鑑定意見書

大逆寺将司、益永利明に対する爆発物取締罰則違反等再審請求事件につき、
1989年10月1日、弁護人庄司宏から鑑定意見を嘱託されたので、次の
とおり鑑定意見を述べる。
1990年3月25日
                 東京都立大学工学部
                  助教授 湯浅 欽史

  目 次

1、嘱託された鑑定項目
2、鑑定意見を述べるために行った実験の概要
(1)実験の目的
(2)実験に用いた試料
(3)燃焼させた混合物
(4)実験方法
@混合物の成形
A混合物への着火
B燃焼時間の計測
C実験経過の写真撮影
3、実験の結果とその考察
(1)それぞれの燃焼時間
(2)木炭と砂塘の燃焼の比較
(3)塩素酸カリウムと塩素酸ナトリウムの燃焼の比較
(4)実験方法について
(5)前回の実験と今回の実験との結果の比較
4、付録資科
(1)「安全工学実験法」225〜227ページの複写
(2)実験経過の写真帳

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1、嘱託された鑑定意見項目

(1)可燃剤としての木炭と砂糖を比較すること
(2)燃焼剤としての塩素酸カリウムと塩素酸ナトリウムを比較すること
(3)ただし以上について、鑑定意見嘱託書に添付の資科「安全工学実験法」
  に示された実験法に基づいて実験を行い、前回の実験(1988年7月1
  日付鑑定意見書記載)の結果と比較すること
添付資科
[再審請求に対する意見書」(東京地方検察庁)
『安全工学実験法』(総合安全工学研究所編集)

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2、鑑定意見を述べるために行った実験の概要

 (1)実験の目的

@混合火薬の材料に必要な可燃剤(燃焼剤から酸素を得て燃えるもの)と
 して木炭と砂糖とを比較すること。
A混合火薬の材料に必要な燃焼剤(酸素を供給して可燃剤を燃やすもの)
 として塩素酸カリウムと塩素酸ナトリウムとを比較すること。

 (2)実験に用いた試料

@上白糖
A木炭粉末
B塩素酸カリウム
C塩素酸ナトリウム

 (3)燃焼させた混合物

@上白糖20%と塩素酸カリウム80%を混合させたもの
A上白糖20%と塩素酸ナトリウム80%を混合させたもの
G木炭粉末20%と塩素酸カリウム80%を混合させたもの

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(4)実験方法

@ 混合物の成形
1. (2)で示した試料を80℃で1時間乾燥させた後、それぞれ乳鉢で数分間
 粉砕した後、(3)で示した混合比率でそれぞれが総質量20gとなるように
 混合し、3種類の混合物を作成した。
2. 混合物をアルミ製のV字溝(断面は短辺8.8mmの二等辺直角三角形)
 に詰めて、木製の板をV字溝の混合物の表面側にかぶせ、逆転させてV字
 溝を取り除いた。混合物は木製の板の上にA字状に盛り上がることになる。
A混合物への着火
 大型ライター(商品名チャッカマン)で混合物の先端に着火する。
B燃焼時間の計測
 あらかじめ木製板上に記してあった先端から120mmの線まで燃焼が進行
 した時点より、その後同じく記してある先端より220mmの線まで燃焼が
 進行した時点までの時間を計測した。なお、混合物は先端より220mmま
 で盛り上げたため、220mmまで燃焼が進行した時間は、燃焼が急速にた
 ち消えになる時間と同時である。
C実験経過の写真撮影
 実験経過を写真撮影した。付録として添付してある。

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3、実験の結果とその考察

(1)それぞれの燃焼時間

@上白糖20%と塩素故カリウム80%を混合させたもの=4.2秒
A上白糖20%と塩素酸ナトリウム80%を混合させたもの=4.6秒
B木炭粉未20%と塩素酸カリウム80%を混合させたもの=48.6秒

(2)木炭と砂糟の燃焼の比較

同一の燃焼剤である塩素酸カリウムを用いた@とBを比較すると、砂糖より
木炭の燃焼時間がかなり長かった。木炭は粉砕されにくく、上白糖より粒径
が大きいことも影響しているものと思われる。

(3)塩素酸カリウムと塩素酸ナトリウムの燃焼の比較

同一の可燃剤である砂糖を用いた@とAを比較すると、塩素酸カリウムと塩
素酸ナトリウムの燃焼時間はほぼ同じであった。

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(4)実験方法について

添付試料にも「酸化性物質についての公的な形の試験法はまだ定められてい
ない」とあるように、この種の燃焼実験には唯一に特定された方法はない。
また、形が均一に作られるなら、木製のV字溝またはU字溝に詰めたものを
直接燃焼させても、相対的比較としては問題はないと考えられる。

(5)前画の実験と今回の実験との結果の比較

ほぼ同一の結論が得られた。
(以上)


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