益永利明さんの身辺雑記

支援連ニュース No.229


▼ 日暮れに虫の声が聞こえるようになりました。夏の終
わりは淋しいですね。読者のみなさんは酷暑を無事にのり
きることができましたでしょうか。遅まきながら、残暑お
見舞い申し上げます。
▼ 支援連ニュース二二八号で浴田さんが、「自首」をめ
ぐる私の意見に反論していますが、論点が微妙に食い違っ
ているんじゃないかな。仮に、日本が死刑を廃止したら、
浴田さんや将司は、あや子さんたちの自首を肯定するのだ
ろうか? 違うでしょう。別の理屈をみつけて反対するに
決まっている(笑)。結局、彼らの死刑廃止論というの
は、仲間に対する身びいきをカムフラージュする方便にす
ぎないのだろうと私は思うのですよ。市民運動を非合法活
動のかくれみのにする利用主義的体質は、根深いものがあ
りますねえ。
 私(たち)は、罪のない人たちの命を奪った。個人や運
動・組織の利害を超えて、私(たち)は一個の人間とし
て、この厳然たる事実と向き合わなければなりません。死
刑囚の側から発する死刑廃止の訴えは、このぎりぎりの状
況で発せられる言葉であるときに、人を動かす力をもつで
しよう。
 ところで、将司は、いまだ、自分の死(他者から強制さ
れる死)というものに真正面から向き合ったことがないと
私は思います(これは、単に死刑を意識するという次元の
ことではありません)。自分の死に真正面から向き合った
ことがないのだから、彼は、三菱の死者に対しても真の意
味で向き合ったことがないのではないでしょうか? 自分
の前にある最も重い現実から目を外らせて発せられる言葉
は、それが詩(俳句)であれ、政治的・思想的主張であ
れ、しよせん根のないつくりものにすぎないでしょう。
 あや子さんたちに逃げのびてほしいと願う彼の気持は真
実のものでしょう。ならば、それに妙な理由づけをせず、
その気持の内実を底の底まで掘り下げて、そこで見出され
た心の様相をありのままに語ればよいと思う。たっぷりと
気配りのきいた空疎な言葉はもう沢山です。私は、彼の魂
の奥底から発せられる真実の言葉を聞きたいのです。
 ▼ 三菱重工爆破事件から二七年目の八月三〇日を迎え
ました。私たちの無謀な闘争に巻き込まれて命を落とされ
た、清涼肇さんを初め八人の被害者と、今も悲しみの中に
あるであろうご遺族・関係者の皆さんに私は改めて謝罪
し、赦しを乞います。
         〔ごましお通信六一号より抜粋編集〕


TOSIAKI  HOME
inserted by FC2 system