大道寺将司くんの今日このごろ

支援運ニュース No.184


★旧聞に属することであり、他のパンフなので既にその
内容を知っている人も多いかと思いますが、年末にまた
計画されていると思われる死刑執行の阻止に向けて、『
法律時報』'97年9月号の「死刑制度のゆくえ」と題する
特集に触れたいと思います。
 これは、本年5月26日、日本学術会議刑事法学研究連
絡委員会の主催で、日本学術会議講堂において開催され
た「シンポジウム・死刑制度のゆくえ」の報告内容がま
とめられたものです。法学者が死刑の存廃をめぐって犯
罪抑止や憲法論などの立場から発言しているのですが、
異色なのは、元広島拘置所幹部として死刑執行に立ち会
った経験もある坂元敏夫氏の「死刑執行と死刑囚の処遇
・その実態と問題点」です。
 坂本氏は、刑務官の間では死刑存廃の意見は半々に分
かれるが、刑務所に勤める刑務官に存置派が多く、拘置
所に勤める刑務官に廃止派が多いと言います。なぜなら、
殺人事件で懲役刑になるのは毎年500人前後いるか、その
中には事件を被害者の所為にしたりして反省していない
者が多くおり、刑務所の刑務官は、そうした受刑者を見
て、死刑を免れた殺人者がこれだけ悪いのだから、死刑
囚は手がつけられないワルだろうと思うからだ、と言う
のです。これに反し、拘置所の刑務官は、死刑囚と日常
的に接して、死刑囚とは死刑を免れる術を知らなかった
者が多いことを分かっていること、そして、死刑囚のキ
ーワードは、貧困・知的に劣っていること・正直者であ
るので、刑罰の不公正さを肌で感じ、死刑廃止の考えを
抱くというのです。
 刑務官として長い実務経験のある坂本氏の発言だけに
説得力があると言えるでしょう。ぼく自身はその枠から
はみ出るかもしれませんが、未決時代に文通したり、身
近で見てきた限りで、坂本氏の言う、死刑囚についての
「共通のキーワード」は納得できます。
 なお、廃止派の代替刑導入論に対し、存置派は、長期
間刑務所で国家予算を使って生かすことは税金の無駄だ
と主張するのですが、坂本氏は具体的な数字を出して反
論します。獄中者の生活費は、一日1500円。365日を掛ける
と約55万円。一方、受刑者が刑務作業で稼ぎ出す歳入予
算は、60万円。刑期の長い熟練工には、平均の数倍も稼
ぎ出している者もいるから、存置派の主張は根拠のない、
誤ったものだというわけです。
 こうした元刑務官の意見も挺子にして、死刑廃止運動
を推し進めていきましょう。12月の死刑執行阻止!               '97・11・20 大道寺拝

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