平成三年(く)第二六号
再審請求棄却決定に対する即時抗告申立事件
      決    定
          再審請求人 大道寺 将 司

              旧姓 片岡
          同     益 永 利 明
 事     件 爆発物取締罰則違反、殺人等被告事件の確定
         判決に対する再審請求事件
 原  裁  判 東京地裁 平成三年二月一八日決定
 抗 告 申 立 人 請求人益永利明
         請求人両名につき、弁護人 新美 隆
        主   文

     本件各抗告をいずれも棄却する。
        理   由
一 論旨は、確定判決後に湯浅欽史が行った鑑定の結果から、
請求人両名が三菱重工爆破事件で用いた爆弾の威力を事前に認
識しておらず、したがってまた、右爆弾によって人を殺害する
意思もなかったことが裏付けられたので、請求人らは、右事件
に関し殺人及び殺人未遂を認定した確定判決につき、刑訴法四
三五条六号により再審を請求したところ、原審は右請求を棄却
する決定において、
1 請求人らが原判決の構造的欠陥を指摘した点を適法な再審
事由の主張として取り上げない誤りを犯し、
2 請求人らの手製爆弾に関する知識につき、誤った立論をし、

3 請求人らが右事件で用いた爆弾の爆発原因と請求人らの殺
 意の認定について、誤った立論をした、
というのである。
二 しかしながら、所論にかんがみ検討しても、原決定の判断
に誤りは認められない。
 確定判決は、三菱重工爆破事件で用いた爆弾の準備の経緯、
その構造、規模、使用目的、設置場所や爆破時刻の決定経緯等
に関する請求人ら及びその共犯者らの供述内容とともに、証拠
から認められる請求人両名の爆弾に関する知識、右爆弾の構造、
充填した爆薬、設置場所、爆発時刻、人的物的被害状況、本件
の惨事を引き起こした後も請求人らが爆弾闘争を繰り返した事
実等々につき、総合的に検討を加えた結果、請求人両名が、右

爆弾の威力を認識し、爆発すれば周囲の不特定多数人を死亡さ
せうることを認容したうえでこれを爆発させたと認定して、殺
意の存在を認めたのである。そして、請求人らが、確定判決判
示の目的をもって判示のような爆弾を仕掛け、爆発させて死傷
者を出したからには、たとえ、実際に起きた爆発作用の物理的
ないし化学的条件、原因等につき、請求人らの事前の知識、認
識とそわない点があったとしても、そのような事柄は、請求人
両名の本件爆弾の威力の認識、ひいては殺意の存在を左右する
ものではなく、確定判決の殺意の認定になんら影響を及ぼすも
のではないことは、原決定も指摘するとおりである。所論の鑑
定結果が、確定判決の殺意の認定に影響を及ぼすベき新証拠で
あるとは到底認められず、刑訴法四三五条六号の証拠に該当し

ないとは明らかである。
 したがって、請求人らの本件再審請求を棄却した原決定は相
当であって、本件抗告は理由がない。
 よって、刑訴法四二六条一項後段により主文のとおり決定す
る。

  平成三年二月二九日
     東京高等裁判所第三刑事部

       裁判長裁判官 石  田  穣  一

          裁判官 高  木  俊  夫

          裁判官 小 田 部  米  彦

右は謄本である
 平成三年三月二九日
   東京高等裁判所第三刑事部
    裁判所審記官 岡 野 和 子


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