大道寺将司くんの今日このごろ

支援連ニュース No.243b


★怒涛の如き拉致報道が、それもかなりバイアスのかか
ったものが続くなか、時宣を得た本が出版されました。
『李朝残影 梶山季之 朝鮮小説集』(インパクト出版
会)です。
 梶山の小説は、侵略者としての日本人の立場に無自覚
もまま、生まれ育った朝鮮を、また、植民者としての豊
かな生活を回顧する類のものではありません。植民者の
一員としてのうしろめたさ、また、植民地支配の苛烈さ、
非道性が描かれていますから。
 例えば、『族譜』では、徴用逃れのため京畿道庁に勤
めた日本人の画家を通して、「内鮮一体」のスローガン
のもとに推し進められた「創氏改名」が如何に実施され
たか、抵抗する朝鮮人に対して如何に汚ない手段が弄さ
れたかが描かれます。また、朝鮮人が「夜中に寝込みを
襲われたり、野良仕事をしているところをトラックに積
み込まれたりして、強引に北海道や九州の炭鉱に労務徴
用として送られる」と強制連行のことも触れられます。
 そして、『李朝残影』では、妓性の朝鮮舞踏の絵を描
く日本人美術教師の父が、三・一独立運動の時に、堤岩
里で朝鮮人を二九名も虐殺した守備隊の隊長であり、絵
のモデルとなった妓性は、堤岩里で虐殺された朝鮮人の
娘として描かれます。
 先に“時宣を得た”と書きましたが、一連の報道が日
本(人)を一方的な被害者として描き、北朝鮮非難に終
始しているからです。金正日を筆頭とする北朝鮮当局が
拉致を些事とみなし、全貌を明らかにしないことは非難
されて然るべきですが、日本政府も、かつての侵略と植
民地支配、強制連行、従軍慰安婦などについて、北朝鮮
には謝罪も賠償もしてこなかったのです。
 梶山の『李朝残影』は、健忘症の日本人に、その加害
性をよく気付かせてくれるでしょう。
★最近読んだ本でもう一冊腑に落ちたのは、『デモクラ
シーの帝国』(藤原帰一著・岩波新書)。帯紙に「帝国
に向かうアメリカの下で世界はどうなるか?」とあるよ
うに、アメリカ、特に、9・11以降のブッシュ政権のあ
り様を分析したものです。「帝国」を特定の国家ではな
く、市場主義、グローバリゼーション、情報化から構成
される世界規模の過程と機構だと規定するハートとネグ
リとは異り、藤原はアメリカのことだとして様々に例証
します。そして、今や、「アメリカによって裁かれるこ
とはあっても、そのアメリカは裁かれない」世界が現出
している、と。
 アメリカによるイラク攻撃を許してはならない。
             2002・11・27 大道寺将司























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