意  見  書

 爆発物取締罰則違反等                  浴田 由紀子

 右被告人に対する頭書被告事件につき、共犯者大道寺将司及び片岡こと益永利
明両名の所在地尋問に関する弁護人の要望に対する検察官の意見は、左記のとお
りである。
   平成一一年一月一四日

           東京地方検察庁
               検察官 検事  千 葉   守
               検察官 検事  島 田 健 一
東京地方裁判所 刑事第五部 殿

            記
一 「所在地尋問について一般の傍聴を禁じた明文はないので、拘置所内での一
 般傍聴についてこれを許可する措置を検討していただきたい。」等の要望につい
 て
  東京拘置所において所在地尋問を実施する理由は、死刑確定者である両証人
 の身柄の確保、外部交通の遮断、心情の安定等のためであるところ、弁護人が
 求める一般人の傍聴は、これらを阻害するものであり、本件所在地尋問の意義
 を無に帰する上、所在地尋問は、その規定の趣旨からして、非公開を前提とし
 ていることは明かであり、右要望は受け容れるべきでない。

二 「一般傍聴が不可能な場合には、かつてオウム真理教の破防法の弁明手続に
 おいて行ったように、報道機関の傍聴に限り、これを可能とする処置を検討し
 ていただきたい。」等の要望について
  破防法の弁明手続と所在地尋問は、その性格を異にし、同列には論じられな
 い上、所在地尋問は、本来、公開のものではなく、報道関係者のみ傍聴を許す
 余地は存在せず、右要望も受け容れるべきでない。

三 「前記一、二の要望が不可能な場合には、証人尋問の様子をテレビ中継し、
 一般傍聴可能な場所でこれを同時放映していただきたい。等の要望について
  新民事訴訟法と刑事訴訟法の手続を同列に論じられないのはもとより、死刑
 確定者の心情の安定を害する上、非公開を前提とする所在地尋問の趣旨にも反
 するので、これについても同様受け容れるべきでない。

四 「前記一、二、三の要望が不可能な場合には、証人尋問の様子を録画録音し、
 後の公判期日でこれを再生していただきたい。」等の要望について
  前記三の理由から、この点についても受け容れるべきではない。
  なお、刑事訴訟法規則に定められた写真撮影、録音等は、あくまで公判廷を
 対象としたものであり、もともと公開を予定していない所在地尋問については、
 該当しないことは明かである。

五 「証人らの外部交通の制限により、被告人は証人テストが全くできない状態
 にある。従って、証人尋問に先立って、約一〇分、弁護人、被告人と証人との
 打ち合わせ時間を設定していただきたい。」等の要望について
  弁護人と被告人の打ち合わせは、法廷内であっても、形態は接見の一種と解
 され、監獄法令により接見所で実施すべき性質のものと思料されるが、東京拘
 置所側が同意するのであれば、訴訟進行上の観点から裁判所の訴訟指揮により、
 法廷内において、裁判長立会の下、適宜、被告人と当該弁護人との打ち合わせ
 を認めることに、異論はない。
  これに対し、弁護人、被告人及び証人の三者による法廷内での打ち合わせは、
 本来、拘禁されている被告人が、証人に対して、直接証人テストを行うことま
 では法令上も予定していない解され、弁護人が訴訟の準備段階において証人と
 接見することによって対応すべきであり、これについても受け容れるべきでな
 い。
  なお、弁護人が過去の先例としてあげる連合赤軍のケースは、証人が受刑者
 の場合で、かつ、遠隔地の刑務所に受刑し、直前に東京拘置所に移送されたと
 いう事情から、弁護団が、実質的な打ち合わせが行えなかったため、裁判の進
 行上、特に許可されたものと思料されるが、本件では、大道寺及び益永は、受
 刑者ではなく死刑確定者であって、証人の立場に厳然たる差異が存する上、両
 名とも東京拘置所に在監しているので、同列には論じ得ない。

六 「証人らは全日の法廷で証言し続けることに不安感を表明しており、証人ら
 の消耗が明らかに認められる場合には、適宜尋問を中止、休止するなどしてい
 ただきたい。」等の要望について
  右の理由により、証人尋問を中止あるいは休止することについては、裁判長
 の訴訟指揮に従うことに異論はない。
  東京拘置所が同意するのであれば、証言台に飲み水を準備することに異論は
 ないが、戒護職員は戒護に専念させる必要があり、水の補給等は戒護職員では
 なく、裁判所側で対応すべきと思料する。
 また、マイクについては、東京拘置所側が応じるのであれば、異論はない。


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