益永利明さんの獄中雑記

支援連ニュース No.175

●―――――一二月末に送金してくれた一万五○○○円は無
事落手(正確に言えば、入金を確認)しています。カイロの
ことも書きましたね。これは10個入り三三○円の「オンパッ
ク」とかいうやつでして、毎週金曜日の雑品購入のときに申
し込むと、翌週水曜日に交付されます。なぜか一回に買える
のは一袋(10個)だけですから、一日に二個ずつ使うという
ことはできませんね。私は大体一日一個で間に合わせていま
すが、年をとったり、体が冷える病気の人などは、これでは
つらいでしょう。なんでこんな細かいことまで制限するんで
しょうね。理解に苦しむことが多いですよ、ここではね。
 夜、布団に入るときにカイロの内袋を開けると、翌日の午
後三時ころまで暖かみが残っているので、昼間は、手あぶり
の代わりに使います。それが必要ないような日は、起床後、
ごましおの空袋(口にチャックが付いている)に入れて、中
の空気を追い出しておくと、夜にまた使えるのです。使い捨
てカイロは、鉄粉が空気で酸化するときの熱を利用するもの
ですからね。空気を遮断すると酸化も止まり、あとでまた使
えるわけです。一個を二回に分けて使うなんて貧乏性なんで
すかね(笑)。―――――
 ところで、一四日に黒木先生(教誨師)に会いました。先
生が、さしつかえない範囲で話してくれたところによれば、
先月処刑された野口さんは、当日、黒木先生から洗礼を受け、
聖餐にあずかってから、落ちついて天の国に旅立っだようで
す。同じ日に処刑された今井さんは、すでにカトリックの洗
礼を受けていたそうですね。野口さんが受洗をこれまでため
らっていたのは、受洗によって刑の執行が早まることを恐れ
ていたからかもしれないけれど、実際には、そのようなこと
が執行の時期を左右することはないだろうとのことでした。
法務省の特殊な思考方法からすると、そのようなこともあり
えないわけではないだろうと私は思いますが、色々な要素の
ひとつとして副次的に考慮されるという程度のものかもしれ
ませんね。野口さんは献体したそうです。いまのところ、親
族から遺骨の引取りの申し出はないので、先生の教会の墓地
に引きとることになるかもしれないそうです。
 野口さんは、最近やっと、私が「益永利明」であると気が
ついたようで、運動の行き帰りなどで目が合うと、会釈をか
わすようになったのです。あの、ちょっとびっくりしたよう
な、クリッとした目であいさつしてくれた顔が忘れられませ
ん。どうか安らかにと祈るばかりです。
 平田さんと今井さんは、集団処遇を受けていたらしい。ど
うも、集団処遇に加えられると、執行の確率が高くなる感じ
がありますね。「心情の安定」が達成されたと判断されるか
らでしょうか。
         (『ごましお通信』36号より抜粋編集)


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