〈定期第122信〉
 秋らしい秋もなく、夏からあっという間に冬に至ってしまったようである。いやはや、最近の日本の四季も様変わりである。今冬は暖冬だそうだから、獄中者としてはけっこうなことではあるが……。
 11/2 官給靴下の貸与。舎房要2足、工場用3足。新品が各1足含まれている。あとは中古品。冬用なので夏物に比べると厚めでである。因みに夏用靴下は工場用しかない、工場出役者の場合。昼夜独居の場合には夏用もあってはけるが。
 しかし、官物より私物を使っている人が多いようだ。
 11/3 9:00〜9:25 医務課VTR『B型肝炎の消える日まで』。このビデオ、第一製薬が作ったワクチン宣伝用の内容みたいであった。医療関係者向けの内容で、一般の人にはイマイチ、合ってないものだったな。ちょっとむずかしかった!?
 肉まん、あんまん各1ヶ特配。
 11/5 一般官本2冊借り出す。田中小実昌『親不孝橋をわたって』実業之日本社、藤沢周平『暗殺の年輪他』文芸春秋。
 工場において作業賞与金の使用について処遇担当の専門官より、協力要請のお話。5千円以上領置金のある者が対象のようで、対象者が1人々々呼ばれてお願いされた。
 11/9 官給メリヤス貸与。工場用2組、舎房用2組、どちらも中古。
 中日新聞朝刊の社会面が一部抹消。
 11/13 9:00〜10:00 川柳クラブに出席。あいかわらずの2名であった。13:20〜慰問演芸会。女性演歌3名。さすがに女性歌手のときは観客の姿勢がちょっと違ってくるようだ。『悪党諸君』にもそんなこと書いてあったな。
 夜は19:00〜 NHK教育TV『少年少女プロジェクト 十代の言い分 情報編』という番組を見た。情報量が多すぎるというのは子どもにとってかえってマイナスなのかなぁ。
 11/14 9:00〜 3年以上無事故者褒賞VTR『アイスステーション』。悪魔もののホラー映画といったものであったが、ちょっと迫力がなさすぎたなぁ。ビデオが終わってからテレ朝の『サンデープロジェクト』を見たが、亀井と菅が討論しておった。党首を辞めたら菅直人は元気になったようだ。しかし、なんで『サンプロ』は神奈川県警の件、取り上げていかんのかなぁ。ちょうど書類送検されたときに。テレ朝は警察に弱みでも握られてるのかしらん? それにしても残念。盗聴法成立前だったら……とみんなが思っている。
 11/15 一般官本2冊借り出す。ねじめ正一『恋愛さがし』講談社、山上龍彦『兄弟!尻が重い』講談社。『恋愛さがし』はわりとおもしろかった。ねじめのはおもしろくなさそうなのでこれまであまりよまなかったが。『兄弟!尻が重い』はさすが、こまわりクン的ナンセンス。
 告知が3項目あった。
 (1)これまで朝夕の点検時、正座によるとしていたが本日夕点検より正座または安座のどちらかでもよい、とするということになった。
 (2)作業中など、これまで幹部職員などが来た場合廻れ右などをしてうしろ向きとなり顔を合わさないようにしてきたが、今後は、本所職員(所長を含む)に対しては、通常どおりの作業などを続けてもよいということになった。但し、他施設職員などについては今までどおり。
 (3)運動中、球技以外については帽子を被る被らないは自由とするということになった。
ま、以上のような内容の処遇変更である。一応、処遇改善と言うべきものだろう。未決以来10年ぶりに私も安座で点検を受けることができた。こうした今回の処遇上の変化は全国的なものなのだろうか? そろそろ監獄法改悪の動きが、再び激化してくるということかしらん。今の自自公体制なら、なんでもやりたい放題だから、それも充分考えられることだろう。
 11/16 朝就業前の天突き体操開始。膝を屈伸させて、腕を突き上げるといったような体操で、オイショッ、オイショッと私もよくやっている。けっこういい運動になっている。この体操は、寒い時期になると、毎年始まり、春になると終わる。
 この日は、わが工場と他工場とのソフトボール試合で、どういうわけか逆転勝利してしまった。木枯らしのきつい日で、ほんと寒かったなぁ。
 11/17 処遇変更に伴い、『所内生活の心得』を訂正するので引上げ、のち戻された。訂正は「『点検』の号令で正座または安座し、点検職員が居室の前に来て『番号』の号令をかけたら、自分の称呼番号をはっきりととなえること。」とあった。
 11/18 3枚目の毛布貸与。舎房用、工場用チョッキ貸与。
 11/20 TV視聴に集中。しかしあまりおもしろい番組もなかった。20:00〜の教育TVで『ETVカルチャースペシャル』を見たら、おもしろかった。“能に秘められた人格”というタイトルだったが、要するに呼吸法のことだったな。私も以前から呼吸法については、それなりにやってきているのでかなりためになった。眠る前に丹田呼吸をやっておくと、よく眠れるわい。
 11/21 もTV視聴に集中。10:00〜テレ朝の『サンデープロジェクト』はいつも見ているがおもしろい。
[差入れ][11/2]支援連ニュースNo.206〈東武央〉 新生554号〈立志社〉 死刑と人権No.108、宮崎学講演録、「いのちの絵画展覧」大阪、丸岡修さんの裁判にご注目ご協力を〈かたつむりの会〉 [11/8]『インパクション116』、インパクション愛読者の皆様へ〈インパクト出版会〉 日雇全協ニュース98号〈全国日雇労働者組合協議会〉 [11/11]人民新聞10/15号、同10/25号〈日角八十治〉 新生543号、同557号〈立志社〉 シャコ通信No.17〈東武央〉 [11/12]ごましお通信53号〈益永美幸〉 ザ・パスポートNo.88〈帰国者の裁判を考える会〉 [11/15]『刑務所のなか』、草の根通信324号、安田さんを支援する会news〈平山まゆみ〉新生559号、同558号〈立志社〉 [11/18]救援367号〈QCR〉 模索舎月報11月〈模索舎〉以上。
 いつも差入れどうもありがとう!11/8差入れ告知分まで落手。
 「支援連ニュースNo.206」では、ゆきちゃんの公判報告でトシとの再会のことが書かれてたが、かなりよかったようだな。ま、いつも最高!といったようだが。しかし、トシのファッションセンスはちょっと、では?! 赤シャツに白パンツ!!? 還暦ファッションみたい。なーんて言えんか、私なんかここ10年、灰色ファッションだもんな。しかし作業衣の色が若草色になるなんて話もあるようだから、ま、少しは良くるかな。
 護憲というのは、今の政治状況下では、というところではないのかな。力関係からいったら、今改憲で動けば、悪い方向へいくことになりそうだものな。なにせ145国会で悪法がどんどん成立していっても大したリアクションもなくきているのだから。地域から中央を撃っていくことに重心を移すのがいいのかなぁ。地域といえば広島で暴走族が騒いでいるのは暴力団からの指示とかいう話があるが、あれは秋葉広島市政に対する攻撃ってことかしらん。地域での攻防が激化していく予兆だったりして。
 丸ちゃんの文章にやや元気がないように感じるのは、体調がわるいためかな。あまり無理して書き物しないように気をつけて。
 「監獄人権センター通信No24」に拘禁二法案の再上呈が近いのでは、とあったがこのところの処遇変化をみていくと、どうもその可能性が大きそうだな。今の状況だと成立してしまうかも…。たとえ、そうなったとしても良い方向への大巾な修正がなされるようであればいいがな。自自公体制が早く内部崩壊してくれると助かるが、と。
 懲役の多くは、監獄法が「改正」されれば、今よりもっとよくなると言っているがそうは言えんだろう。監獄法「改正」と言ったところで、要するに、今までに出されている通達を条文化するだけってところだろうから、そう大して変わらないだろう。かえって条文化されることによつて強制力が増すってことかな。どうも政治状況がわるいので、パッとしたことも考えられないなぁ。明るい未来は来ないのかしらん。
★「宮崎学講演録」はおもしろかったです。こうしてパンフ化するのは、大変だろうけど、現場で聴けない者にとってはありがたい。宮崎さんの本は『突破者』を読んだくらいだがあの本はおもしろかった。(おもしろかったとしか言えんのはボキャ貧かな)こんど『血族』を読むつもり。読書人の小嵐さんの書評でかなり評価してたようだから、図書券で購入。
★収容者美術作品コンクールと文芸作品コンクールに出したものは、全てダメであった。水彩画、川柳、俳句、詩だったかな。水彩画はわりと力作だったのだが、やはりヘボだったか。詩は自分としてもあまりよい出来とは思わなかったので、しょうがないか。川柳は佳作にも入らなかったのには、ちょっとかっかり。ま、この頃どうものれないカンジで、あまりいい川柳ができなくなったのはたしかだが。詩は自然と身内から湧きあがってくるようなものでないと、やはりダメみたい。
★作業賞与金 99年10月分 1等工9割増(時間36円)〈基本給 5,436円〉10,328円。
★今冬は、暖冬とは言え、そろそろインフルエンザが流行ってきているようだし、お互い寝込まぬように気をつけよう。丸ちゃんはとくに気をつけて、安静第一で文筆活動を若干おさえるようにするといいのだが。では元気で!また!
                      1999.11.23 Shaco


SHACO
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