Tシャツ訴訟・石塚証言公判報告

うみの会・筒井修

 4月30日午後1時30分より、福岡高裁第5民事部小長光裁判長係でTシャツ訴訟控訴審第6回口頭弁論(公判)が開かれました。遠来組としては、東京より石塚証人をはじめ、第2次訴訟の東京原告団から湯浅氏、永沼氏そして恒例の益永のお母さんもかけつけてくれました。それに、石塚さんの教え子、ダルクの子供たち等の石塚さんファンクラブが10数名詰め掛けて頂き総勢50名弱の傍聴参加を得て、Tシャツ訴訟の公判としても久しぶりの活気あふれる法廷となりました。この日の石塚証言に対する関心の高さと石塚さんの人柄と幅広い活動を彷彿させるものでした。
 この日の最大の山場は、なんといっても石塚証言でした。Tシャツ訴訟控訴審の最大の山場と言っても過言ではないでしょう。
 「わたくし、石塚伸一は、福岡高等裁判所より、いわゆる「Tシャツ訴訟」について、証人として、法律学に関する所見を求められたので、以下、意見を述べることにする。」で始まる意見書を提出して頂いて、京都での朋友である原告タマゴ氏の尋問に応えるという形で証言して頂きました。
(証言内容)
 証言の骨子は、
  一 本件事実の概要
  二 第一審判決における争点
  三 原審の判断
  四 本件訴訟の問題点
  (一)被収容者の法的地位とその権利
  (二)裁判を受ける権利
  (三)死刑確定者の精神的苦痛
  (四)死刑確定者の権利制限
  (五)国際準則と死刑確定者の処遇
  むすびに代えて
 からなるB5版48頁に及ぶ膨大で骨太なもので、入念な準備と検討を経られたものであろうことが容易に推察されるものです。私たちのTシャツ訴訟のために貴重な時間と労力と熱意を裂いて頂き感謝しています。石塚さんに紙面をお借りして、感謝致します。
 石塚証言の内容は、紙幅の都合で到底全部紹介しきれるものではありませんが、以下、感想程度に紹介します。(関心をおもちの方はご連絡頂ければ意見書の全文を送付致します。)
 興味深かったのは、本件の被告である元東京拘置所所長堀雄は、行刑実務家として当時の理論と実務の関係を論ずる国側の監獄法関係の論者であったこと、石塚さん自身、仕事上の関係で堀氏と面識があったこと、そして、いわゆる「特別権力関係論」は、古き拝命思想と法治主義の要請の中で混迷する行刑実務を、施設職員の立場に立って、防御するための法理論であったことです。
 また、被告の「本件は必要的共同訴訟ではないので、獄中原告らとの外部交通の必要がない」という主張に対する反論として、「たしかに、本件は、複数の原告が、同一の被告の不法行為に対して損害賠償を求めた訴訟であって、いわゆる『必要的共同訴訟』ではない。しかし、刑事施設の内部と外部とのコミュニケーション(相互行為)が争点となっており、一方の情報の発信が認められれば、他方の受信が認められるという不即不離の関係にある。したがって、本件は、『本訴判決の効力が、相手方と第三者の間にも及ぶ場合、この第三者が補助的に参加した場合』、すなわち、講学上の共同訴訟的補助参加の一種であると考えられる」とする見解があることを披瀝されました。
 現金差入れとの関連では、被告側は、獄中原告らの訴訟費用として作業賞与金が考えられるかのような主張をしているが、実際は施設側は「作業賞与金は、出所後の厚生資金に充てさせるべき」として、訴訟費用への利用は許可されないのが実態である(通達もある)こともあきらかになりました。
 獄中者の民事出廷の問題についても、元々日本の監獄行政は、獄中者の民事出廷を認めようとしない傾向にあり、この趣旨の通達等が出されていること等も明らかになり、これらの通達類の開示が今後の課題となりました。
 もちろん、昨年の国際規約人権委員会の最終見解に関連した証言もあり、裁判所も関心を示していました。
 証言は、益永氏の結果的には敗訴した新聞投稿不許可最高裁判決の評価にも及びましたが、(1)河合伸一裁判官の少数意見は積極的に評価できる、(2)そして多数意見も「東京拘置所の内部基準は、一般的な取り扱いを内部的基準としてて定めたもので、具体的な拒否は、監獄法46条1項に基づき判断されている」として、かならずしも内部基準を絶対的なものとして判断していない側面がある、等の興味深い評価が示唆されました。

(通達開示を求める求釈明)
 証言後の攻防として、被告国にたいし、証言の中に出てきた通達等の開示を求める求釈明をしましたが、被告は「文書で出してくれ」と即答を避けました。私たちは、裁判所に文書提出命令を求めましたが、期日外で文書による攻防により決着することになりました。小長光裁判長は「これ(通達類)くらいは、出すでしょう」と言っていましたが、頑なな東京拘置所のこと、予断は許しません。今、時流の情報公開法との関連も含めて開示を追求していきたいと思っています。

(次回最終弁論)
 次回の期日は、すでに事前に決めていたようで、7月30日と指定されました。獄中原告らの弁論権の保障のための被告代理人の出廷問題も事前に解決していたようです。6月一杯に最終弁論を準備しなければなりません。
 判決は、今年の秋と予想されます。Tシャツ訴訟も大詰めを迎えました。
 皆さんの変わらぬご支援をお願いします。


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