〈定期第156信〉
 三月中にすでに桜の花が咲いてしまったほどのあたたかさである。温暖化は増々ひどくなってきているのだろうか。入学式に桜の花という関係は断たれてしまったか。
 今冬は、風邪、インフルエンザにかかって寝込む、ということがとうとうなかった。
 これは素晴らしいことである。どうしてこんなことが起こったのであろうか?
 私の丈夫さゆえか? そんなことあるまい、毎年よくひいておったもの。
 やはり、栄養のよいものを食べられるようになったため、といったところだろうが。
 昨秋あたりから、ほんと献立の内容がよくなってきたからなぁ。日頃摂取している栄養がいざというときモノを言うというところだろう。日頃栄養が不十分にしか摂取できていなければ、病気、とくに風邪などをひきやすくなるものである。
 岐刑当局もそのへんがよくわかっているということだろう。そりゃあそうである。風邪が流行ると、あっという間に拡がり、入病者も続出なんてことが度々ありすぎた。一時期などは入病者百人前後なんてこともあった。その苦い教訓から、多分、日頃の栄養摂取を十分にと、献立表の内容が向上してきたのであろう。かえってこの方が安くつくというところかも。
 私らもいいもの食べられて嬉しい。
 3月5日(火) 曇り夜に時々雨。屋内運動(6)。敷布団の交換。3月6日より毎週火・木曜日に順次、畳乾燥をしていくとの告知。ここのところあまり晴天は続かないので、全ての居室の畳乾燥が終了するのは、かなり先となるであろうか。真夏に畳乾燥なんかされると熱帯夜に畳の熱も加わって、蒸し焼き状態となりそう。一般官本2冊借りた。池波正太郎『新鬼平犯科帳 雲竜剣』文芸春秋、高川秀格『序盤の30手』日本棋院。
 3月6日(水) 曇りのち夕方から晴れ。5番入浴。卓球大会練習のため選手は講堂で、他の者は外の運動場で、晴天時運動をする旨の告知。これまでは卓球大会の練習との関係から晴天でも講堂で運動ということになっていたが、これにならいいや。私は走りたいものね、外で。
 それにしても今朝は暑かった。さすがに、毛布3枚掛けていると大変。大汗かいて目がさめた。
 3月8日(金) 晴れ。屋外運動(2)。フトン乾燥なので掛布団と毛布1枚を出した。
 3月11日(月) 晴れ。3番入浴。岐阜市役所国民年金課へ特別発信。
 3月13日(水) 晴れ。7番入浴。理髪。家庭園芸科通信講座の来信。
 3月14日(木) 晴れのち曇り。屋外運動(4)。エスペラント通信講座カセットテープ仮下願と居室内使用許可願を出す。許可されると、カセットテープとウォークマンが使える。期間は2週間。ずっと持っていられるとラクなのであるが。ウォークマンは官の貸与。
 購入品目にチリ紙400枚205円が新たに許可される。これまであったのは650枚320円というものだけ。最近になってタオルにも番号を書いた布を付けるようになったようだ。昨年秋頃からハンカチに付けられるようになった。
 3月15日(金) 曇りのち夕方晴れ。屋内運動(1)。一般官本2冊借りた。『囲碁入門』西東社、野田知佑『川を下って都会の中ヘ』小学館。2月分の作業賞与金 1等工10割増基本給5,423円。時間37円40銭、10,846円。使用限度額3,615円。
 3月16日(土) 9:00〜11:00 川柳クラブ。クラブメンバー4人となる。
 3月17日(日) 9:00〜11:00 特別ビデオ『赤影』。あまりにもつまらない映画だったので途中からTV朝日の『サンデープロジェクト』を見た。
 3月19日(火) 晴れ。屋外運動(1)。岐阜市役所国民年金課より来信。免除申請書用紙記入例、返信用封筒、お知らせが送られてきた。早速記入しなければならない。
 3月20日(水) 晴れ。屋外運動(8)。認書願(免除申請書記入のため)、特別発信願(免除申請書を市役所へ送るため)。
 3月21日(木) ミニチョコビスケット1袋特配。
 3月22日(金) 曇り。8番入浴。19:00〜20:40ころ 工場就業者ビデオ『アクシデンタルスパイ』ジャッキーチェン。
 3月23日(土) 9:00〜10:30ころ 1級者、2級者、3級者集会ビデオ『ダブルテイク』。菓子は(A)生菓子ケーキ2ヶ+ミックスサンド1袋+コーヒーパック(B)あんドーナツ6ヶ+ミックスサンド1袋+コーヒーパックのふたつあって、私は(A)を選んだ。なんと私の工場で(A)をとったのは私一人だけ、あとの人すべては(B)。質より量の問題か、はたまたあんドーナツの問題か。
 11:00〜11:30 所内売店。岐阜社会保険事務局共同センターより「制度変更のお知らせ」の来信。
 3月24日(日) 朝10時からの『サンデープロジェクト』を見ていたら辻本清美議員が出てきたが、ちょっと迫力不足なカンジである。かなり困ったことになってきたようだ。加藤・鈴木問題でいいときだったのに。17:30からのTBS報道特集で「塀の中の高齢化」という問題をやっていた。この番組は同囚の多くがよく見ているようである。後日、この話がよく話されていた。そして運動時間にちゃんと運動してカラダづくりをしないといかんなぁ、なんてことを言う人も出てきた。こういう番組はもっと見せた方がいいかもしれない。かえっていい影響が期待できるだろう。岐刑もけっこう高齢化が多いものな。これからますます多くなっていくのではないかな。番組でも再犯の多さにいささか驚いたが、ここでも同じようなものかもしれない。ここから出ていった人間がまた戻ってきたなんてことはザラだものなぁ。出所したときの所持金の少なさと社会に出てから食べられるだけの技術のなさ、といったところが大きいか。作業賞与金の金額をもっと上げてもらう、社会で通用する技術が身につけられるようにしてもらえば、再犯率ももっと低くなるのではなかろうかね。私などでも13年受刑しても作業賞与金は百万円もたまっとらんものな。また社会に出て役に立つ技術も身についとらんし。これで果たしてやってゆけるのか、と不安になってくるもんだ。
 私としては、長期だから、なんか伝統工芸の技術でも習得して出所してからやってゆけたらと思っていたのだが、あきまへんな。失われた13年といったところか。長期刑の場合、伝統工芸をやらせるべきだな。じっくりと技術を身につけられるからな。ま、私の場合はかな、なかにはコンピューター関係をやりたい人もおるだろうから。しかしコンピューター関係の職業訓練生募集も現状では全国で数名といったところだから、そんなにいいことない。作業賞与金にしたって、現状はあまりにも低額であり、これじゃあ出所してからのアパート代にさえならないものなぁ。現状ではアパートさえ借りられないだろう。アパートが借りられなければ、職につくのも少々困難となってしまうのではないか。住所不定となれば生活保護だって無理だろう。再犯するな、と言っても、ちょっときびしすぎるかもしれないね。
 3月25日(月) 晴れ時々曇り。屋外運動(8)。家庭園芸通信講座発信。一般官本2冊借りた。高川秀格『序盤の30手』日本棋院、立松和平『雨日』平凡社。
 告知→(1)名古屋刑務所小型車輌建設機械科職業訓練生募集。(刑期8年未満の者が対象)(2)本日付で写真閲覧は居室にて期間10日間、枚数無制限(今までは工場にて3日間)写真の居室所持は期間1ヵ年で10枚以内とする(今までは3ヵ月間で5枚以内)
 3月26日(火) 晴れ時々曇り。5番入浴。岐阜市役所国民年金課へ免除申請書を発信。
 3月27日(水) 曇りのち夕方晴れ。卓球大会。私の工場が負けた。年齢60くらいの高齢者の選手がタタかったから体力で負けかな。18:00〜20:00ころ 無災害60日間達成工場褒賞ビデオ『15ミニック』。
 3月29日(金) 曇りのち雨。1番入浴。ウォークマンとカセットテープが手元にきた。
告知→投薬を受ける人が増えたため4/1から工場ごとに投薬更新日を定める。(私の工場は毎週水曜日となった)。また、塗布薬について、市販製のチューブ入りか、(東拘と同じかな?)容器入りとなり、更新の際、チューブ、容器も一緒に出すようになった、とのことだ。
 3月30日(日) テレビ朝日の『サンデープロジェクト』を見ていたら、亀井静香が出てきて死刑廃止について話していたが、あれでは、ちょっと説得力に欠けるな。被害を受けた側にはあれでは納得できないだろう。加害者が把え返しができ、改心でき、被害を受けた側も癒される道というのは、なかなかむずかしいのかな。
[差入れ]
 人民新聞2/5号〈日角八十治〉 黒n-ro8〈水田ふう〉 「創」3月号切抜コピー綴り、草の根通信351号〈平山まゆみ〉 人民新聞2/15号〈日角八十治〉 救援394号〈QRC〉 新生627号〈立志社〉 支援連ニュースNo234号〈東武央〉 ザ・パスポートNo103、パレスチナに学ぶ授業に対するイスラエルの抗議に抗議します〈帰国者について考える会〉 模索舎月報2月〈模索舎〉 わたげ通信No39〈平山まゆみ〉以上のパンフレット受けとっています。いつもどうもありがとうございます。
 支援連の事務所が閉鎖された、ということなので支援連ニュースも休刊となるのかな、と思っていたら、送られてきていたのでひと安心。獄外の不況風はそうとう強いらしい。ジャムプリントも営業に力を入れてがんばっているのだろうか。営業で売りこめる新しい商品を考えてみるか。
 ゆきちゃんの最終意陳はうまくいっただろうか? 自分流でうまくやってくれたであろう。他人のマネしようとすればうまくいかない。ゆきちゃんにはそんなことできないでしょ。あとは判決がどうなるかが大いにきになるけれど。
 ひのところパレスチナ情勢が激化している。テレビを見ても大変そうだ。圧倒的なイスラエルの軍事力に対してのパレスチナ人民の必死な反撃に頑張って、と思うだけの自分の無力さ、困ったものだな。18歳の少女の特攻前のビデオになんとかしなくてはと思う。
 ベトナム反戦運動のような盛りあがりもなく、このまま押しつぶされていくのを黙っていていいのかな。外では抗議運動は行われているのだろうが。
 ブッシュが出てきてからこの世界は戦争の時代へ追いやられたようだ。ブッシュによって、『インパクション128』の池田浩士さんの文の気持だね、今。じゃあ元気で!
                         2002年3月31日 Shaco記


SHACO
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