YUHIQ SCHEDULE MAIL No28

第三十一回公判出廷記

浴田由紀子

 夏休みの宿題は未了のままに、久しぶりの集団面会にわくわくしながら出かける。
東ア・反日検事側立証の後半戦に入ったというところだろうか。大成の証人調べ(肝腎の電話受け人=誰がいつ避難解除を出したのか明らかにしなければならない)を未了のまま、今回から間組証人調べに入った。「キソダニ・テメンゴール作戦」と呼んだ間組爆破闘争は、七五・二・二八、三つのグループによる初めての同時作戦として決行された。爆弾は、青山にある間組本社ビル九階と六階、埼玉県与野市の間組機械工場配電盤わきの三ヶ所で同時に爆破した。間組は、木曾谷における中国人強制連行・虐殺の「張本人」であり、当時マラヤにおいてテメンゴールダム建設に反対する現地住民の攻撃を受けていた。
 今日の証人は、九階及び同ビル地下と三・四階の実況見分者 三名。始めに、三井でも実況見分証人として登場した黒木節次氏。彼らは三階と四階を検分。調書では天井板や床が水に濡れ?その水のせいで天井板がはがれているということ以外に被害ヶ所は見当たらなかった。しかし彼らは、水に濡れたら剥がれてしまう天井板の材質も、水が何処から来たのかも「わからない」ままに検分を終了した。彼らの検分した三階の事務所黒板には、一月末「次は二八日間組爆破予定」と書いてあったそうだ。が、その捜査結果は「聞いてない」。
 続く証人大嶋勲氏。当時は麹町書の警備公安をやっていた。地下二階と駐車場の検分にかり出された。検事のかなりオザナリな尋問にはよく答えるくせに弁護人の質問になると、とたんに「記憶にない」「はっきりしない」「わかりません」ことだらけになる。
(弁)「(現場で)爆発地点が何処であるかは聞きましたか」
「聞いてないです」
「検分の後も」
「はい。私たち麹町署で、赤坂署が現場(担当?)ですから」
(傍聴席から笑い)と言うような明らかな嘘も平気でいう。
 駐車場でいくつかの金属片等を押収しているが、押収にあたって立ち会い人や、駐車場管理者に確認した様子がないので弁護人は聞いた。
「田村さん(立会人)に聞きましたか?」
「聞いたと思うけど記憶にない」
「実際に発見したのは誰なの」
「記憶にない」
「あんたね。公安だから。記憶にないとよく言ってるけど。思い出せませんか?」ちょっとひるんで…「もう二十年以上も前ですから」と開き直る。
三人目の証人村田尚久氏が出てきたとき検事は念を押した。「(以前統一公判で証人に出てきたときと今回と)記憶の濃淡に差はありますか?」(この検事はミエミエの直反応らしくて、私なんかには『理解』しやすい。)
証人「重要な部分についてはありません。特別な大きな事件で、念を入れてやりましたのではっきり覚えている事はもちろん。当時と変わりないほど覚えていることもあります」と、言ってくれた。直前の証人、元公安とはえらい違いや。そのこころいきやヨシ!なのだが…。
 彼は当時、赤坂の警備捜査官だったので「これはすべて自分が」ということで最も被害の大きかった九階の検分指揮を引き受けた。九階の検分は赤坂署だけでなく、警視庁公安・鑑識等四十〜五十名の捜査官を動員して十一日間を要した。主な被害は火災によるもののようであるが、なぜ、どこから火が出たのか、残念ながら彼らは火元の確認を行っていない(なぜ?)。窓ガラスの破砕についても、その直接の原因が過熱によるものなのか、爆風圧によるものなのか、明らかにしないまま、検分中の三月二日には工事人を入れてハメ替え工事をやらせている。彼は調書に「(ガラスは)爆風圧による破砕」と記載する。
(弁)「あなたが爆心地と推定するところから相当離れたところのガラスも爆風圧で?」「どうして爆風圧によるとわかるの?」
証人「いや思っただけです…」???
思っただけで爆弾のせいにされちゃあ、たまんない?!これじゃあ検分をしたということにならないのちゃうだろうか。いつものことながら、人は自己の経験と偏見の幅を超えては世界を把握・認識することは出来ないのか?どの検分調書も冒頭に「実況見分の目的・犯行現場の模様・犯行の手段方法を明らかにし、証拠保全するため」と書いてある。どうもそれは「客観的な事実を―」ではなく、彼らの予断と偏見をうらづけるため以上ではないらしい。火はなぜ、どこから来たのだ。ガラスはなぜ割れたのだ。君達が明らかにしないで誰にわかるのだ?!
「念を入れて」何をおやりになったのです?!噂の「筆跡鑑定書」は証拠採用されることになった。「九四年九月口日とかにスタモなんとかから入国した云々」という「犯罪の事実」はこれで否定されることになるのでしょう。さあ、どうする?他に「犯罪の事実」があるわけじゃないのだが…。
 次回は九月二十四日、午前中に吉村同志、午後から私です(検事も同じ奴)。ガンバラナクッチャー
 秋です。仲間達みんな夏バテをさっさと回復して、季節を楽しんでください。この秋はシビアな闘争の季節になりそうです。お元気で!支援をありがとう!再見!       ゆき子


第三十一回公判 傍聴記

美濃輪もとすみ

 午後一時に傍聴券交付所に行ったら、だ〜れもいない。もう終わってしまったのかと心配したら、一番だったのだ。この日は間組爆破の実況見分を行った警察官三名が証言。
 東アジア反日武装戦線の狼、さそり、そして浴田由紀子さんが所属する大地の牙の三部隊は一九七五年二月二十八日夜、東京の青山にある間組本社ビルの九階、六階、そして埼玉県与野市の大宮工場の三ヶ所を同時爆破した。「キソダニ・テメンゴール作戦」だった。
傍聴人は十名。ゆきちゃんが、いつものように知った顔に微笑みかける。まず証人・黒木某は当時、中央警察署の捜査係長で間組本社ビル三階、四階の事務所などの実況見分を行った。加藤検事の質問には、よく覚えていてスラスラ答えるが、質問が弁護人にかわると、警戒する感じとなり、声も小さくボソボソ…と聞き取りにくなる。天井の落下の原因(爆風か消防の水か)についての質問になると「記憶にない」・「わからない」の連続で、ひたすら逃げに走った。
 つづく大嶋某は麹町署の公安係長で、担当は地下一階、二階などの実況見分。この人も検事には答えるが、弁護人にかわると記憶が失われてしまった。何を聞いても、ほぼ「はっきりしない」「わからない」「覚えていない」の連発が続いた。もう二十二年前のことだから記憶にないのは当然としても、検察側に都合の良いことは覚えている不思議さがめだった。
 そして三人目の村田某は、実況見分のリーダーだ。赤坂署警備課調査官で、一番被害の大きかった九階などの実況見分を行っている。例によって、検事には「もちろん、そのとおりで、まちがいありません」などと記憶の確かさを強調する。しかし、さすがに弁護人の質問にも答えようと努力はしていた。だが、爆心地の特定(推定)の根拠については曖昧なままであった。「床面にロウト孔がないので、爆弾が置かれたのは床の上ではない。ロッカーや棚の飛散ぐあいから」との証言。
 ところで、この九階の現場とは、パンチ・テレックス室、作業室、計算課事務室、計算機室と並ぶいわば間組の頭脳とも言えるところだ。それが実況見分調書によると「原形がなく各室の区別がつかない」になってしまったという。思わぬ負傷者が出たことを除けば、当時の東アジア反日武装戦線としては「大成功」だったのだろう。この九階の爆弾は狼が仕掛けたものだ。
 争点は、この爆弾で「共謀共同正犯」として浴田さんも起訴されていることである。たしかにキソダニ・テメンゴール作戦は、共謀して共同でなされたものだが、法的に問われているのはそれぞれの「爆破事件」について、具体的に浴田さんがどのように関与したかである。
 もうひとつ、六階のさそりの爆破事件。これは「六階爆破」といわれているが、爆心地と被害状況からみれば、営業本部事務室爆破といえる。もともとは同じ階にある海外工事局を爆破するはずだった。マラヤのテメンゴールダムに反対する立場からは当然の選択といえよう。それが、なぜ?そして、そのことに浴田さんが関与していたのだろうか。
 一見つまらなそうな公判だけど、背景や意味を考えながら傍聴していると、たしかに現在進行形のバトルも見えてくる。


第三十二回公判 出廷記

浴田由紀子

 今日の公判は午前中に吉村さんの公判があるから…二つの公判は検事が同一人物ということもあって、それなりに期待もし、根性も入れて、準備していた。
 ところが、二十二日、東拘当局は「あなたが公判に行っている間に、房内にあるパンフ類をいったん全部持ち出す、いつ返すかわからない」とか「今後は控訴資料といえども量の多い人は規制します」と言って実力行使をしたからたまらない。そんなことをされては、今後の公判準備が円滑に進められなくなる。はなはだしく防御権を侵害されることになって、今まで通り公判期日に準備して出廷することも不可能になる。というわけで公判冒頭に一連の東拘による、公判準備・防御権の侵害について、意見陳述を行うことにした。「裁判長は被告人に対して、“公正な裁判を受ける機会”をしっかり保障すべきである」といったことを意見陳述の中で述べた。続いて川村弁護人からも、公判において証拠資料として提出された訴訟資料さえもスミヌリにしている東拘の控訴妨害について報告・糾弾が行われた。
 今日の証人はハザマビル内外の実況見分を行った二人の警察官。二人とも大成の時も証人出廷していてすでに顔見知り。
 初めに小倉正昭氏、現警視庁刑事部警備捜査指導担当。彼はハザマビル八〜十階とビル前の歩道を担当した。検事の質問に「そうです」「私です」「まちがいありません」…と、うちあわせ通りの明確な回答をしていたのだが、弁護人の質問が始まると途端に答えの末尾に「〜と思います」と言う一語がつくようになる。例えば弁護人が「カメラとか図面とか補助者の分担は誰が決めたのですか」の質問に。
「私だと思います」
「出発時には、どこの検分をやるかわかってなかったの?」
「そうだと思います」etc.etc.
そしてこの証人は、爆発・出火のあった九階をはさんだ八階・十階の検分を担当しているにもかかわらず。
(弁)「爆発場所は検分当時知っていましたか」
「知っておりません」
「六階、九階ですが思い出せないですか」
「記憶にありません」
と言い張る。一方で彼は事件発生を知ったのは「検分当日に報道で」と、証言している。報道は六階、九階と言っていたはずだ。デカじゃなくても知っていたことをなぜにこうも「偽りの証言」をしてまでつっぱるのか?「予断のない検分をしている」と言いたいのかも知れないけど、頭かくして尻かくさずだ。“ウソ言ってます”と証明していることにはお気づきにならない(?)のはかなしい。
 続く能勢証人。「前回の証言後、なにか補足・訂正したいことがありますか」という検事の質問に「あります。大成の時、他の爆弾の検分をしたことがあるかと聞かれて、ないと言いましたけれどもそれは私の記憶違いで、間をやったのがわかりましたので訂正願います」と、ていねいに頭を下げる。彼の証言は一貫してこの「間をやったことすら忘れてボケてしまった自分」を謝罪する立場で行われることになる。検事はそう言う彼に調書を手渡して「この調書はあなたが作成したものですか」と、問いながら、彼がぺージをめくって一つ一つ確認し、まだ半分も進んでいないにもかかわらず、いらだたしそうに時計をみて…いきなり彼から調書を取り上げて「おおよそ確認してもらいましたか?」。証人はびっくりして検事の手に渡った調書の行方を目で追いながら小声で「はい」。こういうやり方はやめてほしい。相手に対する人間としての敬意というものがあるだろう。私しゃ、こういうのを見るとホント、ムカムカする。時間がないなら「急いで下さい」と言えばいいじゃないか。七十過ぎた人を呼びつけておいて、相手に敬意を持って証言してもらうのではなく、自分に都合の良いことだけ言わせるためにだけ連れてきていることがミエミエ。はずかしいと思ってほしいよ加藤君!
そしてこの調書の欠陥は、領置品の収集過程にある。路面のガラス片を八つの袋に詰め込んで赤坂署に持ち込んだ。そこで選別して数個の金属片を見つけた。その領置書が能勢氏の名前になっているのはドーシテ?例によって検事は自らの「作文」への同意を要求する。検事「…調書の記載は、担当者から“発見したのでひきつぐよ”ということでしょうか?」
「そうだと恩います」etc.etc.とにかくこじつけ! ということで、八袋とその中から見つかった金属片について(弁)「発見の場所とか記録されていないですね」
「(一つは現場で発見)あとはパーッと落ちているのを集めたんで…その点でひとつよろしくお願いします」
(弁)「記録しなかったのは?」
「作った書類を見れば不信がいっぱいありますけど、その当時はいっぱいで、どこになにがあったかは…」
(弁)「忙しくて手がまわらなかった?」
「手がまわらかなかったと言うより…引っ掻いて集めちゃったんですヨ。この中にあるんじゃないかと…」
ということで検事がこじつけたほど整合された話じゃないんだと正直に白状!
火元九階をはじめとする間組管理階では作動しなかったスプリンクラーが、他者の管理階であった十五階ではしっかり作動していた。これがこの階の「最大の被害」だった。弁護人は小倉証人にも、当時の新聞に載っていた「新建材が火と煙をよぶ、軽量高層ビル〜」と言う報道に基づき、内装についての印象を聞いた。証人は「特に記憶にありません」と証言。いつかそれらの原因についてもはっきりさせる必要があるだろう。
 次回公判は三人の証人(実況見分者)を調べる。
 東拘についたら、女区長は「君のいない間にパンフを持ち出しても、どれが訴訟資料かわから
ないから、とりあえず今日はそのままにしてある」とわざわざ言いに来た。そんなことは三日も前から一言ってある!(かわりに読みかけの新聞を持ち出した)。
 というわけで東拘の公判準備妨害と闘いながら、シコシコの『種捜し』を続けています。
 傍聴の仲間達ありがとう。多忙や遠方を通してきてくださって、とてもいっぱい力をもらっています。闘いの季節です。共に!再見!

ゆき子

第三十二回公判 傍聴記

ミキ

 九月二十四日裁判はこういう内容で開廷した。
「被告人の防御権を剥奪する行為をただちに止めてください。道理にそぐわない権力行為はおかしいではないか。ここに被告人防御権を侵害する権力行為を今すぐ取り下げるよう請求します」我が耳を疑いたくなるような(初めて目の当りにする)浴田由紀子さんの当然の訴えであった。自分の身を守るため在って、しかるごとき権利を剥奪し裁判を自分たち(権力者)の良いようにコントロールしようとする最悪の行為が、正邪・曲直を判定する限りなく権力から独立し、公正な立場を求められる裁判所で何たる失態だろう。あまりにも悪意を込めたその動きに私は足から這い上がってくる疲労を強く感じた。独断的に、あることを言い渡しそれを都合のいいように捻伏せる。こんなことが裁判所で行われてよいのだろうか。目の奥が疼く感覚として、この灰色の空間に不安という重く気持ちの悪いものがグルグルと取り巻き始めた。
「この家には座り心地のいい椅子が一脚もない」
『信用できない人々のいる家に帰らなければな
らない』
という“我が姿”を想像してみてください。
「今夜一晩で世の中を変えられる訳じゃないんだという絶望」
「こんなもんさこれが現実なんだという諦め」必要以上に落胆し投げやりな気持ちになるでしょう。しかし、私は祖の真っ只中に在る彼女の存在を目と目で確認したとき例えようのない確かさで、浴田由紀子の存在理由を力強く前身で感じ取ることが出来、その瞬間まで忘れていた温かい喉の奥から込み上げてくる優しい感情が溢れ出たのです。
 月のない夜に互いに歩調を合わせるのが容易ではないように「死ななきゃわかんない」バカな権力者を相手に闘っていくのは無駄な労力を多分に必要とするでしょう。
 アイツらは恐ろしい意志を持続させるために費やすエネルギー持ち続けることにすごくエネルギーの要る、『怒り』という感情の移動というのを上手く使っているような気がしてならない。
 だって、この「意味をなさない裁判の内容は一向に先に進もうという気配がまったく感じられないから」本当に苛立ちを覚える。しかし、浴田由紀子の絶対的な笑顔が、湿りきった臭いのする場所から早く出てまっすぐな光を浴びる日を信じて、私もあなたを強く支え続けていきたいと思うのです。あなたって人はそんな気持ちにさせてしまうとってもまっすぐな“魂”です。
 見てくれだけの世の中に存在する
あやふやなものに強い光を浴びせかけたいです。

私の未熟な文章ですがこの原稿を載せていただくだけで大変に嬉しく思っています。
私は本当に今回みなさんと共有できた喜びはしばらく魂として体の一部に存在していました。
では、お体に気をつけて絶対にまた会える日が来ると思いますので、その時までお元気で。
ありがとうございました。

ミキ

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