大道寺将司くんの今日このごろ

支援連ニュース No.216


★俳句関係の本は馴染みが薄いかもしれませんが、角川
書店から『俳句』という月刊誌が出ています。これに、
今年の6月号まで1年間『黒田杏子が聞く「証言・昭和
の俳句」』という特集が連載されていました。彼女がイ
ンタヴューしたのは、戦前、あるいは戦後間もなくから
第一線で活躍している長老俳人たち。その内容は、俳人
たちの経歴、虚子を含めた近・現代の著名俳人たちとの
交流、いくつかの論争をめぐる背景、真相など。でも、
戦中の京大俳句事件の被弾圧体験が語られるなど、隠さ
れた現代史が明らかにされ、単に「昭和」俳句史という
だけではなく、近・現代外史とも言うべきものでした。
 この連載の掉尾を飾ったのは三橋敏雄氏。彼は西東三
鬼の弟子であり、また年若い仲間として、ある時期行動
を共にした人です。その彼が、復員後、運輸省の練習航
海船の事務長になってからの話が実に興味深い。彼はそ
の船に乗り込み、ニューギニアに日本兵の遺骨収集に出
掛けたり、朝鮮戦争の際には、避難民を運んだと言いま
す。そして、その避難民のなかには、日本で訓練して朝
鮮に送り返すことになる者たちが多数含まれていたとい
うのです。米軍は、富山県に新兵、あるいはゲリラ兵の
訓練所を設けていた、と。
 こんなことがやられていたから、ベトナム戦争では米
軍の出撃・補給拠点となったのでしょう。そして、新ガ
イドライン=戦争法は、もっとおおっぴらにこうしたこ
とをやろうというのでしょう。
 ともあれ、彼が語っていることは近・現代史の研究者
には既に知られているかもしれませんが、周知の事実と
して知られてはいないでしょう。わずか半世紀余りの歴
史の中でさえ、埋もれた、あるいは意識的に隠されてい
ることが数多くあることは、皇軍兵士の性奴隷として人
権を蹂躙され尽した朝鮮やフィリピンなどの女性たちの
ことを想起すれば足ります。
 俳人に限らず、戦前、戦中を生きてきた人たちが、自
らの体験したことを若い世代に語り継ぐことは大事です。
かつての過ちを繰り返さないために。
 あやまちはくりかへします秋の暮  三橋敏雄
★沖縄での米兵による少女のレイプに対する抗議行動は、
サミットを控えて小規模だったと報じられました。しか
し、マスコミ自体が、北側先進諸国の頭目たちの私的会
議をより重要だと認識し、この事件の報道を抑制し、反
米感情の鎮静化につとめました。少女の側に立つのか、
米軍や頭目たちの側に立つのか、鋭くその価値観が問わ
れています。        2000・7・19 大道寺将司


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