんも、おぱあちゃんも。
 Tは、いつもの愛想なしの「オウ…」とか言っているのだろうか?やっぱり、本人が一番嬉しいのだろうね。十六歳の誕生目の前に、やっと取れた国籍、これまでで最高のプレゼント!それもこれも、皆様方のたゆまぬ支援のおかげ意外の何物でもありません。ここに改めてお礼を述べさせて下さい。私も、二一世紀には自由の身になれると思いますので、その節は混ぜて下さい。パワー溢れるゆきちゃんの応援、これからもよろしくお願いいたします。
一九九七年五月七日 吉村和江

レバノン救援・基調報告会

●レバノン当局に拘留され、この6月9日に
裁判が開始される日本赤軍メンバー5名を取
り巻く現地の状況
現地弁護団・救援組織の活動報告
レバノン司法当局の対応と裁判の行方
VTRインタビュー報告15名のようす等々…
そして
真の民主主義革命を目指す日本赤軍今後の路線は…

日時:6月28日 6時半開場
会場:未定
主催:帰国者の裁判を考える会
問合せ:救援連絡センター TEL03-3591-1301

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