〈定期第131信〉
 ものすごく暑い。夏である。何もせず坐っているだけでも汗ダラダラとしてくるときは、ひたすらダラケているのが一番なのだが。
 こちら岐阜刑では、このところ連日37度前後の気温が続いている。当然、夜も暑く、熱帯夜といったところ。いやはや夏は、実に困ったものである。
 よく言うことだか、暑い夏は、何をするにもいやになる、やはり、冬眠ならぬ夏眠の時季である。獄中者の夏眠……狭い独房に身をジッと横たえて涼しげな秋の日を待つ。
 しかし、岐阜はまだいいよ。山に囲まれているから、鳥の声は聴こえるし、その飛ぶ姿もしばしば見ることができる。空を舞っているトビ、季節はずれのホーホケキョ、夕方にはカジカが鳴くわ、で、なんとか暑さもまぎれたりするからね。東拘では、そうはいかない。私も8年間旧北舎にいたので尚更、耐えがたいよなぁ、とよくわかる。東拘にいるみんなは、体調を崩さないようにしてほしい。
 7/3(月) 一部夏期処遇へ変更。食後の拭身許可(平日の夕食後、免業日の朝食夕食後。洗面器3杯の水で独居者3分間以内、雑居者5分間以内)、湯茶の増配。
昼休み後作業安全ビデオの視聴。7月の安全月間中、毎週月曜日の昼休み後に視聴させる。
 7/4(火) テニス試合。代表者による工場対抗戦。わが工場は負けた。
 7/5(水) 理髪、あいかわらず原型刈りを希望。たいして変わらなかったりして…。
 7/6(木) 歯科治療の手続きの変更についての告知放送。これまでふつうの願箋を使用していたが、今度は歯科治療専用の願箋を使用して出願するようにとの内容。
 7/10(月) 運動用丸首シャツ貸与。夏期は運動をすると汗びっしょりとなるので、着替えが1枚あるだけでも大変助かる。昼休み後、作業安全ビデオを視聴。
 雪印の食中毒事件が起こっての影響か、昼食に出されたチーズは、これまでの雪印6Pチーズからブランド名のないチーズへ替わっていた。
 7/11(火) フトン乾燥・午後、歯科治療の呼出しがあり、行ってきた。今年の2月末に出願しておいたのだが、けっこう時間がかかるものである。診てもらったところ、小さな虫歯がチラホラある程度とのことで、様子を見るということで治療はなく、戻ってきた。歯科に行ったのは、高校時代以来だから、30年ぶりであった。それでチラホラなら、けっこう健康なんだなぁ、と思ったりして。80歳になっても、20本ぐらいの自前の歯は残ってるかしらん?
 7/12(水) 検眼へ行ってきた。今かけているメガネがどうも合わないので、新たにメガネを買おうと思って。視力検査をしてもらうことにしたのだが、前回(2年前)と視力は変化ないとのことであった。老眼にも、まだなってないようである。
 7/15(土) 9:00〜10:00 川柳クラブ。川柳の講師の方は高齢のためか、熱暑は、けっこうこたえておられるようであった。私はこの先生ともう10年のおつきあいである。私以外の生徒はみな新しい顔ばんりである。現在私を入れて4名である。
 13:00〜 特別ビデオ『パイソン』、以前あった『アナコンダ』のニシキヘビ版?
 暑い夏は、慰問演芸や映画を講堂で見るなんていう総集行事は困る。暑くてかなわんので、今回のように各室で見るビデオの方がラクで良い。
 6/16(日) 8:50〜9:30 報道教養ビデオ『ニッポン野球誕生の時』、『ときめき歴史館』に替って『その時歴史が動いた』とかいう松平某司会の番組になったようだ。
 10:00からTV朝日の『サンデープロジェクト』を見たら、石原慎太郎があの卑しいニヤケタ顔で出てきて首相になりたがっていた。いやはや大変な状況になってきたもんだ。
 7/17(月) 中部地方が梅雨明けとなる。掛布団引上げとなる。狭い独居某から掛布団がなくなり、広々としてすっきりとした。
 7/19(水) 昼食にウナギの蒲焼きが出た。これで少しは暑さにバテることなく夏をのりこえられるかな。工場で使う安全靴が新しいものと交換された。安全靴は1年に1回交換されている。
 午後、眼鏡選びで呼出されるが適当な眼鏡がなかったので眼鏡購入をあきらめた。刑務所では自分の好きな眼鏡を購入するのは、なかなかむずかしいものである。
 7/20(木) 冷凍されたオレンヂゼリーと青リンゴゼリー各1個が給与された。ゼリーよりカキ氷の方がよかったのじゃないかな。最高気温37.4℃とか。
 7/22(土) 昨日は最高気温38℃とか。しかし、今日は38.7℃に上がったそうだ。ヒェーッ。私が風邪ひいて出したときの体温より高い。どおりでシンドイ筈である。昨日あたりからサミット開催とかであるが、戦略なき日本が進行役とは、笑われるだけだろうに。それにしてもエライ警備体制である。あれでは地元にとっては大迷惑であろう。
 午後2時にたまたま診たTVドラマ『法歯科学の女』に宇検村枝手久島というのが出てきた。そのあたりでずっとロケしたものらしかったが、あまり風景がきれいというカンジでもなかったなぁ。

[差入れ][7/4]『はるかなるわがラスカル』、『フロックスはわたしの月』、26の瞳プラス60のひとみ、ゆきゆきて、夢と希望つうしん準備号〈平山まゆみ〉 [7/5]再審研究会の記録、監獄改革の道を考える、死刑について考えてみませんか〈永井迅〉 人民新聞6/25号、夏期カンパにご協力を〈日角八十治〉 死刑と人権No.112〈かたつむりの会〉 新生581号〈立志社〉 [7/12]わたし味方です通信2号〈益永美幸〉 [7/17]¥5.000、白紙便箋1枚〈平山まゆみ〉 [7/18]人民新聞7/5号〈日角八十治〉 以上。
 いつも差入れ、どうもありがとうございます。
○「キタコブシVOL85」で将司が同囚とのトラブルで大変そうなのが書いてあったな。人間が2人以上あつまれば、何らかのトラブル発生はしょうがないもんだと、私自身のことを考えても、そう思う。ガマンせず、ガツン!ガツン!とやったらいいんじゃないのかな。きつく対応しないとダメな人も中にはいるからね。私なんか、けっこうトラブルことがあるもんで、鍛えられてきたのか、ほんの少しだけ図太くなってきたかも。それに比例して?ストレスのためか髪もかなり悲惨な状態となってきているが。ひょっとして、私は刑務所を出たら、髪の毛が生え始めるかもしれない、ときたいしているところである。ダメか?!
 佐川さんは、ホントのところ生きたかったと思うよ。ホンネを率直に出せない性格もあって、えい、もうどうでもいいや、と投げやりになっちゃったのではないかな。友人たちとの自由なやりとりができていれば、そうはならなかったんじゃないかと思うけど。無期になったらそれなりに希望もまた見えてくるだろうしね。
○「夢と希望つうしん」とは、また少女趣味的なタイトル! などと言ったら怒られてしまうかな。6月初めに家族との面会にクリクリ頭でねずみ色の官衣で…とあったが、東拘では4月にはウグイス色(?)の官衣に替わったようだが、移監待ちの受刑者は、旧官衣のままということかな。毛沢東の実践論にあるが、刑務所に移ったら、じっくり観察し、調査して生活をつくってほしい。延安とはわけが違うじゃん、といわれるかな。しかし、東拘の医療体制に比べたら地方の刑務所のそれは、かなり差があるので、そのへんが心配になってくるね。さて、今頃は、もうどこかへ移監となっているだろうか。
○「支援連ニュースNo214」のヒロ画伯の絵はいいねぇ。顔がなんともいえずに良い。
 終身刑ということについて段階的なものとして賛成というところかな。それは当然、獄中処遇の更なる改善が必要不可欠ということだろうね。
 ゆきちゃんが「証人採用はかなうでしょうか」書いてありましたが、どうやら私の証人採用はほぼ決定とのことらしい。秋から弁護側尋問が始まるそうであるが、さて、私はいつ出廷となるのだろうか? 東京地裁でやるということだが、とすると私は東京まで出ていく、ということになるのだろうか? そうなると、あの東拘にしばらく在監ということになるのだろうかしらん。しかし、東拘の処遇はあんまり良さそうではないしなぁ。メシはまずいし、いいのはゆきちゃんの顔が見られるってことぐらいだな。もし、東京へ行くことになったら、しばらくぶりの東京でもよく見てこよう。
○「黒 La Nigreconro 1」はアンケート付きできた。やっぱりおもしろかったのは“村上義博伝説”だった。無名の人々の活動史の方がおもしろいし、当時の状況がよくわかってくるように思う。有名な人々に偏重しすぎたので運動がおもしろくなくなったのかも。これからはアナキズム的な運動がふさわしい社会状況になってきているのじゃなかろうかと思ったりもする。「住民投票」なんて、そんなカンジするしね。
★作業賞与金 6月分 1等工(時間36円70銭)(基本給6,165円60銭) 11,715円。
 噂では、来年あたりから、作業賞与金ではなく賃金として受刑者に給与されるようになるという。金額ももっと高くなる、とか。ホントかしらん? 法務省の矯正処遇改善のひとつということか? 外部交通権が緩和されるかもという話は、官獄通信に出てたが。さて…。来年どうなるか、たのしみだなぁ。今回はこれで失礼! 元気で! 2000.7.23 Shaco.


SHACO
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