前略、お袋殿。

 1月30日頃から2月3日頃まで、確か、全国的な寒波でしたね。私が付けている記録では、2月1〜3日は、最低気温、氷点下6度5分が続いています。この時期に風邪をひいて、こじらせ、肺炎になったということは、十分、想像がつきます。
 拘置所と刑務所とを比べると、おそらく拘置所の方が条件が悪い――これは、私の体験から言えます。
 拘置所での入浴は、だいたい、午前中です。それで、入浴後は、暖房のない、外気とかわりない房内で、じっと坐っているだけですから、確実に湯ざめしてしまいます。そういった状態で、5時の仮就寝まで耐えるわけですから、いったん風邪菌を体内にとり込めば、急速に悪化することは確実です。その上、運動不足で体質が酸性化し、抵抗力が低下しているわけですから、へたすれば、最悪のケースになり得ます。
 刑務所では、入浴は、仕事が終わってからで、早い遅いはありますが、3:15〜4:30k間です。冬になり、感冒対策がはじまれば、入浴後から、4時30分までの間、帰房後、布団を敷いて横臥することができます。免業日には、午後1時から3時までの間も、布団を敷いて横臥することができますので、免業日に入浴がある時も、湯ざめを防止することができますし、ある程度、体力の保存を計ることができます。
 ところが、拘置所(東拘)では、私がいた時は、こういった、日中の横臥は許可されていませんでしたし、おそらく、今でも実施されていないでしょう。むろん、室内暖房など、どんなに寒くなろうと、今でも実施されていないでしょう。
 これも、私の経験から言えるのですが、医療状況についても、刑務所より拘置所の方が劣っています。医務当局・医師の責任感・基本態度・熱意からして格差がありますね。未決囚に対しては、既決囚に対するそれの半分くらいの責任観念しかないと思われます。
 こういった状況にあって頼るべきものは自分以外にないというべきでしょうか。私じしんの対策は次のようなものです。
(1)体質が酸性化することを避け、アルカリ化を保つよう心がける。
 というのは、酸性化していると抵抗力が低下する上、リンパ球の殺菌能力が活性化しない。既決では、酸性食品を避けるという方法しかないが、未決の場合なら、差入・購求品からアルカリ食品を補給するという方法がある。特に勧めるのは、梅干し。獄外にいれば塩気なしの、野菜の煮込みスープ(ジャガイモ、ダイコン、キャベツ、タマネギ、ニンジン、ピーマン、タケノコ、モヤシ、etc)が最高。塩は体温を下げるのでよくない。
(2)ともかく、最大限に着込んで布団に入り、汗を出し、汗が出たら、下着を着替えて、汗を拭きとる。これを三夜続ければ、まず、熱は下がる。(熱いお茶をガブガフ飲むこと)熱は、リンパ球の活性化に必要なもの。
(3)布団に入って横臥した状態で、両手のひらかを胸に当て、その両手のひらに意識を集中して、両手のひらから熱線が胸に放射されるイメージを行なう。そうすると胸全体が熱くなってくる。胸全体が熱くなってきたら、今度は、この胸に体じゅうからリンパ球が寄り集まってきて、風邪菌・肺炎菌を攻撃している状況をイメージする。
(4)風邪・肺炎との戦いを、リアルな戦争・戦闘として思いなすこと。風邪菌・肺炎菌を敵軍としてイメージし、この敵軍の侵入に対して、あらゆる武器・兵器で迎撃・反撃しているリンパ球(自己防衛軍)の華麗なる戦闘をイメージすること。メイン兵器は〈抗体〉ロケットランチァー。風邪菌・肺炎菌を徹底的に殲滅したところをイメージする。勝利をイメージする。この勝利のイメージを、今までの自己の成功体験と結びつける。例えば、運動会で一等賞をとり天に舞い上がった時のあの体感を想起する。人間というのは、挫折して落ち込んでいるという心理状況にあっては血中血清濃度が低下し、何か嬉しいことがあって舞い上がっている時は、血清濃度が上昇するということが科学的に実証されている。そして、この風邪・肺炎との戦闘には絶対勝と念じ続け、自己に勝利の暗示をかける。
 こういったステップを一つ一つクリアーすれば、薬に依存することなく、自己治癒に至ります。又、こういった防衛戦に実効性をもたらすためには、常日頃、ヨガおよび気功によって、全身を柔軟にし、気の通りがよくなるようにしておくことを勧めます。
 『テロリストのパラソル』、こちらでも話題になっている本で、読んでみたいので、そちらで読み終えてから、こちらへ送ってください。
                                 1996.2.18
                   芳正拝

追記 2/17の地震は、ここにきてから、一番か二番という激しい揺れでした。救急車・消防車のサイレンの音が聞こえないか耳を澄まし、聞こえないことを確認した上で眠りにつきました。
 確定から今年で9年目ですから、保護司が動きだすのも、早いということはないと思います。有期の場合は、刑期の1/3、無期は確定から10年経過して、形式上は、仮出獄の審査対象になるというふうになっていますから、私の場合なら10年前後から環境保護関係の調整ということで保護司が動き出すということではないでしょうか。


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